学校へ行ったよ!Part2
前の部の修正が徐々に進み、設定がやや変更になっている場合があります。修正前の部を読まれていた方が今回の話を読むと、若干ストーリーが噛み合わない可能性があります。前の部を読まれるか、「そう言う設定なんだ」と言う事にしてください。
さて、今回のお話を理解するには、第3部の「戸籍変更は大変だ」と第7部の「可憐な乙女の恋心」が必読となっております。一度読まれた方も、本日ストーリーに多少修正を入れたため、必ず予習をしてから、読むようにしてください。(でないと理解できないと思います。)
通学を再開して早々、私はピンチを迎えている。私が男子だった頃、最も苦手とする女子に、今、絡まれているのだ。
彼女は「佐野 いずみ」、クラスカーストでは1位に君臨する女王だ。男子だった頃、しょっちゅう彼女に絡まれていた事もあり、彼女に対する苦手意識は半端ではない。
「ねぇ、美咲さん。校舎を案内したいのだけど、放課後時間あるかしら?」
「よ、よろしくお願いします!!」
(知ってるんだけどなぁ......)
「じゃあ、放課後掃除が終わったら教室に集合!良いわね?」
「はい!」
(相変わらず尖がってるなぁ......)
____放課後
「お待たせですわ!掃除が少し長引いてしまって申し訳ないですわ!」
「いいえ、私も今、掃除が終わって戻ってきたところです!」
「お気遣いどうもですわ! でも、これからは友達として気遣いは不要ですわ!よろしくて?」
(あれ?以前の彼女はこんな事言う人だったっけ? いつも、周りの女子に対しても鋭く接してた気がするのだけど......そういえば、さっきも周りと親しげに話してたよなぁ)
「はい!」
「敬語も不要ですわ!」
「うん。わかったよ!」
「それでいいのですわ!」
(やっぱりおかしい......)
「佐野さんも普通に話して!」
「"佐野"でいいわ!」
「じゃあ、いずみちゃんで!」
彼女の顔がほんのり赤くなっていた。
(そういえば、彼女、名前でかつ"ちゃん"付けで呼ばれてるところ見たことなかった......慣れてないんだろうなぁ)
「......なんだか照れるわね! それで、私の話し方でしたっけ? これは癖なのですわ! 本当は直そうと努力してるのだけど......中々癖が抜けないのですわ!」
彼女の口から、驚くべき事を聞いた。
あの、上から目線の彼女、お嬢様が周りと同じ様に振舞おうと努力しているのだ。
(人は、たったの半年でここまで変わるものなのか......)
私は初めて、彼女に対する好印象を感じた。
それから、彼女に校舎をじっくりと案内された。その後、なんと部活動紹介までしてくれたのだ。
「ちなみに私は吹奏楽部員よ! 良ければだけど美咲さん、ちゃんも吹奏楽に入ってくれると嬉しいわ!」
(あれ......帰宅部じゃなかったっけ?)
「今日はありがとう! 今度、吹奏楽部に体験入部させてもらうね!」
「体験なんて必要要りませんわ! いくらブランクがある言っても6か月くらいだからまだ取り戻せますわ! 千早君!」
(え、今なんて!?)
「えっ!?」
「美咲ちゃん、いいえ、千早君、私を騙そうと思っても無駄ですわ!」
「私、千早じゃないんだけど......」
(なぜバレている!?)
「私の父は、府議員なのですわ! 情報網を馬鹿にしてはよろしくなくってよ? とはいっても、貴方が千早君だってわかったのは、つい数日前の事らしいけど」
(政府のセキュリティ、ザルじゃ過ぎない? 世間に知られるのも時間の問題か......)
「安心してよろしくってよ?私の父は研究所の管理もしているから情報が入ってきただけで、他の人には言ってないし、知られていないですわよ!」
(なんだ......とりあえず、私の事知ってる人は多くはないみたいだな)
「そこまで知っているのなら、どうしてここまで親切にしてくれるの? 昔は仲良くはなかったじゃん」
急に人が変わった様に、彼女に対して反撃質問した。そのため、彼女は一瞬、状況が読めずに一瞬、唖然としていたがすぐに立ち直った。
「今だから言えるけど、私、元の貴方の事が好きだったのですわ! 今の可愛い貴方も好きですけどね」
(そういえば、当時、異様に粘着されていたのを覚えているけど......そういう事だったのか)
「ねぇ、千早、いえ、今は美咲でしたわね! 今までのお話聞いてもよろしくって?」
「秘密って言ったところで、もうほとんどの事情しってるだろから......意味はないか」
「その通りですわ!」
彼女は私の事情を知っていてる、貴重な存在だ。今後の事を考えれば、彼女を見方にしておくメリットは大きい。家族や研究所の人以外に相談できる相手が居るのは良い事だ。よって、彼女には女子化現象をした日から、今に至るまでの半年間にわたる出来事を教えた。
「あなたという人は......変態ですわ!」
「......相手をいきなり罵倒するのは相変わらずだね」
「研究所生活で長時間拘束を望むなんて変態以外何者でもありませんわ!」
「それは、期間限定の話だよ......学校始まったら、そう長い時間拘束されることも無くなるし、それに、これから1か月間は自宅で普通に生活するよ!」
