第14話 神の斧
『ギャギャ……!』
トレントは明らかに警戒している感じで僕の握る斧を睨んでいる。
斧は木を切ることに特化している。これが自分にとって『天敵』であることを本能的に理解しているんだろうね。
ちなみに神の斧を鑑定したら次のように出た。
・神の斧 ランク:EX
神金属より生み出された大斧。
神力を有しており、瘴気を断ち切る力を持つ。
この斧により切り出された木々は、朽ちることのない最高品質の木材となる。所有者に忠誠を誓い、手を離れても呼びかけに応じて帰還する。
なんか色々と凄いことが書かれている。
また純粋な武器じゃなくて農具に近い物を作っちゃって大丈夫かなと思ったけど、これだけ凄いなら女神様たちも納得してくれるかな?
「いくぞ!」
斧の柄を両手で握り、僕は走り出す。
するとトレントは再び無数の根っこを地面から出して、その先端をこちらに向け勢いよく突き刺してくる。僕はその攻撃を見切り、間をすり抜けて回避する。
時に根を踏み飛び上がり、空中で回転して、相手の根の上を時に走ったり跳ねたりしながら距離を詰める。
『ギャギャ!?』
驚いたようにトレントは声を出す。
僕がここまで動けるとは思いもしなかったみたいだ。
これも全てみんなから貰ったたくさんの加護と、レイラの特訓のおかげだ。以前までの僕なら一刺しにされて終わりだっただろうね。
『ギャギャ……ギャ!!』
僕への認識を改めたのか、トレントは根を動かす速度を上げて本気で僕を仕留めに来る。
僕は慌てずそれを回避し、そして隙を見つけて両手で思い切り斧を振るう。すると黒い根はスパッ! と綺麗に両断される。よし、これならいけるぞ……!
『ギャイ……ギャギャア!!』
トレントは今まで一番多くの根を出現させ、本気で襲ってくる。
するとアンナローゼさんとエレオノーラさんが僕の横にやって来て襲いくる根を魔法と剣技で打ち払ってくれる。
「根は私たちが食い止めます! 行ってください!」
「癪だがあいつの首はお前に任せた! 行けっ!」
二人の言葉に「分かりました!」と返事をして僕は再び駆け出す。
手伝ってくれるのは二人だけじゃない、作り出したゴーレムたちもボロボロになりながらトレントの足止めをしてくれている。みんなの思いを無駄にしないためにも、僕が倒すんだ!
『ギャギャ!』
トレントは足止めを食らっているにも関わらず、更に根を出してくる。そしてその根を攻撃だけじゃなくて、防御にも使ってくる。
斧で切ることはできるけど、何個も壁を作られたらその間に距離を取られてしまう。なんとか相手の動きを止めることはできないかな。
「……あ、そうだ」
僕はあるアイディアを思いつく。
すぐさまそれを実行に移すため、しまっていた神の鍬を次元収納から取り出し右手でつかむ。
「くらえっ!」
そしてその鍬をトレントに向かって思い切り投げ飛ばした。
くるくると回転しながら飛んでいく神の鍬。罰が当たりそうだけど、瘴気をどうにかするためなら女神様も許してくれるよね。
僕の投げた鍬は、トレントのもとに向かって飛んでいくけど、途中で減速してトレントの足元にサクッと突き刺さる。それを見たトレントは『ギャギャギャ!』と嘲るように笑う。
どうやら僕が外したと思っているみたいだ。だけど、
「狙い通りだ……!」
トレントの足元に刺さった神の鍬は、その周辺を一瞬にして浄化させてしまう。神の鍬は攻撃能力こそそれほどないけど、単純に浄化する力は斧より強い。
『ギャ、ギャギャギャ!?』
苦しそうに悶えるトレント。
それを見てエレオノーラさんが驚いたように声を出す。
「な、なんだ!? 奴の動きが止まったぞ?」
「……トレントは木のモンスター。当然根から栄養を吸います。地面が浄化されたことでその成分を吸ってしまったのでしょう。瘴気に侵されたモンスターにとって神の力は劇薬、苦しんで当然です。テオドルフさんはそれを狙ったんでしょう」
「あいつ、そこまで考えて……!?」
アンナローゼさんの推理は当たっている。
トレントが力を発揮できるのは地面が瘴気に侵されているからだと思ったからそれを浄化すれば有利になると思ったんだ。成功するか分からなかったけど、僕は賭けに勝てたみたいだ。
「これで、終わりだっ!」
苦しんでいる隙をついて、僕はトレントに迫る。
するとトレントは力を振り絞り根で壁を作って防御を試みる。
だけどここまで接近したら壁なんて意味がない。両手で斧をしっかりと握り、思い切り横薙ぎに振るう。
「えいっ!」
ズパッ!! という大きな音と共に斧が振るわれる。
すると根の壁はもちろん、その後ろに隠れていたトレントも真っ二つに一刀両断される。
『ギャ……ギャ……』
僕を睨みつけながら、声を漏らすトレント。
その頭部がくるくる回りながら地面に落ちると、トレントはただの枯れた木になってしまう。どうやら今の一撃で完全に倒せたみたいだ。




