自己紹介
入学式が始まった。
まずは理事長の挨拶だった。
「皆さんご入学おめでとうございます。
理事長の御堂 龍弥です。
これから皆さんは日々仲間達と共に切磋琢磨し、この学校で学びを得てほしいと思います。ーーー。」
40代くらいだろうか。
若い頃は大層おモテになっただろう整った顔立ちだ。
しかしそこには歴戦の猛者の様な威厳を感じさせる。
そもそも、ただの一般人がこの学校の理事長になど慣れるはずもないのだが。
その後も入学式は続き生徒会やら何やらと進んでいった。
終わった後は各自教室へと向かう。
(えーっと、私はB組か。)
先程の物憂げな顔は何処へやら。少女は教室へと足を進めた。
少女が教室に着けば今後一年お世話になるであろうクラスメイトたちが既に多く居た。
少女はそのまま自分の席に着いた。
ーーガラッ。
不意に音を立て教室のドアが開かれた。
現れたのは、少し吊り上がった目のせいかキツイ印象を与える女性だった。
「全員、席に着け。」
どうやらこのクラスの担任の様だとクラスの全員が悟った。
「よし。席に着いたようだな。
私は本日からお前たちB組を担任することになった
安藤 瞳だ。まずはお前たちの自己紹介といこうじゃないか。」
そして意識は自分達のクラスメイトへと移った。
(あれっ、出席番号順的には私が一番最初だ!)
少女は考える。
ーーいかにすれば上手く自己紹介が出来るかな、と。
「まぁまずは出席番号順といこう。
おいお前からだ。「天宮」」
そして少女は席を立った。
「えっと、天宮 由穢です。
得意属性は水です。一年よろしくお願いします。」
少女はーー由穢はまず一番最初の自己紹介を無事やり終えたのであった。
由穢が席に着けばすぐ後ろの男子が席を立った。
「俺は伊座波 雅人です。
得意属性は雷。よろしく。」
イケメン君であった。
得意属性とはその名の通りその人に最も合った魔法の属性の事である。
他にも様々なスキルなどがあるが、得意属性は火力が段違いに大きいのである。
(そんな得意属性が雷という攻撃力が高く更には機動力にも優れているとは…。)
由穢はすごい奴が後ろにいるなーと関心していた。
「私の名前は内田 聖菜です!
得意属性は治癒でーー。」
…
…
…
クラス内の自己紹介も進み終盤に差し掛かった。
「俺は八乙女 瑛だ。
得意属性は火と光だ。
みんなこれからよろしく!」
これにはクラスメイト全員が驚きの声を上げた。
勿論由穢も。
(得意属性の二つ持ちねぇ〜。『相変わらず』才能の塊だなぁ。)
得意属性の二つ持ちとは五千万人に一人と言われるレアケースだ。
そんなレアケースがあるとは恐るべし学校。
そのまま自己紹介は終わり由穢たちは先生からの説明を受けた後直ぐに帰宅となった。
「うわー。デッカ。」
由穢が帰宅したのは寮である。
この学校では生徒は正当な理由がない場合全員が寮の生活をする事になる。
土日の休みの日は学校側に外出届を出すことで始めて外出ができるようになる。
由穢はそのまま自分の部屋へと帰宅した。
「明日から頑張りますか。」
そう自分に一言残し、眠りの世界へと旅立っていった。
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「どうですか?今年の一年は。」
「ああ。
今年の子たちは今までで一番優秀な子たちが集まっていると思うよ。」
「……そうですか。
例えば「あの方」のご子息である八乙女なんかがそうでしょうか?」
「まぁそうだね。だけどねもっともっとすごい子が今年入ってきたんだよ。」
「‼︎そうなのですか…。」
「君は知らなくて当然だ。
あの子は一体この学校で何をしてくれるんだろうね。」
(ーーとても楽しみだよ。天宮 由穢君。)
この学校の理事長。御堂は笑みを浮かべた。
主人公が主人公していない………。
御堂 龍弥
彼は天宮 由穢を知る数少ない人物であったーー