1-8 俺自身と皆のため、いじめの勧善懲悪 2
少年期のいじめがどれほど少年の心を傷つけ、深い傷跡を残すかご存じでしょうか。これは私の実体験です。アラ還になった今でも、悪夢として夢に出てきます。
子供のいじめも大人のいじめ(パワハラ・セクハラ・モラハラ・過重労働・過労・脳に大きなダメージを与えるストレス)決して許してはいけないのです。
【注意事項】
過去に過酷な「いじめ」体験をされた方は少なくないと思います。その中でも、「思い出したくない。」とか「フラッシュバックする」、「暴力場面が多い」という違和感を覚え、私のX(Twitter)にDMを送られる方は、本小説を読まない方がよろしいかと存じます。
「晶人、クソ外国人のくせに、橋口に勝ったぐらいで、いばるんじゃねえ!」
「よし、じゃあ、いじめ大魔王の土屋、タイマンを始めるぞ!」
私は、ジークンドーの構えを取った。土屋は本能的に私の打撃を恐れたのだろう。
身をかがめた姿勢で両手を高く上げていた。土屋は俺の服を両手で握り締めて背負い投げをするつもりだろう。
土屋の背負い投げは、強烈に痛かった。二度と喰らいたくない投げ技だ。
土屋は利き腕の左腕で私のシャツを握ろうと前に出てきた。私はその一瞬を見逃さなかった。
「パンッ!」
「ダンッ!」
「ドン!」
私は、地面を強く踏み込み、右肩から6つ分話した拳で土屋の左手を払いのけ、そのまま全体重を右拳に載せて土屋の「壇中」を打ち抜いた。「撃った」のではない。「撃ち抜いた」のだ。
土屋は身長が高く、かなり太っていた。その体が後方に吹き飛ばされ、背中と頭から芝生に落ちた。5メートル以上後方に吹き飛ばされたのだ。
「ええ~っ!」
「ええ~つ!」
「何だ!」
「何だ!」
「何だ!いったい何が起きたんだ!」
「何だ!あ、あ、晶人が一発であの土屋の体をすげえ吹き飛ばしたぞ!」
「晶人が一発で土屋を吹き飛ばしたぞ!」
芝生に横たわった土屋は、転がりながら、大声で泣き叫んでいた。
「痛えよお~、痛えよお~、息が、息が、息ができねえよお~。痛えよお~。ウウーッ~、痛えよお~、痛えよお~、痛えよお~、痛えよお~、息が、息が!」
私は土屋の前に仁王立ちでたち、土屋に尋ねた。
「おい、土屋、まだやるか?立てよ!このぐらいじゃ、俺の気が済まねえんだよ!」
土屋は痛みのあまり、返事ができない。私は5分ほど土屋の前に仁王立ちになり、土屋の子分たちの名前を一人ずつ呼び、私の前に来るように大声で怒鳴った。
「おい、お前ら、ちょっと来い!俺の前に来い!」
「おい、お前らも、俺とタイマン勝負するか?」
「・・・・・・。」
返事がないため、私は土屋の一番の子分である白坂の胸ぐらを掴んで言った。
「おい、タイマンするか?それとも今までのことを謝るか?」
「ご、ご、ごめんなさい。もうしません。」
土屋の子分たちは全員、私に土下座をして謝った。子分たちも一発ずつ叩いてやりたかったが、私はなぜか謝罪する者を叩く気にはならなかった。
そして、再度、土屋の前に立って、土屋の様子を見た。大声で泣きながら両手で胸を押さえていた。俺は土屋に再度尋ねた。
「土屋、まだやるか?」
「いいえ、もうやりません。」
そこには、これまでと見違えるほど弱々しい土屋の姿があった。
「おい、土屋。俺に謝る気持ちがあるか?」
「は、はい。あ、あ、晶人君、ごめんなさい。」
「それだけじゃ足りねえ。二度と人をいじめませんと言え!お前がこれまで沢山の人をいじめたり、暴力を振るったりしていることはみんなも知っているんだ。だから、これからは、二度と友達をいじめたり、殴ったりしませんと、大声でみんなに聞こえるように、土下座して言え!」
土屋は、地面に横たわったまま体を起こし土下座をした。
「これからは、二度と友達をいじめたり、殴ったりしません。ごめんなさい。」
土屋らしからぬ、とてもみじめな声だった。
「よし、分かった。」
「お~い、みんな!今の土屋の言葉を聞いたか!」
私は周囲にいる全員に尋ねた。
「聞いたよ、聞いた!」
「ちゃんと聞いたよ!」
「うん、聞いたよ!」
周りにいる全員が口々に言った。
私は敢えて楔を打ち込むつもりで、倒れてまだ泣いている土屋の胸ぐらを掴んで言った。
「土屋、今度、友達をいじめたり、暴力を振るったりしたら、この程度じゃすまないからな。いいか、覚えとけよ。」
「・・・・。はい、分かりました。」
クラス全員の友達や他のクラスの友達から一斉に声が上がった。
「ワァァァ!」
「やったあ!やったあ!」
「頑張ったね、晶人君。おめでとう。」
肝付さんは泣きながら喜んでくれた。
「肝付さん、今まで心配をかけてごめんね。今まで本当にありがとうね。」
「晶人、おめでとう!お前は凄いよ!本当に強くなったんだな。俺、嬉しいよ。」
一番の友達だった石神君が目を真っ赤にしながら喜んでくれた。
「石神君、肝付さんと一緒に俺を応援してくれて本当にありがとうね。石神君と肝付さんがいなかったら、俺はずっと土屋にいじめられていたと思うよ。だから俺の話をいつも聴いてくれてありがとう。」
