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冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜  作者: 拝詩ルルー
第五章 聖女昇格試験

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再試験

 聖女昇格試験の二次試験は、それから一週間後に行われた。

 試験形式は、事件のこともあって、元の治癒院で行うものに戻したらしい。


 ほとんどの聖女見習いが、再試験を受験するみたいだった。でも、中には前回の二次試験がトラウマになってしまって、今回の再試験は見送る人が何人もいるみたいだった。


 それから、イザベラも──


 この一週間の間に、父親のウィンザー司教が今回の暴動と大司教襲撃の主犯格で、教会本部が拘束したと、教会内で公表されていた。


 こんなことが公になってしまったからか、イザベラは今回の試験を辞退するみたいだった。


 イザベラは、取り巻きの令嬢二人には何も伝えていないみたいだった。二人に話を聞きに行った人によると、「私たちは本当に何も聞いてなかったの!」「まさかイザベラ様のお父様が、そんなことに関わってたなんて!」と言っていたらしい。


 それに、聖女とその見習いが使ってる寮の方でも見かけないみたいだから、イザベラも教会本部の方に拘束されて、事情聴取を受けてるんじゃないかって、(まこと)しやかに噂になっている。

 でも、このことは教会本部からは何も発表されていないから、あくまでも噂は噂のままだ。



「お。二人とも入って来たな」


 グラントさんが、少し背伸びして言った。


 治癒院の奥の扉からは、今回の二次試験を受験する聖女見習いたちが、続々と中に入って来ていた。みんな、少し緊張したような硬い表情をしている。


 二次試験の会場は治癒院だから、実は一般の患者さんやお客さんに紛れて、受験生でなくても見学することができる。

 俺とグラントさんも、本日の解毒薬作りに入る前に、少しだけ見学に来ていた。もちろん、他の人たちの邪魔にならないように、治癒院の壁際からこっそりとだ。


 リリアンとエラは、ここ一週間ですっかり回復したみたいだった。

 二人とも、二次試験での事件のことは、「咄嗟に動けなくて悔しい!」と、バネにしているみたいだった。


 今回は試験だからか、リリアンとエラは別のチームに振り分けられたみたいで、別々のブースに入って行くのが見えた。


 カーテンで区切られたブースには、すでに試験官の聖女や癒しの神官が控えているのが、チラッと見えた。


 そして、受付を済ませた患者さんから、順番に各ブースに案内されていった。


「二人とも合格するといいですね」

「そうだな。リリアンもエラも、いつも真面目に治癒院の仕事をしているからな。大丈夫だろう」


 俺はこっそり、グラントさんとおしゃべりした。


 ブースの前には患者さんたちの列が伸び始めて、カーテンもあるから、俺たちがいる壁際からはブース内の様子はよく分からなくなった。


 とりあえず、リリアンとエラの元気そうな顔は見れたし、俺たちは解毒薬作りの方に戻ることにした。



***



 俺とグラントさんは、父上が貸し切りにしてくれた調薬室に向かった。


 今日はユーフォリア様はいなくて、俺とグラントさん、それからお手伝いの玉型の精霊たちだけだ。


 中和の香は、材料が残っていた分はすでに作り終えていて、今はもう作っていない。

 今は、解毒薬の量産だけを行なっている。


 事件から一週間ほど経って、魅了の香を吸い込んでしまったほとんどの人は、もうすっかり回復していた。


 でも、特に酷い中毒症状を起こしてた人たちや、長期間魅了の香を間近に吸ってきた人たちは、まだ解毒薬を必要としていた。


 それから、ガシュラ支部は、事件があった日にユーフォリア様が教会内にいて、彼女が毒素を中和してくれたから、他の支部よりも被害がそこまで酷くはなかったらしい。


 でも、他の支部はガシュラ支部よりも酷い状況だった所もあったらしく、俺たちは他の支部に回す分の解毒薬も作っていた。



 俺は、もうすっかり慣れて上達した魔術抽出用の魔術陣を、専用の台紙に描いていた。

 初めはコツが必要で大変だったけど、慣れてくると、一定量の魔力を流しながら魔術陣を描く作業がすっかり楽しくなっていた。特に、綺麗に魔術陣が描けると、自己満足かもしれないけど、すごく嬉しかった。


 その間、グラントさんは解毒薬作りだ。

 玉型の精霊たちの淡い緑色の光に照らされながら、魔術鍋をかき混ぜているグラントさんは、はたから見たら、何かすごい秘薬を作ってる大魔術師みたいな雰囲気だ──解毒薬は確かにすごい秘薬といえば、秘薬なんだけどな。なにせ、レシピは精霊女王様の発案だからな。



「ノア。最近、解毒薬作りばかりしてただろう? 魔術抽出もかなり上達したし、そろそろ調薬スキルが上がってるんじゃないか?」

「あ、そういえばそうですね! 最近ずっと忙しかったから、全然スキル(ばん)のチェックをしてなかったです!」


 スキル板は、その人が持っているスキルを見ることができる魔道具だ。俺は初めてポーションを作った時に、新たに「調薬」スキルが付いていた。


 スキルはものによっては、使っているうちにランクが上がっていくことがある。ランクが上がっていくことで、効率が良くなったり、できることが増えたりする。

 調薬スキルも、そのタイプだ。


 初めはユーフォリア様からの指導がビシバシ入ってた魔術抽出だけど、ここ一週間はかなり安定してできるようになっていた。

 だから、もしかしたら──


「事務局が再開したら、一度見に行った方がいいぞ」

「そうですね! 今度行ってみます!」


 事件の日に俺が突入した事務局は、魅了の香がたくさん置かれていたせいか、一週間経った今でも体調が戻りきれていない人が何人もいた。

 とりあえず無事だった事務員だけで、最低限の業務だけを再開しているみたいだった。


 諸々が一段落したら、スキル板を借りに行ってもいいかもな。


 あ。俺が蹴破った事務局の扉は、早々に修繕されていた。

 父上にもちゃんと報告したけど、「人命救助のため」という大義名分があったから、ありがたいことに、俺にお咎めはなしだった。


 扉の修繕費が請求されなくて、心底ホッとしたよ。



 俺たちはこの日は、まったりと解毒薬作りにいそしんだ。


──早く、この状況もおさまって、元の生活に戻れるといいな……




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