1-7 俺自身と皆のため、いじめの勧善懲悪 1
少年期のいじめがどれほど少年の心を傷つけ、深い傷跡を残すかご存じでしょうか。これは私の実体験です。アラ還になった今でも、悪夢として夢に出てきます。
子供のいじめも大人のいじめ(パワハラ・セクハラ・モラハラ・過重労働・過労・脳に大きなダメージを与えるストレス)決して許してはいけないのです。
【注意事項】
過去に過酷な「いじめ」体験をされた方は少なくないと思います。その中でも、「思い出したくない。」とか「フラッシュバックする」、「暴力場面が多い」という違和感を覚え、私のX(Twitter)にDMを送られる方は、本小説を読まない方がよろしいかと存じます。
そして遂に、俺は、これまでのいじめに対する復讐を始めることにした。俺はこの機会を、この日が来るのを、この時が来るのを、この瞬間が来るのをずっと待っていた。なぜなら、自分の拳の皮が爆ぜるまで、拳の腱と骨が見えるまで、右手と左手の人差し指と中指の拳が完全に潰れ、山のように膨らむまで、血のにじむ思いで、檀中を「撃つ」のではなく、「撃ち抜く」という地獄の修行に耐えてきたという絶対の自信があったからだ。
そして、ヒンズースクワットと中国武術の震脚でコンクリートに自分の靴の足跡が削れるまで練習を続けてきたからだ。
その日は、3校時と4校時は図工の時間だった。粘土で城を作っていた。案の定、廊下の後ろに座っている俺に、土屋が粘土を投げてきた。それを見た5人の子分たちも粘土をちぎって、俺の頭をめがけて投げてきた。クラスの皆は知らぬふりをしていた。
暴力教師迫田先生は、気付いているのに知らぬふりをしていた。土屋にかかわると授業の妨げになるし、迫田先生は、授業中にうるさい土屋を注意した後、土屋の頭を殴り、その腕を掴まれて一本背負いをされて動けないことがあった。
土屋の暴力教師迫田先生に対する反抗的な態度は凄かった。だから、暴力教師の迫田先生は、土屋には関わりたくないのだ。土屋の方が担任の迫田先生より身長も体重も大きかった。迫田先生は、気付いているのに知らぬふりをする。これはいつものことだった。俺に手を差し伸べてくれる教師は未だかつて一人もいなかった。4校時の終了のチャイムが鳴った時、案の定、土屋たちが私の机に寄ってきて、粘土の塊を髪の毛にこすりつけてきた。
「やめろ!粘土を髪の毛に擦り付けるな!」
私は敢えて、クラスの皆が驚くほどの大声で叫んだ。迫田先生もクラスの皆も驚いた顔で、俺の方を見た。
「うるせえんだよ!茶髪外人が!ゴツン!」
土屋が私の頭を拳で叩いてきた。私は言い返した。
「土屋、今よお~、お前から殴ったよなあ~。クラスの皆がちゃんと見ていたよなあ~、土屋、お前から暴力を振るったよな~。昼休みに校庭のジャングルジムの芝生に来い。素手でお前と『タイマン』してやるからよお~!ぜってえ、逃げんなよ!」
私は敢えて大きな声で叫んだ。取り巻き連中や見て見ぬ振りをする連中、ギャラリーを増やすためだ。私は未だかつてない言動を取った。その私の態度にクラスのみんなが驚いた表情をしていた。
「大丈夫なの、晶人君?いつもの晶人君じゃないよね?」
優しい肝付さんが心配をして声を掛けてくれた。
「あんな晶人君の声、初めてだよね?」
特に、クラスの女子と他の男子から小さい声が漏れていた。
「晶人、本当に土屋とタイマンをするのか?勝てるのか?」
私が信頼している石神君も心配をして声を掛けてくれた。
「大丈夫だよ。まあ、見ていてよ。もう、昔の俺じゃないから。」
そして、もう一人復讐したい奴がいた。陰湿ないじめをする橋口だ。
「おい、ついでだ。橋口!お前、おととい、俺のランドセルをサッカーボールみたいに蹴っていたよなあ~。俺が止めに入ったら、肩と胸を殴ってきたよなあ~。」
成績のいい橋口はだまっている。橋口は狡猾な奴だ。後のことまでしっかり考える奴なんだ。自分が暴力を振るったことを自白するような男じゃない。
「もう一度言うぞ、橋口!お前、おととい、俺のランドセルをサッカーボールみたいに蹴っていたよなあ~。俺が止めに入ったら、肩と胸を殴ってきたよなあ~。」
それでも橋口は黙っている。黙秘して知らぬ顔をしているのだ。
すると、あろうことか土屋一派の白坂が、
「橋口、お前、晶人の肩と胸を笑いながら殴っていたじゃねえか。ランドセルも蹴っていたじゃねえか。なんで一人だけ知らんふりしてんだ。」
学級中が騒ぎ出した。
「白坂が言っていることが正しいじゃん。」
「俺も見ていたけど、晶人に暴力振るっていたぞ。」
「私、見ていた・・・。」
「私も、見ていた・・・。」
遂に橋口が自白した。
「ああ、あの事かあ~。それがどうした?」
