中学三年生~夏休み~
ご覧いただきありがとうございましす。前作に続いての話になります。お見苦しい部分があるかもしれませんが、どうぞご覧ください。
「あいたたた」
脇腹を押さえながら玄関の扉を開けるとちょうど姉が出かけようとしていた。
「あんたまたやれらたの、どんくさいわね」
姉の沙耶は、金髪のロングヘア目がパッチリしたスタイル抜群の容姿で夜は、自分の店を持ち人気度も高かった。
「うるせぇよ、さっさと仕事に行ってこいよ」
沙耶は、冷ややかな目になり昴の横をすれ違う際に昴の脇腹に膝蹴りをあてた。
「いってええええ、何すんだよ」
脇腹を押さえ前屈みになり座り込んだ。
「弱いくせに生意気言うからよ。そろそろ皇家継ぐものとして、自覚しなさい」
「行ってくるわ」
「はーい、行ってらっしゃい」
奥から母の佳子がエプロン姿で出てきた。
「あらあら、昴こっちに来なさい。手当てしてあげるわ」
昴は痛む脇腹押さえながら母について行った。
「あいたたた」
「もー男の子だから我慢しなさい」
母は慣れた手つきて手当を行った。子供の頃から怪我ばかりの昴は、毎日のように母の手当てを受けていた。
特に母に手当してもらうとどんなに怪我しても翌日には、治るのだから不思議でもあった。母に言うと
「親の愛情」
って言われるのがわかってるので、お礼の言葉以外は言わないでいた。
「そーいえば、おふくろ。進路のことで相談があるんだけど」
昴は、タイミングを見て話しかけた。
「えっ進路。あーそーいえば手当が終わったらおじいさんが部屋に来るように言ってたわよ」
昴は嫌そうな顔になり
「また、説教かよ」
と深いため息ついた。手当が終わると、一度部屋に戻り制服などを着替え重い足取りで叔父の部屋に向かうのだった。
「入るぞー」
叔父の部屋の襖を開くと叔父は部屋のテーブルの奥、いわゆる上座に座って昴を迎え入れた。
「話ってなんだよ」
昴も叔父の前に座った。
「お前が入学する高校から夏期体験入学の案内が来た」
昴の前に、学校からのA-3サイズの封筒が置かれた。昴は何を言われてるのか全く分からなかった。
「皇家は、代々この高校と決まっておる。そこで三年間しっかり修行してこい」
「修行って何の修行だよ」
「お主はまだそんなことを言っておるのか、幼き頃から忍びの一族だと話をしておるではないか。儂もお主の両親も姉も、皆ここの高校出身じゃ」
「また忍者ごっこの話かよ。もーすぐ高校だぞ、いつまでも忍者ごっこできるかよ」
「シャーラップ。忍びの一族は影の組織、この歴史の中では陽の当たることはないが、間違いなく歴史を動かしてきたのは、我ら忍びの一族じゃ」
「じゃーなんだよ、風呂敷で空飛んだり壁に隠れたり今の時代で役に立つと言うのかよ」
「とにかく夏休みの一週間は、実際に行って見てこい。その中で、お前の考えが変わらないのであれば、後はお前の好きにすれば良い」
「言ったからなじじぃ。その言葉忘れるなよ」
昴は案内の用紙を持って部屋に戻って行った。
「んーと、何だ影浦高校。」
案内の用紙を見ていくと、この高校は、全ての生徒が推薦のみでの入学で、一般的な募集は行っておらず、全寮制の高校らしい。
昴は忍者なんかなることは無いと思い、じじぃを納得させるために行くような物だと思い。体験入学に望むことにした。
それから月日は流れ夏休みになり、いよいよ体験入学に向かうことになった。県外なので前日に高校に着くように、新幹線等の公共機関を使って行くことにした。
昴が自由席に適当に座ると、横の席に、真田美穂が座ってきた。
「えっ美穂。お前もどっか出かけるのか」
隣に座った美穂は、大きくため息をつくと
「あのねー、私もあんたと同じ忍びの一族なのよ」
「お前までそんなこと言うのかよ。何か洗脳とかされてるんじゃないか」
「子供の頃、一緒に山に入って修行もしたでしょう」
確かに子供の頃よく忍者ごっこをして、野山を駆けずり回った日々は覚えてるが
「えっあれ修行だったのか。遊びじゃなかったの」
「あんた、あれを遊びだと思ってたの。あっきれた。まぁ薄々感じていたけど、あんたって昔っからそうよね」
などと話しているうちに目的の駅に着きそこから更に電車とバスを乗り継いで、周りに何も無い田舎村にたどり着いた。
「はぁーやっとここまで来た。こっからどーやって学校まで行くんだ」
「あぁ、この村全て高校の敷地らしいわよ」
昴は、持っていた荷物を思わず地面に落としてしまった。
「うげー、まじかよ」
「でも案内は、ここまでで正式な場所とかは、書いてないのよね」
するとどこから現れたのか、2人に向かって近づいてくる、いかにも忍者というような容姿の者が近づいてきた。
「あのー2人は体験入学希望の方々ですか」
声は優しい青年の感じが伝わってきた。2人が頷くと
「では体験入学の案内用紙見せてください。それと身分証出して下さい。」
2人は言われた通りに、案内用紙とマイナンバーカードを見せた。
「確認できました。体験入学にようこそ。今から宿舎までご案内します。なおわが校は無関係なものには発見することもできなくなってますので。では5キロほど少し走りますよ」
と忍者の格好をした青年らしき者は、ゆっくり走り出した。それに続いて二人も一応警戒しながらついて行くことにした。
青年のスピードは、徐々に速くなっていったが、二人は普通について行っていた。青年は、少し後ろを見るとニコッと笑って、更にスピードをあげる。
二人は引き離されたが、何とかついて行った。
そうしてやっとのこと目的の学校に到着した。
「ようこそ、影浦高校の体験入学へ」
青年は息一つ乱さず、何事も無かったかのように立っている。美穂も多少の呼吸の乱れはあったが特に疲れてる様子はないのだが、遅れてやってきた昴は大きく息を乱し、やっとのことたどり着いた。
青年は昴を見てほくそ笑み、校内にある宿泊施設に案内された。
「今日は18時から食事20時から入浴21時消灯だからゆっくりして。明日からは毎日5時起床、掃除と朝食終わったら8時から体験入学の説明があるから。何か分からないことあれば周りにいる上級生に相談して下さい」
辺りを見渡すと青年と同じような服装のものが数人、体験入学に来たものを監視するような雰囲気で見ていたというより監視してるようだった。
もちろん昴と美穂は、別々の宿泊施設になるということで2人は別れた。
案内された部屋は、体育館みたいな広さで既に多くの生徒が荷物の確認をしたりゆっくりくつろいでいる者もいた。
ここから地獄の体験入学が始まるのだった。
ご覧頂きありがとうございます。今回は、昴くん一家の案内と、いよいよ体験入学に入っていきます。次回は、昴にとって人生で大きな転機を迎えるお話となりますm(_ _)m