21.怪文書の行方 side望月光
シーズン2 21 side望月光 怪文書の行方
「んー。うーん?んー」
「柚子、うるさい。踏ん張るならトイレ行きなよ」
「そんなんじゃないよ!柚子は怪文書について考えてるの!」
毎晩飽きずに同じ会話ようしてんなぁーー目の前で繰り広げられる光景は、ここ数日ずっと変わらない。柚子ちゃんは一条家に届いた怪文書を書き写したらしく、それをずっと見つめては唸っている。
「何が目的なのか、お手紙の意味を解明する!名探偵お柚子の名にかけて!」
と数日前の夕食の席で彼女は言い放った。
俺だけがポカンと口を開け、他の人がニコニコ笑っている様子が印象に残っている。その日の夕食後から、俺と風見は名探偵お柚子の助手に任命されたらしく夜はダイニングで集まっている。
「柚子ちゃん、ほら、お茶淹れたで?風見が前に気に入った奴やで!」
小さな事で口喧嘩をする2人を、こうして宥める事にも慣れてきた。以前はーー実家にいた頃はこんな風に口を利く相手もいなかったし、思った事を口に出すなんて考えられなかった。ここ一条家での生活は、俺にとって驚きの連続だ。
「ねーねー、光くん。これどう言う意味なんだろうね?」
紅茶を飲みながら柚子ちゃんは懸命に文字列を追っている。
「……古い時代の文字とか言い回しにも見えるね」
柚子ちゃんから紙を取り上げて風見が言った。
「ほぉ!育すごいじゃん!……で?」
「でって?」
「その先は?」
「古い時代の文字なんて、僕が詳しく知るわけないでしょう。学者じゃあるまいし」
「なにそれーっ!」
2人のやり取りを聞きながら、柚子ちゃんの手元を見つめる。
「光くんはどう思う?」
「うーん。俺もさっぱりわからんなぁ、ごめんなぁ」
俺がいい終わらないうちに、修斗さんが早く寝るようにとダイニングに怒鳴り混んできた為、そこで本日は解散となった。
自室に戻り、就寝の用意をしながら今日の事を思い出す。
『みつけた』
あの怪文書に書いてあったのは、その文字だった。風見の言う通り古い文字、しかもこの東の国では使われていなかった物だーー加えて癖のある筆跡。
何を意図しているのか、俺に関わる人物からの俺への手紙だったのかーーそれならいつもの四元男爵家経由で送ってくれれば、大事にはならないはずだから違うのか。
『務めを果たすように』
両親から言われた言葉が何度も思い出される。もう既に俺が目星をつけた人物がいると思っているのか、それとも自分達で該当の人物を見つけたと言うことか。
ーー若しくは、俺と同じ目的の人物が柚子ちゃんを見つけたと言うことなのか。茶色い瞳に茶色い髪はこの国では珍しくない。そして、柚子ちゃんのお姉さんである結衣さんは黒い瞳に黒髪の持ち主だ。柚子ちゃんが狙われているのか、だとしたらーー彼女が該当の人物ではないときちんと知らせなければいけない。
「いろんなお屋敷に怪文書来てるらしいんだよねっ!」
そう言っていた柚子ちゃんの言葉を思い出し、ふーっと息を吐き出す。
様々な屋敷にも同じ怪文書が届いているとしたら、何かしらのイタズラかはったりだろう。心配しすぎない方がいい。
今はただーーこの平和な毎日が続く事をひたすら祈るばかりだ。




