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第3話 突然の訪問

「こちらです」


 村の兵に案内された僕は、商会長が乗っているという馬車のもとに行く。

 その馬車は商人が使っているものにしては豪華な作りになっていた。まるで貴族が使いそうな馬車だ。


 ただその馬車についている装飾は貴族たちが使うような西洋風ではなく、どちらかというと中華風な見た目だ。

 独特の紋様でこちらの世界ではあまり見られない感じだ。


 僕とルーナさんが馬車に近づくと、御者台から一人の人物が降りてきて僕たちの前に立つ。


「ご無沙汰しておりますテオドルフ様。突然の来訪、申し訳ございません」


 そうやって礼儀正しく頭を下げたのは僕も知っている人物だった。


「こんにちはローランさん。謝らなくても大丈夫ですよ、歓迎します」

「ありがとうございます。寛大なお心遣い、感謝いたします」


 ベスティア商会に所属している商人、ローラン・アロペクス。彼は僕が初めて出会ったベスティア商会の人だ。

 最初こそ胡散臭そうな人だと思ったけど、商人としてはとても真面目で優秀な人だ。

 この村が王都の力を借りずにお金を稼げているのも、ベスティア商会とローランさんのおかげだ。彼らにはとても感謝している。


「えっと商会長が来ているって聞いたんだですけど……」

「はい。うちの商会長は、実は前々からこの村に来たいと言っていたのです。しかし商会長も多忙なお方。中々予定が合わず来ることができませんでした。しかし急に予定の都合がつき、急遽『行く』と言い出したのです」


 ローランさんは「はあ……」とため息をつく。

 どうやらかなり無茶なスケジュールを組まされたみたいだ。


「まったく……私も多忙だというのについてこさせて。おかげでまたしばらく休めないではないですか。いくら会長といえどこのような暴挙は控え……」


 ローランさんがぶつぶつ文句を言っていると、突然馬車の中から「ドン!」となにかを蹴っ飛ばすような音が聞こえてくる。

 するとローランさんはビクッ! と背筋と耳をピンと伸ばし口を閉じる。

 どうやら商会長はおっかない人みたいだ。


「こ、こほん。では挨拶はこれくらいにして。テオドルフ様、商会長と会っていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです。ベスティア商会にはお世話になってますからね」


 そう答えるとローランさんはほっと肩をなでおろす。

 それにしてもベスティア商会の会長って、いったいどんな人なんだろう? 噂だとかなりの敏腕で、商会の人はみんなその人を尊敬しているらしい。


 ベスティア商会のほとんどは獣人だ。

 ということは会長も獣人のはず。それで敏腕っていうと、やっぱりムキムキの強そうな獣人なのかな? ライオンとか虎とか、そこら辺の獣人じゃないかと僕は予測する。


 そんなことを考えていると馬車の扉が開き、その人が姿を現す。


「え……」


 その人を見た僕は思わず声を漏らす。

 馬車から降りてきたのは、中華風のドレスに身を包んだ、黒髪の少女・・であった。


 歳は10歳くらいに見える。僕よりも幼い感じだ。

 でも纏う雰囲気オーラは大人びていて、なんだか妖艶さすら感じる。


 頭頂部にはキツネのような長く鋭い耳がピンと生えていて、お尻からは丸みを帯びたもふもふの尻尾が生えている。


 その人は馬車を降りると、ゆっくり僕のことを見ながら口を開く。


わらわはベスティア商会の長、タマモじゃ。よろしく頼むぞ」

「え、あ……はい。テオドルフです、よろしくお願いします」


 なんとか言葉を返すと、タマモさんはふっ、と薄く笑う。なんだか雰囲気のある人だ。

 まずはなにから聞こうかな……と思っていると隣から「な……!」と声が聞こえる。


 そっちに目を向けてみると、そこには驚き目を丸くしたルーナさんがいた。


「な、なな……なんでお主本当にタマモか!? な、なんでここにおる!」

「やれやれ、相変わらず声が大きいなルーナ。千年経ってもなにも変わらんとは進歩のないやつじゃ」


 くす、と笑うタマモさん。

 え、二人って知り合いだったの? しかも千年前ってこの人はいったい、何歳なの!?

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― 新着の感想 ―
章の名前は弧→狐ですかね?
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