「橋口よお~、お前から殴ったよなあ~。お前から暴力を振るったよな~。昼休みにジャングルジムの芝生に来い。土屋と素手でタイマンする前に、お前とタイマンしてやるからよお~!ぜってえ、逃げんなよ!」
「お前、馬鹿か?クソ茶髪外人が、俺に勝てると思ってんのか?」
私は、「しめた。」と思った。これで土屋も白坂も暴力の事実を認めたからだ。クラス全員がこの経緯を把握している。土屋と白坂が暴力の事実を公に認めた。これでいいんだ、兄ちゃんのアドバイス通りに俺の作戦は進んでいる。暴力教師の迫田先生とクラス全員がこの経緯の目撃者になってくれた。後はタイマンで勝つだけだ。
そして、昼休みになった。俺は給食を食べ終わると、芝生を確保するために全力で走った。数分後、土屋と子分たちがやって来た。そのあと、取り巻き連中や見て見ぬ振りをする連中、そして同学年だけじゃない、上級生たちも他のクラスの皆も、ギャラリーになって、いっぱいになった。周りを見回すと200人以上いたと思う。他のクラスのギャラリーたちはジャングルジムに40人、輪っか状のトンネルジムに50人ぐらい上って、高みの見物をしていた。
俺は、敢えて土屋に尋ねた。
「お前は大物だから、最後に勝負だ。まずは、橋口とタイマンさせてくれ。」
「別にいいけどよお~。お前、橋口に勝てんのか?俺とタイマンする前に橋口に殴られて泣くんじゃねえのかあ?アハハハ。」
「橋口の野郎、来ねえなあ、あっ、来た、来たぞ、橋口が来た!」
土屋の第一の子分である、白坂が大声で叫んだ。クラスの皆や他のクラスのギャラリーたちも大騒ぎし始めた。その騒ぎ越えはどんどん大きくなる。俺は、緊張するどころか、気持ちがウキウキしていた。絶対の自信がそうさせたのだ。
「橋口君が来たよ。」
「あっ、橋口だ!」
私は、再度、クラスの皆やギャラリーに聞こえるように大声で尋ねた。
「橋口!お前、俺のランドセルを蹴っていたよなあ?俺が止めろといったら。お前から暴力を振るってきたよなあ。」
「ああそうだが、それがどうした?」
「謝れ!土下座して謝ったらお前を許してやる?」
「はあ?調子に乗るんじゃねえ!」
橋口は、私の肩を押した後、私の髪の毛を引っ張った。膝蹴りをするつもりだ。
「ダンッ!」
「ドン!」
私は、髪の毛を引っ張られたまま地面を強く踏み込み、そのままの至近距離から全体重を右拳に載せて橋口の「壇中」を打ち抜いた。「撃った」のではない、「撃ち抜いた」のだ。1万回練習したことが自然にできたのだ。
橋口は身長は高かったが、太ってはいなかった。その橋口が俺の髪の毛を放し、体が低空を舞って、7メートル以上後方に吹き飛ばされた。
「ええ~っ!」
「ええ~つ!」
「何だ!」
「何だ!」
「何だ!いったい何が起きたんだ!」
「何だ!あ、あ、晶人が一発で橋口をすげえ吹き飛ばしたぞ!」
私は、敢えて悠々《ユウユウ》と歩きながら橋口に近付いた。
芝生に横たわった橋口は、横を向いた姿勢のまま、大声で泣き叫んでいた。
「痛え~、痛え~よ~、骨が折れてる、骨が、骨が折れてる、息ができない!」
「橋口、このままもう一発くらうか?それとも謝るか?」
「・・・。ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません、ごめんなさい。」
「クラスの友達もいじめるのか?もうやめるのか?」
「もういじめません。」
「本当だな?」
「はい。」
胸を押さえながら橋口は大声で泣いていた。校庭中に響くほどの声だった。
「おーい、みんなー!橋口はクラスのみんなもいじめないってさ。」
クラス全員の友達や他のクラスの友達から一斉に声が上がった。
「ワァァァ!」
「やったあ!」
「やったなあ!晶人!」
「よくやったぞ!」
次は、いじめ大魔王の土屋とのタイマン勝負だ。私を最もいじめた土屋とのタイマン勝負だ。
「おい、いじめ大魔王の土屋!お前はこれからも暴力を振るって、俺をいじめるつもりか?」
「当り前よ。晶人、お前、手に何か持っているだろう?橋口があんなに吹っ飛ぶわけがねえ!」
「はあ、見ろよ!俺は何も持ってねえぞ!ナイフや鉄筋だったら、橋口は血を流しているだろうが!橋口が血を流しているのか?」
土屋は、俺が手に鈍器や鉄筋を持っていると疑っている。だからわざわざ橋口の所へ行き、胸とお腹をさわっていた。
「おい、いじめ大魔王の土屋!橋口のシャツを見ろよ、破けてねえだろうが?今さら逃げ出す気か?」
「うるせえ、クソチビ外国人が!確かめただけだ!」
「土屋、俺の手のひらを見ろよ、何も持ってねえぞ!ほれ!」
「晶人、クソ外国人のくせに、橋口に勝ったぐらいで、いばるんじゃねえ!」
「よし、じゃあ、いじめ大魔王の土屋、タイマンを始めるぞ!」
本章に書かれてある内容に、意義や大切さを感じましたら、お友達やご友人、知人、先輩、後輩の方々にご紹介下されば幸いです。