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第6話 兄さんの力になろう!

「それにしてもまあ、本当にたいしたものだ。テオドルフのことを過小評価していたつもりはないのだが……ここまで規格外な力を持っているとはね」


 協力関係を結び、しばらく雑談しているとパトリック兄さんがそう切り出してくる。


「おそらく父上もニルスも死の大地の現状を把握していないんだろう。もしこれを知っていたら、なにかしら手を打ってくるだろうからね。これだけの豊富な資源、見逃すわけがない」

「やっぱりそうですよね……」


 この大地で取れる作物は、商会が喉から手が出るほど欲しがる一級品だ。

 土から宝石が取れるようなもの、不作で王国の財政は悪化しているようなので父上はなんとしてでも欲しがると思う。


「まあ父上が欲しがったところで、この村の防衛設備ならそう簡単に崩されることはないだろう。しかし戦いが起きれば、負傷者が出る。敵にも味方にもね。それはテオドルフも望むところではないだろう」


 兄さんの言葉に僕は頷く。

 モンスターが相手ならまだしも、王国の兵士や騎士を傷つけたくはない。

 彼らは父上の命令に従っているだけなんだから。


「だから私は王位を奪うまで、この村のことは隠しておいた方がいい。バレないように私の方でも細工・・をしておこう。この一件で傷つくのは王族わたしたちで十分。なるべく被害は出さないようにしよう」

「はい。僕もそれでいいと思います」


 ノブレス・オブリージュという言葉がある。

 高い地位を持った者には、果たすべき責任があるという意味だ。

 もともとはただの一般人な僕だけど、王族として生まれ直した以上、その下で生活する人たちを守らなくちゃいけない。

 僕がどこまでやれるかは分からないけど、この村に住む人たちを守れるなら、なんだってやるつもりだ。


「ありがとう、心強いよ。テオドルフにはその時が来るまでは今までどおりこの地の開拓を進めておいてほしいんだけど……実は今、一つだけ手伝ってほしいことがあるんだ」

「手伝ってほしいこと、ですか?」

「ああ。実は今、協力を要請しているとある国があるんだけど……なかなか首を縦に振ってくれなくてね。まあフォルニア王国に楯突くのだから、渋って当然なんだけど」


 兄さんは今、自分が王位を奪うことに賛同するよう他の国に頼んでいる。

 他の国も今のフォルニア王国には困っているので、協力する利点はあるんだけど、今までの関係もある以上、そう簡単には賛同してくれないよね。

 それになによりパトリック兄さんが失敗すれば、父上の報復が待っている。それだけは避けたいだろう。


「その国は私の力を示してほしいと言ってきた。そしてその相手として『黄金竜』の討伐を指名してきた」

「黄金竜、ですか?」


 聞いたことがない名前だ。

 名前からして金色の竜ということは想像がつくけど、そんな竜がいるんだ。


「ああ。黄金竜はその名の通り鱗が金でできた黄金の竜だ。もともとは岩石を主食とするロックドラゴンだったらしいんだが、金鉱脈の金を食べ尽くしたことで異常個体へと進化してしまったらしい」

「異常個体ですか……」


 モンスターの中には色んなことが原因で、強くなったり凶暴化する異常個体がいるって聞いたことがある。黄金竜もその一体だったんだね。

 ロックドラゴンは食べた岩を自分の体の一部にするって聞いたことがあるから、黄金竜はきっと食べた金を自分の体の一部にしてしまうんだと思う。


「黄金竜は金を好んで食べるようになったらしく、なんと協力を要請した国の宝物庫を襲い金銀財宝を食い尽くしてしまったらしい。その国の王はそれにおかんむりでね。それを討伐し、黄金の鱗を献上すれば協力すると約束してくれた」

「つまり僕は、その黄金竜の討伐に協力すればいいんですね?」

「話が早くて助かる。だけど足止めだけしてくれればいいんだ。あと数日もすれば私の私兵がここにたどり着く。それまで死の大地の南東部に広がる山脈『ヴェルグ山脈』にいる黄金竜に逃げられないようにしてくれればそれでいい」


 兄さんの言う通り死の大地の南東部には大きな山脈がある。どうやら黄金竜は今、そこを根城にしているみたいだ。


 兄さんは足止めをすればいいと言っているけど……それじゃあちょっと不安だ。

 ヴェルグ山脈は村に結構近い。その黄金竜がいつ村に現れるか分からない。だったら、


「兄さん。その黄金竜の討伐、僕たちがやります」

「なっ!? 黄金竜はかなり強力なモンスターだぞ? 確かにこの村の設備は整っているけど危険じゃないか!?」

「大丈夫です兄さん。僕たちに賭けてみてくれませんか?」

「……分かった。そこまで言うなら、信じよう。弟に危険を冒させるのは本意じゃないけど、奴を討伐してくれるのは凄い助かるからね」


 兄さんは少し悩んだけど、僕の提案を飲んでくれる。

 よし、そうなったら善は急げだ。


「レイラ」

「はい。すぐに黄金竜討伐隊を組みます。それほど時間はかからないかと」

「ありがとう、助かるよ」


 レイラはすぐに僕の意を汲んでくれる。

 そっちは任せて大丈夫そうだね。


「殿下ぁ! 私ももちろん出陣しますぞ!」

「うん。ガーランの力も頼りにしてるよ」


 新しい仲間も増えたし、戦力は十分だ。

 久しぶりに会えたんだ。兄さんに成長した姿を見せないとね。


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