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1-2 正義感の源流 いじめへの勧善懲悪の誓い

 少年期のいじめがどれほど少年の心を傷つけ、深い傷跡を残すかご存じでしょうか。これは私の実体験です。アラ還になった今でも、悪夢として夢に出てきます。


 子供のいじめも大人のいじめ(パワハラ・セクハラ・モラハラ・過重労働・過労・脳に大きなダメージを与えるストレス)決して許してはいけないのです。



【注意事項】

 過去に過酷な「いじめ」体験をされた方は少なくないと思います。その中でも、「思い出したくない。」とか「フラッシュバックする」、「暴力場面が多い」という違和感を覚え、私のX(Twitter)にDMを送られる方は、本小説を読まない方がよろしいかと存じます。

 するとある日、自分の部屋の机で声をあげて泣いた私のそばに4学年上の兄が近付いて来ました。

晶人(アキト)、いじめられているのか?」

「・・・・・。」


「俺はよお~、晶人(アキト)の腕や体のあざがずっと気になっていたんだよ。晶人、いじめられることは恥ではないぜ。いじめは威張りたい弱い者がすることだ。晶人、泣け、うんと涙を流せばいい。人間の目は物を見るためと泣くためにあるんだ。李小龍始祖がそう本に書いていたんだ。だから、泣けばいいんだ。」

 兄の言葉を聞いて私は号泣した。

 しばらくして泣き止んだ私に兄が言った。


晶人(アキト)、『涙』という字は、どう書くんだ?自由帳に書いてみろ。」


「分からない。書けない。」


「そうか、書けないか。自由帳をよく見てみろよ、涙って『サンズイ』に『戻る』と書くんだ。これは、兄ちゃんが担任の西原先生から教えてもらったんだ。だから、辛い時は泣けばいいんだよ。人に見つかりたくなかったら、家の裏で泣けばいい。」


「晶人、『涙』という字の『サンズイ』はどんな意味があるか知っているか?」


「うん。水という意味だよ。」


「そうだ、その通りだ。うんと『涙』を流したら、元の自分に『戻る』のさ。だから泣いた後はすっきりするだろう?泣くことは弱さではないよ。うんと涙を流して元の晶人に戻ればいい。」


「晶人、それから『泣く』っていう字はどう書く?」


「それなら書ける。」


「そうだ、『サンズイ』に『立つ』と書く。泣いて、泣いて、泣きじゃくった後は、立ち上がるんだよ。だから思い切り泣くといい。」


「ちなみに、晶人、『涙』は何でできているか知っているか?」


「う~ん、分からない。」


「『涙』はなあ、お前の血でできているんだよ。赤血球という赤い細胞があるから血は赤いんだ。西原先生がそう言っていた。でも、赤血球が目の奥の膜を通ることができないから、血が透明になって涙になるんだぞ。」


「へーっ、知らなかった。もし、僕がいじめられて家の裏で泣いてばかりいたら出血多量で死ぬのかな?」


「ハハハハ。大丈夫だ。死なないよ。どれぐらい涙を流せばいいか、お前の体がちゃんと教えてくれる。だから心配は要らないのさ。」


 今から50年ほど前の時代は、校内暴力全盛期の時代だった。兄は、中学校を3つも転校を繰り返していた。兄も強くなりたかったんだと思う。


兄は、弱音や愚痴をはかず何も言わなかったが、帆布性のサンドバッグを通販で購入し、車庫に吊り下げた。また、車庫の横に父に頼んで高鉄棒を作ってもらった。兄は李小龍であるブルース・リー始祖に憧れ、ジークンドーという月刊誌を注文し、食い入るように読みながら、構えから足の動かし方や手の動かし方が写真と図で描いてあるページを読みながら、一人で練習を始めていた。当時のサンドバッグはウオーターバッグではなかった。帆布性の布に砂を入れると、コンクリートのように硬かった。


 兄は、最初から素手の拳でサンドバッグを叩いていたのだろう。拳の皮は爆ぜ、兄の血と拳の皮はサンドバッグに染み込んでいた。そして、1週間も経つとサンドバッグに染み込んだ兄の血と皮膚は真っ黒に変色していた。お金のない兄はグローブを買うことができず、ハサミでタオルを切り、それを拳に巻いて叩いていた。


 兄は、ジークンドーの月刊誌を何度も読みながら毎日3時間は練習していた。車庫に吊るしていたサンドバッグから毎日夕方になると鈍い音が響いてきた。サンドバッグを叩き、次にハイキックの練習が済むと、今度は高鉄棒で懸垂をしていた。必死の形相で懸垂をしていた。兄はそれをずっと繰り返していた。車庫も高鉄棒も私の部屋の近くにあったから兄の練習風景がはっきりと良く見えた。必死な表情でサンドバッグを叩き続ける兄。校内暴力全盛期に中学校を3つも転校した兄。言葉では言わなかったが、兄がどんな酷い目に遭ってきたか容易に想像することができた。中学生は体も大きくなるし、力も強い。喧嘩が強ければ、いじめられないことを兄は知っていたんだと思う。


 ある日、まだ兄が帰宅していない時間を見計らって、兄の部屋にこっそりと入り、兄が通信販売で読んでいる「ジークンドー」の本を読んでみた。最初のページはブルース・リーの写真だった。本の半分はブルース・リーの写真や映画の写真だった。


