第5話 視察されよう!
「まさかエルフだけでなくドワーフまで住んでいるとは……様々な国を訪れたが、こんな場所は見たこと無いぞ」
村を見て回ったタマモさんは、感心したように呟く。
エルフもドワーフも、人間とはあまり関わらない種族だ。どちらかがいるだけでも珍しいらしいから、どちらもいるこの村はかなり珍しいんだろうね。
畑にやって来たタマモさんはしゃがみこむと土を取って手でいじる。
「土も良い。瘴気など微塵も感じぬ。良い作物が獲れるはずじゃ」
「ありがとうございます。あと水も良ければもっといい作物になるんですけどね」
この村は水を地下水に頼っている。
地下水は普通の水で、ここの土みたいに神の祝福を得られていないんだ。
近くにある川の水も使えたら便利なんだけど、川の水は瘴気に侵されていて使うことはできない。
水は浄化してもすぐ汚染された水が混ざって来ちゃうから意味がないんだ。いつか川も綺麗にできるといいんだけど……まだいい方法は見つかっていない。
「肉体労働はゴーレム、植物の世話はエルフ、細かい手作業はドワーフが手伝ってくれるわけだ。神狼たちが見回っているおかげで魔物も寄り付かない……なるほど、よく回っている」
「はい、みんなで苦手なところを補い合って生活しています」
自動製作という力を持っているからといって、僕一人で村のことを全部やるなんて不可能だ。
みんなが支えてくれているおかげで、村は回っている。僕は感謝を忘れないようにして生活している。
「それじゃあ次の場所を……ん?」
次の場所を案内しようとすると、誰かがこちらに近づいてくるのが目に見える。
背の低い男の人。その人はドワーフのガボさんだった。
「おーいテオドルフ! ちょっといいか!」
ガボさんは手になにかの『器具』のような物を持ちながら僕のところにやってくる。
その器具は、科学の実験とかで使いそうな物だった。複数のフラスコや管が繋がっている。
凄い複雑で精巧な作りをしているけど、錆びたり割れたりしていて使えそうにはない。どうやらかなり昔に作られた物みたいだ。
「ガボさん、それは?」
「見てもらいたい物があるって言っただろ? これがそうだ。ワシの一族の倉庫に眠ってた物なんだが、もう壊れちまっているが、お前ならこれを有効活用できるんじゃないかと思ってな」
そういえばそんなことを言っていたね。
重そうなのに持って来てくれたんだ。確かになんか気になる見た目をしている。
「わざわざありがとうございます。これってなんなんですか?」
「おおそれはだな……」
「ほう珍しい。魔法薬調合台ではないか」
突然タマモさんが近づいてきて、そう言う。
魔法薬調合台? と首を傾げているとガボさんが「おいおい!」と反応する。
「先に言わないでくれよ……それより誰だこの物知りな嬢ちゃんは」
「嬢ちゃんとは失敬な。妾は其方よりずっと長生きじゃぞ。敬わんか」
「はは、おもろい嬢ちゃんだな。テオドルフ、この嬢ちゃんも新しい仲間なのか?」
「まあそんなところです」
そう言うとガボさんはタマモさんの手を握って「よろしくな!」とぶんぶん振り回す。
ガボさんは力が強いのでタマモさんの華奢な体ががくがくと揺れている。
ああ……偉い人なのにそんなことしていいのかな。ガボさんを止めるため僕は話しかける。
「あの、魔法薬調合台ってなんですか?」
「名前の通り魔法薬を作る器具だ。特殊な金属で作られていて、特別な効果を持った魔法薬を作れるらしぞ」
「へえ……それは面白いですね」
僕は魔法薬調合台をジロジロと観察する。
自動製作で魔法薬を作ることはできるけど、回復効果のあるものしか今は作れない。これがあれば他の物も作れるんだ。
「確かに魔法薬調合台は様々な魔法薬を作ることができるのじゃ。しかしそれは派手に壊れておるではないか。とても直せるようには見えないが」
「確かにこれは錆もひどくて普通に直すのは難しいだろう。だがテオドルフ、お前ならやれるんじゃないか?」
ガボさんに「試してみます」と言って僕は魔法薬調合台を触る。
すると頭の中にこれを修復するのに必要な素材が浮かんでくる。
金属にガラスに魔石が何個か。これくらいなら次元収納の中にある素材で事足りそうだ。
僕は集中し、自動製作の力を発動する。
「自動製作、修復!」
能力を発動すると魔法薬調合台が光出し、そして光が収まるとそこには新品同然の魔法薬調合台が出現していた。




