第2話 川を浄化しよう!
「ここに来ることはあまりないけど……思ったよりひどい状態だね……」
川を浄化すると決めた次の日。
僕はエルフの姉妹のアンナさんとエレナさんと共に村の北側を流れる川までやって来ていた。
村から徒歩数分で着く距離だけど、あまりこっちの方に来ることはない。
なので川の状態は知らなかったんだ。
「うわ、どろどろだ。これを飲んだら体調を崩すだけじゃ済まなそうだね……」
川の水は黒ずんでいて、どろどろとしている。
例えるならヘドロ。匂いもきつくてとてもじゃないけど飲用として使えない。これで手を洗ったら逆に汚くなってしまうだろう。
「この川が使えれば水の心配もいらなくなるのですが……」
「そうですね。なんとかしましょう」
アンナさんの言葉に僕はそう答える。
早速次元収納の中から神の鍬を取り出し、その白く輝く刃を振りかぶる。
「えい……っ!」
僕は川に近づき、瘴気が一番濃そうな箇所を神の鍬で耕す。
するとパァン! という破裂音と共に、ヘドロのような瘴気がはじけ飛ぶ。
瘴気が消えるとそこには綺麗な水が現れる。これが本来のこの川の水なんだ、これなら飲用水としても利用可能だろう。
僕はその水を手に取ってすくおうとするけど、その綺麗な水はすぐに周囲の瘴気の影響を受けて黒ずんでしまう。
「ああ……っ」
「土と違い水は混ざる。少し浄化したくらいでは駄目そうだな」
エレナさんの言う通り、土と同じやり方じゃ川を浄化するのは不可能みたいだ。
だったら広範囲を浄化してみよう。僕は神のツルハシを取り出してそれをエレナさんに渡し、一緒に周辺を浄化しまくる。
「ふう……これだけやったら……」
川を10メートルほど浄化したところで、僕は鍬を振るうのを止める。
川の近くの地面も浄化しているので、土から瘴気が漏れることもない。これならしばらく綺麗な川の状態を保てるかな。そう思ったけど、
「あ……」
綺麗になった川は、ものの数十秒で再び黒く濁ってしまう。
最初のヘドロみたいな水と比べたらマシだけど、瘴気が混ざった水は生活用水としても使うことはできない。
「これでも駄目か……まさか水で瘴気が広がるのがこんなに速いなんて。どうしたらいいんだろう」
「だったら川の源を探したらどうだ? そこを浄化すれば川が丸ごと綺麗になるんじゃないか?」
「水源を探すってことですね。それいい案だと思います! さすがエレナさん!」
「ふ、ふん。これくらい当然だ」
エレナさんは胸を張って少し恥ずかしそうにそう答える。
水源が瘴気の源か分からないからそれで解決するかは分からないけど、やれることは全部試すべきだ。僕は早速川を辿る準備をしようと一歩踏み出すけど、
「待ってください旦那様。それは逆かもしれません」
「逆?」
突然のアンナさんの言葉に、僕は足を止めて首を傾げる。
逆ってどういうことだろう?
「先ほど川が再び汚染された時、瘴気は下流の方からも広がってきました。それもかなりの速度で。上流から瘴気が流れてくるのは分かります。しかし下流から瘴気がくるのは不自然です」
アンナさんの指摘に僕は驚く。
確かにそうだ。瘴気だって物理法則に従って動いているはず。下流から瘴気が広がるのは明らかに不自然だ。
「姉様、不自然なのは分かりましたが……それだとどういうことになるのですか?」
「瘴気はその濃度が濃い方から薄い方に広がります。つまりこの川を汚染する瘴気の源は上流ではなく下流……つまり、海の方にあるということです」
「瘴気の源が海に……!?」
エレナさんはその事実に驚く。
僕もびっくりだ。まさか川を汚染する瘴気のもとが『海』にあるなんて、考えもしなかった。
「旦那様、この地の海には行ったことはありますか?」
「いえ。そこまではまだ調査できてません」
「そうでしたか。ではそちらの調査も急いだ方がよいかもしれません。なにやら胸騒ぎがするのです……」
アンナさんは自分の胸元に手を当てると、不安そうな表情を浮かべる。
そういえば大地を開拓するのに必死で、海まで気が回っていなかった。この大地は三方を海に囲まれているのだから、そっちにも目を向けなきゃいけないよね。
「瘴気の源がどこにあるかは調べなきゃいけないですし、アンナさんの胸騒ぎも気になります。海を調べた方がいいと思うのですが、お二人も手伝ってくれますか?」
「ええ、もちろんです。ぜひお力にならせてください」
「もちろん私も行く。貴様一人で行かせたら危なっかしいからな」
二人は僕の頼みを快諾してくれる。二人が来てくれるならとても頼もしいね。
なんせ僕たちは世界樹に巣食っていたトレントを倒すことができたチームだ。きっと海の調査もこなせるだろう。
「それじゃあ今日は準備して、明日向かいましょう」
こうして僕たちはまだ調査の済んでいない死の大地の『海』へ向かうことになるのだった。




