神罰下りし男爵一族
まさか同じ神々の子孫を、同じように冤罪を着せて処刑していた事に。
次はどの国が神罰を受けるのか?
各国は疑心暗鬼になりながらも、助けを神々に願ったが、何故か神殿にも聖女にも信託が下されない。
リーバ帝国は、軍事会議を開いて全ての貴族や、役職に付いてる完了を呼び出し皇族も参加した。
宰相が、帝国に召喚された勇者達のその後を調べ上げた報告書を読み上げる。
勇者召喚は100年前を最後に廃止されたが、それでも勇者召喚の事実が消えることはない。
最初に召喚されたのは少女。
神殿に手厚く保護されていたが、当時の皇帝が強引に少女を側妃にした。
少女は初夜の後、哀しみのあまり自害。
病死扱いされた。
少年の勇者は、軍に無理矢理入隊させて当時戦争していた国との戦争に投入し、激戦の末戦死させる。
100年前に召喚された女性は、皇族に迎え入れられたが元々病弱だったこともあり、先代皇帝を産んで直ぐに亡くなる。
「しかし、最近違法に召喚した事件がありました」
宰相は歯切れ悪く言う。
「まさか……禁忌を破った者が!?」
皇帝は思わず立ち上がった。
「はい、地方の男爵家が召喚した少女を無理矢理男爵の奴隷に。知らせを受けた騎士団が駆け付けた頃には、既に少女は男爵に殺されていました」
「そんな……」
絶望して貴族達は言葉を無くしてしまう。
「我がリーバ帝国も神罰の対象に……なんとかならぬか?」
「……何とか神官を使者に向かわせて交渉して見ましょう」
皇帝に言われ宰相は知恵を絞る。
翌日、天照達率いる八百万の神々の軍勢が帝国の目の前に布陣を敷いた。
宰相は慌て神官を使者として向かわせ、天照に交渉を試みることに。
使者は、若い青年で名はトーマス。
平民から出世した高位の神官だった。
トーマスが馬で布陣がある陣幕まで行くと、直ぐに通され錚々たる神々や仏の並ぶ中を恐縮しながら進む。
帝国は、先代皇后の以降で此方の仏や神々も信仰しており、トーマスは毘沙門天を信仰する神官だったりする。
「貴様が使者か?言い訳を聞いてやろう、話せ」
太陽に照らされ少し眩しいが、着物を着た美しい女性、天照に言われてトーマスは思わず尻込むが……
「ありがとうございます……実は……」
トーマスは三人の召喚された神々の子孫について話した。
「罪は償います。ですが、何卒帝国を滅ぼすことだけは御容赦を」
必死にトーマスは頭を下げる。
「……今の皇族は我が神々の子孫。子孫を滅ぼすことはしないが……男爵家一族は見過ごせぬ」
天照は無表情で答えた。
「……ご温情下さりありがとうございます。ただちに皇帝陛下にお伝えします」
トーマスは天照の答えを聞き、天照に応えると陣幕を辞して帝国へと戻り皇帝に伝えた。
翌日、男爵一族は天照の目の前に突き出される。
天照の目の前には、閻魔が佇み指を鳴らすと地中から地獄の門が出現する。
門から獄卒の鬼達が現れ、男爵一族を生きたまま捕らえて地獄に連れていった。
「罪人は我が裁きましょう、では……」
閻魔は消えるように姿を消し、地獄の門も消える。
辺りには静寂が満ち、帝国は天照と正式に神々の約定を交わした。
男爵一族の顛末は、帝国を上げて市政にまで伝わり、誰もが恐れ同じ過ちを繰り返さないと決意するのだった。