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16.平凡に慣れた時

 



「よしっ!でーきたっ!」


「食事の用意も慣れたもんだねぇ~」


 今日の夕食準備のお手伝いは深雪さんだった。手の空いてる人が順番に準備をお手伝いしてくれるシステムは、お姉ちゃんが一乃瀬家に旅立ってからすぐに新設された。お手伝いとは名ばかりで、本当は火の苦手な私の為に誰かが来てくれているのが本来なんだけど。


「まぁねぇ!今日はいつもより上手に出来た」


「さすが柚子ちゃんだね~」


 ふふん!と得意気になってみる。深雪さんは立花さんと並んで褒め上手だから、一緒に作業していると気分が良い。


「おい!柚子、俺のワイシャツどこだ」


 キッチンに修斗くんが怒鳴り込んできた。


「知らないよっ!柚子はちゃんと仕分けしたもん!」


「はぁ?」


「他の人も持ってるような物はお名前でも書いてよ!」


「そんなのダセェだろ!」


「こっちも困ってるんだ!無くなって困るならお名前書いてっ!」


「お取り込み中ごめんね。柚子ちゃん、この前の王宮からの書類なんだけど……」


 修斗くんとの言い争いに口を挟んだのは立花さんだった。修行先から帰宅した時は、私達のやりとりをオロオロ見ているだけだったけど、最近では慣れてきたのか、それでは業務が進まない事に気づいたのか、いつ何時も話しかけてくる。


「……うーん。まだ期限があるから、次にお姉ちゃんが来た時に確認しておきますっ!」


「よろしくお願いします」


 お姉ちゃんの仕事ってたくさんあったんだなぁ。まだ近くでギャイギャイ騒ぐ修斗くんを尻目に、食事の盛り付けを再開しながら思う。掃除、洗濯、食事の準備、ご当主様のサポート、王宮とのやりとり、他の家とのやりとりーー挙げれはキリのない仕事の数々。これを1人でやっているなんて、やっぱり私のお姉ちゃんはすごいのだ。

 この仕事に加えて、修斗くんみたいなわがままの面倒も見なくちゃいけないなんてーーお姉ちゃんの代わりは大変だ。




 食事も入浴も終えて自室に辿り着く。


「ふぅー!今日もいっぱい働いたなぁ。日記書いて寝ようかなぁ」


 次にお姉ちゃんが来るのは10日後。2週間に1度になったお姉ちゃんの帰宅ペースにもようやく慣れてきた。

 聞きたいことをメモしてファイルに綴じておく。日記を開こうとした所で部屋の扉がノックされた。


「はーい!多分光くんでしょ~?」


 ガチャっと開けると予想通りの人物が目の前に現れた。


「なんで俺ってわかるん?」


「優しいノックの音だもん」


「……自分じゃわからんなぁ。あ、これ。俺の所に紛れてて、柚子ちゃんのやろ?」


 手渡されたのは、白川柚子様と書かれた封筒だった。この字は、つづだ。


「うん!ありがとう」


「いえいえ。夜分にごめんな、おやすみ」



 光くんを見送って手紙を開く。つづは、メイド学校の時からの知り合いで、五十嵐公爵家で共に働いていた執事見習いだ。五十嵐家の幼いお嬢様と3人でよく遊んでいたし、手紙も定期的にやり取りしているけど、3日前に届いたばかりーーこんなに時間も経たないで手紙が来ることはなかったから、少し嫌な予感がする。ふーっと息を吐いて、私は真っ白な封筒を開けたのだった。



 白川柚子様



 最近うちの公爵家の周りを探ってる奴がいる。公爵様の話だと、有力貴族の家の周りを嗅ぎ回ってる奴がいるらしいぞ。

 少しずつ王都の方にも手を伸ばしてるらしいから、お前も気をつけろよ。


 彩月綴



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