 本の後半は、「ジークンドー」の内容が書かれていた。文章を読んでも難しい漢字が多く読めなかった。でも、基本的な構え方や足跡の形の図やその動かし方が矢印で描かれていた。本のページをめくってみると驚いたことに、空手の世界大会にブルース・リーの写真が載っており、椅子に座った人の体とブルース・リーの拳の位置が僅か2.5cmほどしかないのに、ブルース・リーがパンチを打つと、椅子に座っている人が、椅子に座ったまま7~8m後方に飛ばされていたのだ。


 小学生の私でさえも、パンチは、相手の体との間合いをとって、相手の体や顔面を殴ることぐらいは知っていた。でも、ブルース・リーの「ジークンドー」は相手の体と自分の拳の間合いが2.5cm程度で、相手を7~8m吹き飛ばしていたのだ。私は、全く信じられなかったし、文章で書かれている内容も分からなかった。


 それから毎日のように、兄が帰宅する前に「ジークンドー」の本を読み漁った。ボクシングとは全く違う構えだということは理解できた。足の位置が直線に近いことに驚いた。「なぜ、直線なのか?」私は心の中でつぶやいた。


 しかも、無数の足型の動かし方の下には、フェンシングの写真がたくさん載っていた。「なぜ、ここでフェンシングの写真が出てくるんだ?」私は心の中でつぶやきながら考えこむことが次第に多くなってきた。文章の読めない小学生の私にとっては、分からなかったのだ。


 そんなある日のこと、朝から大雨だったため、全校朝会が体育館で行われることになった。校長先生の話を聞いているときに、私の前に並んでいる同級生に話しかけられたので、その同級生と話をしていた。


 すると、いきなり迫田という学級担任が急にやって来て、思い切り往復びんたをされた。私はその衝撃で倒れてしまった。話しかけてきた同級生も同じように倒れ込んでいた。担任の迫田先生は、いつも子供たちに暴力を振るう最悪の先生だった。


 心理学には「モデリング」という概念がある。人の行為の真似をすることを「モデリング」をいう。今回のその担任の行為は、悪いモデリングに該当する。つまり、周囲の児童たちに「こいつならこの程度の暴力を振るってもいい。」という誤った認知を植え付け、誤学習をさせてしまうのだ。


 これがきっかけになって、私のクラスでは、担任がいないとき他の子ども同士が喧嘩をする時に、往復びんたをするようになった。驚くべきことに、女子同士の喧嘩でも往復びんたが見られるようになった。


 教師は、「聖職者でなければならない。」という理由はここにある。日記帳の提出を忘れた子どもが2人いた。1人の女の子は、成績が優秀。父親がPTA役員でしかも学校歯科医だった。その子には優しく注意して終わった。ところが、もう1人の男子は、日頃から授業中にうるさかったり、忘れ物が目立ったり、トラブルの多っかったりした子どもだった。でも、人をいじめる悪い奴ではなかった。だから私は仲良しだった。そんな友達を、教師は、本を丸めてその男子の頭とほっぺたを思い切り叩いていた。その男子は鼻血を出して泣いていた。この行為も教師による悪いモデリングだ。学級の子どもたちを震え上がらせるだけでなく、「この男子には、ここまでしていいのだ。」というモデリングを提示しているのだ。


 子どもは善しにつけ、悪しきにつけ、人の真似をする。「この男子には、ここまでしていいのだ。」という悪しきメッセージが学級全員に伝わると、その男子をばかにしたり、教科書を丸めて頭やほっぺたを殴ったりする行為が蔓延した。


 俺は、土屋一派からこのようないじめはうけなかったが、依然として人気のない所で蹴られたり殴られたりする行為はずっと続いていた。私はこの頃から、心の中で「転校する前に、こいつらをぶちのめしてやる。」「善が屈服して、悪がはびこっていいはずがない。」という勧善懲悪を誓った。


本章に書かれてある内容に、意義や大切さを感じましたら、お友達やご友人、知人、先輩、後輩の方々にご紹介下されば幸いです。

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 筆者は、少年期の酷いいじめの経験と青年期の二度の心肺停止と臨死体験と死後の世界を経験しました。世界で起きている侵略戦争に対して、強い憤りの念をもつ筆者が、せめて異世界の小説の中だけは、侵略戦争を食い止め、勧善懲悪を貫き通す武士道精神をもった薩摩武士の生き様を描きたいという強い思い入れがあり、せめて異世界ものの小説は絶対的な「善」が存在し、絶対的な「悪」を懲らしめるといったストーリーを軸足に据え、筆者の実体験を基にしながら、主人公が数々の危機を乗り越えながら予定調和的な結末に落ち着くことで、現在起こっている侵略戦争に対するアンチテーゼを提案したいと考えています。 #男主人公 #超能力 #侵略戦争 #臨死体験 #心肺停止 #薩摩示現流 #コスモサイコキネシス #勧善懲悪 #ロマンス #心理学 #大量虐殺 #武士道精神 #命の尊さ #転移 #薩摩隼人
― 新着の感想 ―
[一言] 漢字って意味があるから面白いですね. 歳をとると涙もろくなりましたが、それだけリセットしたいとかが多いということでしょうか。
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