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第18話 ごほうび

「ちょっとテオ! あんらずっと難しい話しれんじゃないわよ!」

「わ!?」


 ガボさんたちと今後の話をしていると、突然アリスに絡まれる。

 どうやらもうかなり飲んでいるみたいでベロベロだ。顔は赤いし、舌も回ってない。

 酔っているせいでいつもより距離も近い。僕の首に腕を回し抱き寄せているせいでやわらかいのが色々当たっている。

 今は他の人の目も多いので恥ずかしい……。


「アリス落ち着いてよ。ほら水飲んで」

「はあ? なんで宴で水飲まにゃきゃいけらいのよ! ばかにしてんの!?」

「なんでそうなるの!? ほら、酔いを少しはまそうよ」

「そもそもあらしがたくさん飲んでるのはあんたが相手しないからでしょ! あんたも少しは飲みらさい!」


 アリスはそう言うと、口の中にたくさんお酒を含んだかと思うと、突然僕と唇を重ねてきて、お酒を口移しで流し込んでくる。

 びっくりした僕はそれをごくごくと飲んでしまう。みんなの前でキスされたことへの恥ずかしさか、急にアルコールをたくさん取ったせいか分からないけど、体が熱くなって顔が赤くなる。


「ごく……ぷはっ!? ちょっとアリスなにしてんの!?」

「ふん。いい気味よ。油断する方が悪いわ」


 してやったりという顔をするアリス。

 すると一連の流れを見ていたドゥルガン王が楽しそうに笑う。


「はは、勇者殿は大胆だな。若いというのは素晴らしい」

「うっさいヒゲ王」

「ヒゲ王!?」


 アリスはドゥルガン王をめっちゃ失礼な呼び方で呼ぶ。

 酔っているとはいえやり過ぎだ。僕は「ちょっとアリス、ダメだよ!」と止めるけど聞いてくれない。


 それどころかアリスは僕を抱き寄せ、自分の胸の中に僕の顔を埋めながらドゥルガン王に宣言する。


「ヒゲ王、あんらここのドワーフの女に言っておきなさい。こいつはあたしのだから手を出すなっれね。何人か色目使ってる奴がいらけど、こいつはわらしの相手に忙しいの」

「……なるほど。心得た。同胞がテオドルフ殿と婚姻してくれれば更に結束を深められると思ったが……勇者殿の顔を立てよう」

「ふん。それでいいのよ」


 アリスはそう言うと僕を解放してくれる。

 はあ、はあ、やっと息ができた。


「ちょっとアリス。陛下に失礼だよ。ちゃんと謝って……」

「よい。今宵は無礼講。アリス殿は我が都市を守るのに尽力してくれた。これくらいの言葉で怒るほど私は狭量ではない」

「へえ、ヒゲのくせに物わかりがいいのね」

「アリス!」


 僕は失礼なアリスを怒るけど、アリスは「つーん」とそっぽ向いてしまう。

 酔っていることでいつもよりわがままになってしまった。まあそういうところも可愛いんだけど、王様に失礼なことをするのはハラハラするのでやめてほしい。


「とにかく! こいつは私のだから! 私の目が黒い内は手を出させないから、覚えておきなさい!」


 アリスはこの場にいる全員に聞こえるくらい大きな声で宣言する。

 それを聞いたドワーフの人たちは楽しそうに笑い、指笛を吹いて囃し立ててくる人もいる。うう、恥ずかしすぎる……。


「ふん。これだけ言えば大丈夫でしょ」

「やり過ぎだよアリス。ほら水飲んでよ」

「しょーがないわね」


 アリスは僕から水が入った杯をひったくると、腰に手を当ててごくごくと一気に飲み干す。

 男らし過ぎる飲み方だ。


「ぷはー、頭すっきりした。それじゃ行くわよテオ」

「え?」


 空になった杯をテーブルに置いたアリスは、僕の手首をガシッとつかむ。

 その握力は強く、僕の力ではとても振りほどけない。


「い、行くってどこに?」

「私まだ今回のご褒美もらってないんだけど? こんなに頑張ったんだから、もちろんたくさんくれるのよね?」

「え、えーと……帰ってからっていうのは……ほら、今疲れてるし……」

「なに言ってんのよ。帰ったらレイラがいるじゃない。今はエルフの姉妹もいるし、私が独占できないでしょ? 今しかないの」


 アリスは肉食獣のようにぺろ、と自分の唇を舐める。

 もちろん僕は獲物役だ。


「ぐっちゃぐちゃにしてあげるから覚悟しなさい……♡ 言っとくけど寝かさないから」

「は、はは……」


 こうして僕はアリスに連れられ、宿に戻る。

 言葉通りぐっちゃぐちゃにされた僕は、次の日全身筋肉痛になってしまうのだった。


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