第7話 トラップタワーを作ろう!
「なんだ? なにをやってるんだ?」
「テオドルフ様がまたなにかするみたいだぞ」
「ああ、いつものか」
「今度はなにする気だろうな」
僕が村の外れの開けた場所で準備をしていると、それを見た村の人たちが集まってくる。
なにか面白いものが見られると思っているんだろうね。僕が作るのはだいたいが大きくて目立つ物だから、クラフトしようとするとどこからともなく人が集まってくる。
「おい。そろそろなにを作るのか教えてくれてもよいのではないか?」
僕がガボさんと準備していると、タマモさんがそう尋ねてくる。
平静を装ってはいるけど、尻尾と耳がそわそわと動いている。よほど「魔石がたくさん取れる方法」が気になっているんだろうね。
「もう少しだけ待っててください。ガボさん、図面はこれで大丈夫そうですかね?」
タマモさんに待っててもらい、僕はガボさんに作った図面を見てもらう。
ガボさんにはもうどういう物を作る予定なのかは伝えてある。言った時は「またとんでもないもんを作ろうとしているな、気に入った!」と乗り気だった。
ドワーフは建築にも精通している。ガボさんも例外ではなく、豊富な知識を持っている。彼らの知識を借りれば僕の「自動製作」は更に効果を上げることができる。
「ふむ、これなら強度も問題ないだろう。ワシが保証する」
「ありがとうございます! それじゃ作りますね」
僕はそう言うと目の前のなにもない空間に向かって、両手を突き出す。
そしてさっき作った図面を頭の中で強くイメージする。
自動製作スキルの中には、いくつものクラフトレシピが存在する。そのレシピがある物や、すでに作ったことがあるものをクラフトするのはそれほど難しくない。
だけど自分で考えた物を作るとなると、かなり体力を使う。大きかったり複雑だったりした物なら尚更だ。
これから作る物は大きいし構造も特殊。
脳にもかなりの負荷がかかると思うけど、僕だって成長している。きっとできるはずだ。
「よしやるぞ……自動製作、トラップタワー!」
次元収納の中から石や木、鉄といった資材。それと『瘴気溜まり』を消費して僕は細長い、大きなタワーを製作する。
一瞬で建造された塔を見て、タマモさんは「なっ!?」と驚く。
「これほどの建造物を一瞬で……!? 自動製作か……とんでもない能力を渡したものじゃ……」
タマモさんは僕の作った塔をしばらく見上げたあと「こほん」と咳払いして僕の方を見る。
「なるほど。自動製作、確かに凄い能力じゃ。しかしこれをどう使う? とても魔石と関係があるようには見えんが」
「まあみてて下さいよ。もうすぐ一体目が来るはずですから」
「一体目?」
タマモさんは可愛らしく首を傾げる。
僕が作った塔の中心部分は吹き抜けとなっていて、一回は鉄製の柵で覆われている。僕がそっちに目を向けると、タマモさんもそこを注目する。
すると、
「ん、なにか音が……のじゃあっ!?」
突然一階部分にゴチャ!! となにかが落下して大きな音を出す。
それを間近で聞いたタマモさんはビクッ! と驚いて飛び上がる。耳はピンと立ち、尻尾はボフッと毛が逆立っている。
「な、なななにをした!? お主妾を驚かせて楽しいか!?」
「そんなつもりないですよ! これが魔石を手に入れる方法なんです!」
「これで魔石を? そんなわけが……ん?」
塔の中をよく見たタマモさんは、目を見開く。
そこにはドロドロに溶けた黒い泥のようなものと、小ぶりだけどちゃんとした『魔石』が転がっていたからだ。
「あれは魔石!? どういうことじゃ、なぜ魔石がここに……?」
「この塔の一番上には、瘴気溜まりがセットしてあるんです」
「瘴気溜まり? なぜそんなものを……いや、なるほど、そういうことか……!」
タマモさんはトラップタワーの仕組みを理解したみたいで、興奮したように納得する。
「瘴気溜まりからはモンスターが生まれる。しかし生まれた場所に足場はなく、モンスターは落下する。そして地面に落下したモンスターは絶命し、魔石を落とす。そういうことじゃな?」
「はい。瘴気溜まりからは半永久的にモンスターが出現します。かなり厄介な物ですが、裏を返せば半永久的に魔石を生み出すことができるんです」
僕が前にやっていたクラフトゲームにも似たようなものを作る文化があった。
こっちの世界でも上手くいくかは心配だったけど、どうやら問題なく作動しそうだ。後は床に魔石とモンスターの死骸を回収する装置を作れば完璧だ。
瘴気溜まりから生まれるモンスターは瘴気の塊なので、その死骸は瘴気のカスみたいなものだ。放置しても腐敗しないのも都合がいい。
「なるほど……面白い。瘴気溜まりを利用しようとする者なぞ、神々や英雄の中にもいなかった。女神が気に入るのも頷けるのじゃ。特別なのは能力なのかと思っていたが、本当に特別なのは常識にとらわれぬその発想力じゃったか。欲しいな……妾のものにしたいのじゃ……」
タマモさんはなにかを考えながらぶつぶつと呟いている。
どうしたんだろう。落胆はさせてないと思うけど……。
「気に入った。妾は其方が気に入ったぞテオドルフ。いい物を見せてくれた礼をしたい。妾の馬車に来てくれぬか。ある物を見せたい」
「ある物、ですか?」
「ああ。とても良い物だ。きっと其方も気にいるぞ」
タマモさんはそう言って妖艶な笑みを浮かべる。
見せたい物……いったいなんだろう? 商会長のタマモさんが良い物って言ってるんだから、きっと凄い物だよね。気になるなあ。
「はい。ぜひ見せて下さい」
「くふふ。そう来なくてはな。ついて来るといい」
僕はガボさんに少し席を外すと言い、その場を後にする。
一体なにを見せてくれるんだろう。楽しみだなあ。




