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13.初めてのお味

 


「このチーズケーキ美味しいねぇ」




 目の前には2種類のケーキと紅茶が並ぶ。


 生まれて初めて食べるレアチーズケーキを口に運ぶと、口溶けの良い滑らかな食感とベイクドチーズケーキでは味わえないチーズのほのかな酸味が鼻から抜けた。




「レアチーズケーキ初めて食べたん?」




「うん!焼いたチーズケーキしか食べた事なかった!」




 あまりお腹が空いていないのか、光くんはティラミス1つとコーヒーを注文しただけだった。お昼ご飯までそれで足りるのかなぁ。ちまちまケーキを口に運ぶ光くんの様子を見ながら、食べ比べる用に注文したベイクドチーズケーキを頬張る。


 んー、お姉ちゃんが作った方が美味しいなぁ。一条家のおやつは、みんな食べる時間がまちまちだから、お姉ちゃんは基本的に火を通したおやつを作ってくれる。


 だからーーレアチーズケーキなるものを食べるのは初めてだった。チーズって火を通さなくても、こんなに美味しいんだ!新しい発見だ!これは今日日記に書こう。




「レアチーズケーキって言うのは、焼いたチーズケーキと違って鼻からチーズの酸味が抜けてそれもまた良いねぇ。柚子、結構気に入った!また食べたい!持って帰りたい!」




「持ち帰りはちょっと……今日暑いしなぁ」




 季節は梅雨時、一条家から歩いて来るのにも汗ばむような気候だ。レアチーズケーキは、生ものだから持ち帰りは出来ない事に気づいた私はちょっと落ち込んだ。お姉ちゃんや、育にも食べて貰いたかったのに。




「柚子ちゃん、そんな顔せんでも。また一緒に来たらええよ」




「そうだね!また一緒に来ようね。……修斗くんに車出して貰えば持って帰れるし」




 また2人で来たいねーーそう思ったけど口にするのは、なんだか恥ずかしかった。その言葉を飲み込むように紅茶を啜り、ケーキを頬張る。




「光くんもちょっとどーぞ!」




 あまりの美味しさに感動して、レアチーズケーキを光くんに少し分けてあげる事にした。ええの?なんて言いながら私のお皿から、3口分を掬い取った。ーー少しって言ったのに。


 窓の外は晴れていて、夏の日差しが窓越しに感じられる。やけに静かな気がした。光くんなら、うまいなぁとか、やけに私より上手な感想を述べるはずなのに。ーー向かいの席に視線を送ると黙り込んで何か考えている光くんの姿が目に映る。


 なるほど!ケーキが美味しすぎて黙ったのか!確かに感動するケーキだったもんね。これ以上食べられないようにと、私は少し急ぎ気味に頬張った。

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