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第13話 対決、岩の王

『オオオオオオォッ!!』


 恐ろしい声を上げながら、岩の王が突っ込んでくる。

 道中には自分が生み出したゴーレムがいるけど、それらを蹴散らしながら向かってきている。同じゴーレムでも仲間意識みたいなものはないみたいだ。


「行かせはしない!」


 岩の王の前にまず立ちはだかったのは、ガーランだった。

 ガーランは自慢の大楯を構え、岩の王の突進を正面から迎え撃つ。


「来い!」

『オオオッ!!』


 両者が激突し、凄まじい衝突音が鳴り響く。

 空気がピリピリと震えるほどの衝撃。普通の人間だったらバラバラになっちゃうほどの威力だ。

 だけどガーランは大楯を地面に突き刺し、更に鍛えられた両足で踏ん張ることで岩の王の突進を受け止め切ってみせた。あれで魔法を使ってないっていうんだから驚きだ。


ふんッ!」


 攻撃を受け止めたガーランは、右手に持った剣で岩の王に斬りかかる。

 ガーランは護りの腕が一級品だけど、剣の腕も王国随一だ。その剣閃は鋭いが、岩の王の体はその一撃を耐え切ってしまう。


「硬い……! この程度では効かんか!」


 岩の王の体は真っ黒い岩で構成されている。

 おそらく普通の岩とは違うんだろう、魔法的効果が付与されているのかもしれない。あれを壊すのはドワーフの秘密兵器「熱素爆弾カロリックボム」でも大変だろう。


「ガーラン退いて! 私がやる!」


 そう言って岩の王に駆け寄るのはアリス。

 彼女は高く跳躍すると、岩の王に向けて思い切り剣を振る。


大勇斬ブレイブスラッシュ!」


 女神様より与えられた『神力』が込められた斬撃が、岩の王に襲いかかる。

 その技は頑丈な城壁すらも一撃で破壊する威力がある。これならいくら岩の王でも無事では済まない、そう思っていたけど、


『ウゥ……オウ!』


 なんと岩の王は急に機敏に動き、その一撃を回避した。

 予想外の行動にアリスも「避けた!?」と驚いている。

 今までまったく攻撃を避ける素振りを見せなかったのに。アリスの攻撃が危険ってことをすぐに判断できるなんて……やっぱり他のゴーレムとは違う。


『オア!』

「ぬっ!?」


 岩の王はその大きな手でガーランを大楯ごとつかむ(・・・)

 そしてそのまま持ち上げると、二撃を放とうとしているアリスめがけてガーランを投げてしまう。


「ぬわーっ!」

「ちょ、え、どうしたらいいの!?」


 野球ボールを投げるように高速で投げられたガーラン。

 アリスは避けようとするが、今避けたらガーランは地面に叩きつけられてしまう。それはまずいと思ったのか、アリスは投げられたガーランを正面から受け止める。


「痛っ……!」


 アリスはガーランをキャッチして、後ろに吹き飛んでしまう。

 あんな速度で人を受け止めたんだ。かなり痛かっただろう。僕は遠くに飛ばされてしまったアリスたちに大声で呼びかける。


「アリス! 大丈夫!?」

「私は大丈夫! それよりそいつを!」


 目の前の脅威てきを追い払うことに成功した岩の王が、僕たちの前に立ちはだかる。

 お、大きい。今まで遠くで見てたから実感が湧かなかったけど、近くで見ると凄い威圧感だ。

 やっぱり普通のゴーレムとは全然違う。


『オオウ……』

『ゴウッ!』


 だけど僕が乗っているゴームはまったく気負ってなくてやる気満々って感じだ。

 凄い心強い。僕も頑張らなくちゃ。


「行くよゴーム! 僕たちで倒すんだ!」

『ゴウッ!』


 ゴームが駆け出すと、同時に岩の王もこちらに向かってくる。

 手足の長さ(リーチ)は完全に向こうの方が上。勝つためには距離を詰める必要がある。

 だったら、


自動製作オートクラフト、落とし穴!」


 岩の王の足元に落とし穴を製作する。

 すると岩の王の右足がズボッと地面の中に落ち、その場で体勢を崩す。

 その隙に僕たちは岩の王に肉薄する。


『ゴオオオオッ!!』


 ゴームは右の拳を強く握り締めると、岩の王の頭部を思い切りぶん殴る。

 岩の王は手足は長いけど、頭部は小さめだ。ゴームの拳を受け止め切ることは不可能で、頭部が激しく揺れる。


『ウウッ!? オアアッ!!』


 お返しとばかりに岩の王がその長い手で張り手をしてくる。

 するとゴームは両腕を交差させて防御をして、その攻撃を耐える。ガン、ガン、と乗っている僕にも衝撃が来るけど、耐えられるレベルだ。


「す、凄い。あの岩の王とやりあえているぞ!」

「いけー! そのまま倒してくれ!」


 ゴームの活躍にドワーフの兵士たちも湧く。

 よし、士気も上がっていい感じだ。


「ゴーム。タイミングを計るんだ。岩の王も無限には攻撃できない。攻撃の切れ目を狙おう」

『ゴウ!』


 力強く返事をしたゴームは、防御を固めて岩の王の猛攻を耐え凌ぐ。

 しばらくそうしていると、岩の王の攻撃の頻度が、少し落ちる。ゴーレムは魔石からのエネルギー供給で動いている、最大パフォーマンスで動ける時間は限られているんだ。


 岩の王は果敢に攻めてきたが、エネルギーが切れてその動きが一瞬途切れる。

 その隙を僕たちは見逃さなかった。


「行くよゴーム! 自動製作オートクラフト撃杭射出機パイルバンカー!」


 ゴームの右腕に大きな武器が装着される。

 中央部に巨大な『くい』が備え付けられたその武器は、魔力による爆発で杭を射出し、相手に打ち込むというものだ。

 射程は短く、反動もかなり大きいいわゆるロマン武器に該当するものだけど、その分威力はかなり高い。あのアダマンタートルに大ダメージを与えたこともあるくらいだ。


「いっけー! ゴーム!」

『ゴウーッ!』


 ゴームは右腕を思い切り振り、岩の王の腹部に拳を叩き込む。

 そしてそれと同時にパイルバンカーが起動。杭が高速で回転しながら射出される。


 ズギャギャギャ!! という凄まじい音と共に岩の王の腹部に甚大なダメージを与える。


『ウオ……オオオオッ!?』


 そのままゴームが拳を振り抜くと、岩の王は後方に吹き飛び、地面に転がる。

 そしてそれと同時に他のゴーレムたちも一斉に動きを止め、固まる。どうやらゴーレムに出していた命令が切れたみたいだ。


「ふう……なんとかなった、かな?」

『ゴウ』

「ありがとうゴーム、助かったよ」

『ゴウ!』


 嬉しそうに返事をするゴーム。

 僕一人で岩の王を相手にするのは流石に大変だ。ゴームを連れてきていて本当に良かった。


 戦いも終わったし、アリスたちのところに一回行こうかな……と思っていると、


『ウオオォ……』


 なんと倒したと思っていた岩の王が、ゆっくりと起き上がる。

 あの攻撃を食らってまだ動けるなんて。これは倒すのに苦労しそうだ……!


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