これでやっと私の復讐は終わった。
それ以来、橋口と土屋は急におとなしくなった。
私と教室や廊下ですれ違う時、2人とも私に頭を下げるようになった。土屋一派の白坂たちも同じように頭を下げるようになっていた。
なぜなら、すれ違う前から、私がわざと正面で出くわすように進路を変更したからだ。俺は、これまで土屋と土屋一派の白坂からされたことを思い出すと、怒りが込み上げ、気が済まなかったからだ。
俺が、橋口と土屋は私とタイマンをし、一発で5m以上吹き飛ばされたことが、学校中の噂になった。土屋には6年生の兄がいたが、弟と同じ喧嘩レベルであった兄は、私に手を出さなかった。弟と同じ強さであれば、私からボコボコにされると思ったのだろう。
それからは、土屋や橋口からいじめを受けていた者たちがいつも私の周りに近寄って来て、親切にしてくれた。私のそばにいれば、私のことを怖がって、いじめられないからだ。そして、今まで「晶人」と呼び捨てられていたのだが、「晶人君」とクラスの皆から呼ばれるようになった。
数日経ってから、休み時間に土屋より喧嘩の弱い暴力教師迫田先生から呼ばれたので、机の前に言った。すると、
「あ、あ、晶人君、土屋と白坂と喧嘩をして勝ったそうだね?」
と腐ったような笑顔で話しかけてきたが、私は
「さあ、知りませんよ。」
と一言だけ返答して席に戻った。
教師が子供を殴ったり、けったり、往復びんたをしたり、教科書を丸めて思い切り子供を殴るから、「こいつには、こんなことをしていいんだ。」という悪いモデリングの影響を及ぼすからこういうことになると後で知った。俺は今でも、目の前に暴力教師迫田先生が来たら、謝罪をさせたいと思っている。それほど、あの頃の教師たちは平気で暴力をふるっていたのだ。
私はこの一件をさかいにして、誰からもいじめられなくなった。それ以来、「君付け」と呼ばれるようになった。男子の世界で、一目置かれている奴は必ず「君付け」で呼ばれるのだ。「晶人君」と。
「兄ちゃん、土屋と橋口に復讐できたよ!」
伝えた日、兄は私を持ち上げて喜んでくれた。
「晶人、ついにやったなあ。見上げた根性だ。流石、俺の弟だ。」
と褒めてくれた。兄が俺を抱きしめて、持ち上げながらグルグル回して、喜んでくれた姿を見て涙が流れた、その涙は止まらなかった。
いじめとは、人の心をボロボロに破壊する。
そんな理不尽なことが許されていいわけがない。ほとんどの者は、ずっといじめられることになる。だが私は、兄のおかげで復讐することができた。
「強きを挫き弱きを助く。」幼いころから父に教わった言葉だった。弱い者を救い、横暴な者を懲らしめる。やっと父の言った言葉の意味が分かったような気がした。
俺も土屋たちに凄惨ないじめを受けていたが、もっと酷いいじめを受けていた友達が3人もいた。他のクラスも入れると十数名の友達が酷いいじめを受け、泣き寝入りをしていた。
泣きじゃくっている女の子の髪の毛を短くハサミで切り刻み、バカ騒ぎしている土屋一派。挙句の果ては、スカートまで切るという人間として絶対にやってはならないことを平然と行う悪人ども。「喧嘩が強い」「力が強い」「土屋一派の子分が多い」それだけの理由で、何十人という友達が犠牲に遭ってきた。教科書やノートを切り刻まれた友達もいた。給食にカバン棚で死んでいたゴキブリを入れられた女の子もいたのだ。泣きじゃくっているその女の子を無視する迫田先生。夏休みの自由研究を破かれた友達。冬休みにパンダの縫いぐるみを作って来て、先生に褒められた日の翌日には、そのパンダの縫いぐるみは首も手足もちぎられ、割りばしで手足と首を繋がれていた女の子。
でも、誰も「勧善懲悪」できる友達はいなかった。幸いにして、兄が中国武術のジークンドーを学んでいた「俺」だけしか成敗する人間はいなかったのだ。拳の皮は爆ぜ、腱と骨がむき出しになって何度も病院へ治療に行った。それでも私は、己の信念を貫いた。俺が絶対に皆の分まで復讐をしてやるという意志を最後まで貫いた。自分のクラスの男女皆が万歳をして喜ぶのは当然の結果だった。また、他のクラスの皆からも褒めてもらえた。俺はそれが嬉しかった。
それからだった、私は「いじめをする者をいじめる」ことが趣味になった。「私が味わった苦しみと怒りを味わわされている友達を見捨てるわけにはいかない」からだ。私の正義漢の源流はこのストーリーそのものだ。
【注意事項】
『壇中』を狙った打撃は、人を殺めてしまう危険性のある技です。絶対に真似をしないで下さい。この小説には、この技がこれ以降も登場してきますが、絶対に真似をしてはいけません。
本章に書かれてある内容に、意義や大切さを感じましたら、お友達やご友人、知人、先輩、後輩の方々にご紹介下されば幸いです。
【注意事項】
『壇中』を狙った打撃は、人を殺めてしまう危険性のある技です。絶対に真似をしないで下さい。この小説には、この技がこれ以降も登場してきますが、絶対に真似をしてはいけません。