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第1話 土地を浄化しよう!

 タマモさんがルカ村を去ってから、三日の時が経った。

 相変わらずこの村は平和で、大きなトラブルは起きていない。


 瘴気に汚染された土地を浄化し、安全な場所を増やし、農地を増やして、新しい食物を栽培する。この繰り返しだ。


 農地を増やしたり栽培したりするのは誰でもできるけど、瘴気を浄化するのは僕が持っている神の農具でしかできない。

 この農具は他の人が使っても一定の効果はあるけど、製作者である僕が使った方が効果が高い。だから普段はゴーレムにお願いして、手が空いている時は僕が自ら瘴気を浄化している。


 今日も手が空いていたので、神のくわを振るって、僕は瘴気を浄化していた。

 肉体労働は疲れるけど、体を動かすのは気持ちいい。


 護衛兼交代用員でもあるゴームに見守られながら、僕は村から少し離れた場所で作業に没頭する。すると、


「お疲れ様です旦那様。精が出ますね♪」

「え?」


 声がしたので振り返ると、そこにはエルフの里長のアンナさんがいた。

 その後ろには双子の妹であるエレナさんもいる。

 アンナさんは木製のカゴを抱えていて、その上には野菜や果物が並んでいる。どれも新鮮で美味しそうだ。


「アンナさん、それにエレナさんも。こんな村の外れまでどうしたんですか?」

「新鮮なお野菜が獲れたのでぜひ旦那様にもと思いまして。ね、エレナ?」

「私は別にそんなこと……」


 エレナさんはアンナさんの言葉に言い淀む。

 前よりはだいぶ話しかけてくれるようになったけど、まだ距離があるみたいだ。


 もっと仲良くなれるといいんだけど……と思っていると、アンナさんが「あら」と笑みを浮かべながら口を開く。


「最初に旦那様に渡しに行こうと言い出したのは貴女じゃないですか。だめよエレナ、もっと素直にならないと」

「ね、姉様!? それは言わないという約束じゃ……!」

「あら、そうだったかしら?」


 顔を赤くして慌てるエレナさんと、のんきな感じでとぼけるアンナさん。

 どうやら姉妹仲の良さはこの村に来ても変わってないみたいだ。エレナさんも僕のことが嫌いになったわけじゃないみたいで良かった。


「ありがとうございますアンナさん。それじゃあひとついただきますね」

「はい♪」


 僕は三日月の形をした果物を手に取り、食べることにする。

 これは確かムーンフルーツという果物だ。エルフの里の特産品で、市場に出回ることはほとんどない珍しい果物のはず。


「もぐもぐ……うん! おいしいです!」

「本当ですか! 良かったです♪」


 シャクっとした食感のムーンフルーツは、上品で爽やかな甘味がしてとても美味しかった。

 その美味しさは前いた世界の果物にも負けていない。あっちの世界にあったらきっと大人気だっただろうね。


「ムーンフルーツは私たちの里でしか獲れないものなのですが、世界樹様の加護のおかげかこの地でもすくすく育ってくれたのです。故郷のものが食べられると知り、エルフの者たちもみな喜んでいます」


 ルカ村の中心部には巨大な樹木、世界樹が存在する。

 世界樹は神力を宿した聖なる樹であり、それが根ざす地は祝福される。


 そのおかげで作物が昔より育つようになったし、村人たちの健康状態も向上したらしい。いいことづくめだ。


「それは良かったです。他になにか困ったこととかはありますか?」

「そうですね……みな楽しそうに暮らしているので、これといって困っていることはありません。私もエレナも、よい暮らしをさせていただいています。ただあえて贅沢を申し上げるのでしたら……『魚』も少し食べたいですね。里にいた頃は海の魚もよく食べていましたから」

「魚ですか……」


 久しぶりに聞いたその言葉に、僕のお腹はぐうと鳴る。

 そう。この村では色々な料理が食べられるけど、魚や貝といった海産物はほとんど食べられないんだ。


「村の近くに川が流れていますが、あそこも瘴気に侵されていますからね……。すみません、そこまで気が回らなくて」

「あ、いえ! 気にしないでください! 今のままでも私たちは十分に幸せですから!」


 アンナさんはそう言ってるけど、この問題はどうにかした方がいい。

 魚を食べなくても食料的には問題ないけど、他にも問題があるからだ。


「どちらにしろ綺麗な水が必要だなとは思っていたんです。今は地下水のおかげでなんとかなっていますが、それが枯れてしまった時のことも考えなきゃいけません。川を浄化して水を取れるようにした方が絶対にいいはずです」

「確かに。それはそうだな」


 僕の言葉に妹のエレナさんが返事をする。

 この先、村人が増えれば水はもっと必要になる。いきなり地下水が枯れてしまったら貯蔵してある水でそれだけの人数をまかなうのは不可能だ。


 水を確保するため、そして美味しい魚を食べるためにも、川の浄化は絶対にやっておくべきだ。


「しかし……よいのですか? 旦那様は忙しいのにお仕事を増やしてしまって」

「気にしないでください。水の確保は大事ですし、それに……アンナさんに喜んでほしいですから」


 アンナさんはこの村のために尽力してくれている。

 彼女がいなければこんなに早くエルフのみんなが村に馴染むことはなかったと思う。


 誰にでも優しく、そして村のためなら協力を惜しまないアンナさんに、僕も恩返しがしたいと思っていた。だからこれはいい機会だと思ったんだ。


 僕の言葉を聞いたアンナさんは驚いたように目を開けたあと、頬を少し赤らめて僕のことをじとっと見つめてくる。あれ、なんだか寒気が。


「旦那様がまさかそこまで私のことを想ってくださっているなんて……♡ 私、うれしいです……!」

「わっ!?」


 感極まった様子のアンナさんは僕に抱きついてくると、キスをしてくる。

 は、恥ずかしい……エレナさんも横目でちらちら見てきてるし。


「エレナ、なにを恥ずかしがっているのですか。あなたも少しは旦那様を労ったらどうなのですか」

「わ、私は別に……。そいつがどれだけ頑張ろうと関係ありませんから」

「あら、私は知っているのですよ? 夜中私に隠れてこっそり旦那様のところに行こうとして、恥ずかしくてやっぱり止めるのを繰り返していることを」

「な……!! ね、姉様なんでそのことを……っ!?」

「ふふ♪ 姉はなんでも知っているものなんですよ。さ、エレナもこっちにいらっしゃい」

「くっ……殺せ!」

「それ誰に言ってるんですか……?」


 こうして僕は村の外れでエルフの姉妹に労われてしまった。

 それにしても川の浄化か……大変そうだけど、頑張らなきゃね。


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