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追放された転生王子、『自動製作《オートクラフト》』スキルで領地を爆速で開拓し最強の村を作ってしまう 〜最強クラフトスキルで始める、楽々領地開拓スローライフ〜  作者: 熊乃げん骨
第五章 過去編 国王誕生祭

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第4話 王子テオドルフ

「近頃名を上げている女性の冒険者がいるとは聞いていましたが……貴女のように若い方だとは思いませんでした」


 馬車に揺られながら、王妃のイザベラがそう口にする。

 彼女の向かい側はレイラが座っており、自分の身の上話をしていた。イザベラは世間話が好きなようで、レイラのことに興味を持ち色々聞き出していた。


「それで他にはどのような依頼をされたのですか?」

「そうですね、この前は洞窟に潜むバジリスクというモンスターを……」


 イザベラはレイラの冒険譚を聞きながら、楽しそうに表情をころころ変える。

 王妃としての凛とした一面と、少女のようなあどけない一面。イザベラは相反するはずの二つの面を持ち合わせていた。


(あまり自分のことを話すのは好きではありませんが、この人の前だと不思議と嫌ではありませんね。不思議な方です……)


 まだ出会って間もないが、レイラはイザベラのことが好きになっていた。おそらく今外で馬を操っているゴードンもこの魅力にやたれた一人なのだろうとレイラは推測する。


「しかし家を飛び出し一人で暮らしているなんて。苦労も多いでしょう」

「いえ、自分で決めた道ですので」

「なんと逞しい! テオドルフも見習わなくてはいけませんよ」


 そう言ってイザベラはレイラの隣に座っている息子に目を向ける。

 今まで黙っていたテオドルフは「う、うん……」となにやら気まずそうに返事をする。


「どうしましたかテオドルフ? 酔ってしまいましたか?」

「いえ、そうではなくて」


 なにやらもごもごと言いづらそうにするテオドルフ。

 どうしたのだろうとイザベラが首を傾げていると、テオドルフは気まずそうにしながらずっと思っていたことを口にする。


「あの……近く、ありませんか?」


 テオドルフは隣に座るレイラの方を見ながら言う。

 現在テオドルフとレイラは隣り合いながら座っている。しかし馬車の中にはゆとりがあるにも関わらず、その距離はゼロに等しかった。

 人見知りなテオドルフは最初距離を取って座っていた。しかしレイラはじりじりと距離を詰め、いつの間にかその距離をゼロにしていた。


「……確かにそうかもしれませんね。どうやら無意識的に距離を詰めてしまっていたようです」

「そ、そうでしたか。じゃあ」

「しかしテオドルフ殿下は護衛対象。離れてしまってはお守りできません。そこでどうでしょう、私の膝の上に座るというのは」

「なんでそうなるの!?」


 謎の提案に困惑するテオドルフ。

 レイラはそんな彼を見ながら背筋がゾクゾクするのを感じていた。


(……なんでしょうこの感覚は? この方と話していると今まで感じたことのない気持ちが湧いてきます)


 レイラは自分の行動を不思議に思っていた。あまり他者に興味を持たない自分が、なぜこのような強引な行動を取ってしまうのかと。


「殿下、私になにか魔法をかけましたか?」

「だからなんでそうなるの!? 僕は魔法を使えませんよ!」

「では毒を?」

「貴女は僕をなんだと思ってるんですか!?」


 謎の質問を浴びせてくるレイラに困惑し続けるテオドルフ。

 嫌われているのかとも考えたが、体をぐいぐいと寄せてくるのでそれも違うのかと思い更に頭を悩ませる。


 そんな二人の様子を見て、イザベラは楽しそうに笑う。


「ふふっ、二人はすっかり仲良しさんですね」

「母上! 笑ってないで助けてください!」

「殿下、あまり馬車で動かれると危ないですよ」

「わっ!? 分かったから抱きしめないでください!」


 楽しげに談笑する三人。

 特に大きなトラブルもなく馬車は順調に進んでいたが、もうすぐ目的地に着くというところで馬車が突然止まる。


「……? どうしたのかしら」


 首を傾げるイザベル王妃。

 一方レイラは剣に手をかけながら、窓から外を確認する。


「……どうやら獣のようです。ようやく仕事を果たせそうです」


 レイラはそういうと颯爽と馬車から飛び出す。

 その足取りはいつもより軽い。


「お二人はお待ちを。時間は取らせません」


 銀色に輝く剣を抜いたレイラは、役目を果たすべく戦地に赴くのだった。


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