そう。総理大臣との会談で、まず「戸籍の案件が完了するまでは研究所生活」それからしばらくの間は自宅での生活をして、それからどっちが良いかを決めるという話なのだ。
「もし、研究所生活を選んだとして、放課後遊ぶとかできなくなったりするのかしら?」
「いや、それは許されるよ。バイタルチェックとかをいつどのタイミングで始めるかは私の意思で決められるし、なんなら届け出さえ出せば友達の家に泊まりに行くこともできるよ」
「結構待遇は良いってわけね......」
研究所生活については、後で語るが、待遇は素晴らしいものだった。
さすがに、食事の内容を指定することはできないが、好きな物をあらかじめ伝えておけば、定期的に出してくれる。その上、ゲーム機やラノベといった娯楽も国のお金で揃えてもらえる。これも、拘束されている間の自由が利かないため、精神的に病んでしまう事を防止するためらしい。
正直、これからの自宅生活の方が、色々と制限が掛かったり、心理的状態や体調の記録を毎日書いて、提出しなければならない事を考えれば、不便なのだ。
「困ったことがあれば、私にすぐ相談するのが良いですわ! 最悪の場合、父の力で貴方を助けることもできますわ!」
「ありがとう......こんなに想ってくれる親友が居るなんて幸せ者ね!」
「今、何て言ったんですの?」
「えっ?」
「こんなにも想ってくれる......の後ですわ!」
「......親友だけど、もし気に食わなかったらごめんね」
「いえ、特に問題ないのですわ......むしろ、『ありがとう』なんですわ!」
そうして、彼女「佐野 いずみ」さんと仲良くなった。
____帰宅後
「お父さん、お母さん、話があるのだけど......聞いても良い?」
私がそういうと、まるで、質問される事をわかり切っていたかの如く、即座に父と母は改まった。
「聞きたい事ってなんだ?」
「今日、学校で『失踪』って聞いたんだけど、どういうこと?『海外留学』してる事にしたんじゃなかったの?」
「やっぱり聞いてくると思ったわ」
私が父に質問すると、母が事情を説明しはじめた。
「まず、『海外留学』という事だが、結論から言うと、証明する事ができなかったのよ。だって、そもそも論として中学生は保護者の監視下に居ないとダメなの。そして、海外に親戚がいるわけでもないから、説明しようにもできなかったわけ。そこでお父さんと相談したんだけど......」
「ここからは俺が話そう。その時点で、もう、戸籍を新しく作り、転入手続きをする方針になっていたんだ。だが、お前の事の説明が壁として立ちはだかっていて、それを乗り越えなきゃならなかった」
「『学校に行きたくないって言ってます』って説明すればよかったんじゃないの?」
「それも考えた。だが、永遠に『不登校』という理由で通し続ける事は無理だ。教師の家庭訪問はどうする?一応、中学は義務教育だ。親としては学校に行かせる義務がある。家庭訪問でお前に直接話したいと言われればそれを阻止する事はできない。最悪、通報されるリスクもあるからな」
その他にも理由を聞いた。
私の転入手続きが終わり、通学を再開し始めたら友達を家に呼ぶことがあるだろうことは容易に想像が付く。その友達が、元の私が居ない事を察知されると後々問題になる可能性がある。次に、いずれは卒業を迎える。それまでに、教師はもちろん、児童相談所の役員が家庭訪問してきて、問題となる可能性がある。
諸々のリスクを考えれば、『失踪』としていた方が後々都合がいいという事らしい。
「前に、警察官が数人で家宅捜索に来ただろ?『失踪』とした事が原因だ」
「もしかして、外に出れなかったのも『失踪』が関係しているの?」
「それも理由の一つだ。なんせ、捜索活動が長期間に渡って行われていたからな!」
「それでも、教えて欲しかったよ......」
「それは、本当に申し訳ないって思ってる。ごめん」
「ごめんね......美咲」
急に方針を二度も変えたことに対して、私は憤りを隠せずにいたが、やむを得なかったこと、そして、最終的に上手く言っている事を知って、大人しく受け入れた。
「あ、そういえば、私ね! 今日友達ができたよ!」
さっきまで、両親の顔は曇っていたが、報告を聞いて顔が晴れ、祝福してくれた。
「佐野さんって言う人なんだけど......お父さんが議員で、私の諸事情がバレててびっくりしたよ!」
晴れて明るくなった顔が、今度は青くなった。
「佐野さんって、しかも議員さん......捜索活動の資金を出してくれた人だよ」
「あなた、どうしましょう......黙っていたことがバレているとしたら大変よ」
「明日、謝りに行こう......千早の方からも佐野さんに__」
「......わかった!」
____後日
一家総出で謝りに行った。しかし、事情が事情なため、そして、子供同士で仲の良いこともあり、尚且つ、捜索活動を中断させたのは国で「国に責任がある」と言う事で、賠償金は捜索活動で失った額の内の半分に引き下げられた。
そもそも、きっかけは「私」であることから、「自身の身体を売る事」や「メイドとして働く事」を提案したが「娘から怒られる」と言う理由で即却下され、「もし男に戻れた場合は婿入りする」という事を受け入れ、賠償額はさらに半減した。