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可憐な乙女の恋心

 6話で、やっとストーリーが進んだと思いきや、ここで他者視点にシフトです。

 普段、主人公(ヒロイン)を自分と思い込んで考案しているため、主人公視点であれば容易にストーリーを書けるのですが、他者視点となると難しく、書くのに苦労しました。

 一応、最低限必要な伏線の盛り込み自体はできましたが、満足のいくものとはなっていないので、今後、徐々に改善していくつもりです。

 私立「王佐加中学校」に通う、最も可憐な少女とは、私、「佐野 いずみ」の事ですわ。そんな私は、告白される事はあっても、自ら恋に落ちる事は無いと思っていたのですわ。なぜですって?私に釣り合う人なんて居るわけがないからですわ。そんな私が、まさか、ある男子に対して恋に落ちる事になるとは夢にも思わなかったのですわ。

 これは、私「佐野 いずみ」の恋話ですわ。

 結論から言うと、私は、「赤坂 千早」という男子に対して恋したのですわ。

 彼の容姿は、とても綺麗とは言えない、家柄も良い方ではない。惚れる要素は彼には一つも無い。「迷子の御姫様を助ける」という、よくある「王子様シーン」があったのなら、まだ良いですわ。それさえなかったのですわ。

 私は話を引き延ばすのは大嫌いなので、さっさと私が彼に恋した理由を話しますわ。

 彼がグラウンドでトランペットを吹いていた事が全てのきっかけですわ。正しくは、それを私が目撃した事ですわね。

 私立「王佐加中学校」は、吹奏楽の強豪校ではありませんわ。

 どこの学校の吹奏楽でも、基本的に男子の比率は低いのは知っているわね?強豪校であれば、多少は男子の比率は上がりますわ。しかし、王佐加中学校はそうではないので、ほとんど女子なのですわ。そんな中に、平気で居られる事にまず、興味を抱いた事のですわ。

 吹いている姿?そんなので私の心が動くことはありませんわ。


 「赤坂 千早!ちょっとお時間よろしいですわね?」

 「えぇ......う、うん」

 赤坂は不機嫌そうな顔をしていたが、彼女は気にせず質問をした。

 「赤坂は変人?」 

 「変人......まぁいいや。で、いきなり何でそんな事を?」

 「赤坂が、女子しかいない吹奏楽に入って平気な顔をしているから、どうして平気なのか気になったのですわ!」

 『なんだそんな事か』という顔をして、彼は答えた。

 「俺はトランペットが好きなんだ。確かに周りは女子しかいないから、陰口とかいっぱい言われて傷つくこともあるけど。それ以上にトランペットが好きなんだ!」

 

 彼の熱いトランペットへの情熱を見て、私は初めて、何かに夢中になる人の眩しさを知ったと同時に、彼に興味が湧いたのですわ。その日以降、クラスで仲の良い友達5~6人連れて、たまに彼の練習を見に行っていたものですわ。

 仲の良い友達はよく「あんなキモイ男のどこが良いか分からない」とよく言っていたのだけど、逆ですわ。

 彼は、他の男子共と比べれば確かに、身体も貧弱で、運動も苦手。勉強の方は数学や理化、音楽はトップだけど、他は全然ダメ。総合的に見て、彼は視界にすら入らないような男なのは間違いないですわ。だけど、お年頃の男子が、周りが女子だらけで、いわゆるハーレム?な状態にあっても、邪な気持ちを抱かず、大好きなトランペットだけを追い続ける彼は、他の男子共と違って特殊なのですわ。なので、私は、彼を毎日、彼にばれない様にこっそりと観察する事にしたのですわ。

 彼の練習を毎日聴いていることもあり、徐々に彼の吹く音楽が理解できるようになっていきましたわ。そのおかげで少し、彼の事がわかった気がしたのですわ。そうしたら、不思議な事に、次第に、私の彼への気持ちが"興味"から"恋"へと変わって行きましたわ。

 いつしか、私は彼からの告白を待っていたのですわ! しかし、彼から告白してくる事は無いばかりか、どんどん距離を遠ざけられていく一方だったので、ある計画を立てたのですわ。

 夏休みに、私の家にプロのトランペット奏者と彼を招待し、特別レッスンをお願いするという企みですわ。

 なぜ私は、彼と一緒にトランペットを吹かないのかですって?それは、私は音楽についてはからっきし興味が無く、彼の吹く演奏が好きなだけですわ。なので、最初は見ているだけのつもりでしたが、『人は変わるもの』とは良く言ったものですわ。

 私も彼と一緒に吹いてみたくなったので、父にお願いしてトランペットを用意してもらったのですわ。そうして、私も一緒にレッスンを受ける予定でしたわ。そう、予定でしたわ。

 6月上旬に計画が白紙になる事件が起きたのですわ。何が起きたのかですって?私の彼が急に失踪し、私は深く絶望したのですわ。

 (私が彼に告白さえしていれば......)

 私が彼に何か行動を起こしてさえいれば、こうはなっていなかったかもしれないと後悔をしてもしきれないほど後悔したのですわ。

 もちろん、父にお願いして大阪中大規模な捜索活動を行ってもらいましたわ。私も捜索に関わりたかったのですが、父と母、そして彼の御両親から「自分の事を優先するように」と言われ、私自身の反省から始める事にしたのですわ。

 まず、彼との距離を縮められなかったのは、この「ですわ」を含めた傲慢な態度がいけなかったのですわ。なので、今後はみんなと合わせる様にしますわ。

 変わってないですって?確かに「ですわ」が多いですわ......。これからは、「ですわ」は控えるようにします。これで良いですわね?


 捜索活動が始まってから、5か月が経ったある日、急に活動が打ち切られる事になりましたわ。資金の大半は私の父が出したものなのに。

 父に理由を問い詰めた所、国からの関与を受けたらしいですわ。父もこの国が関与してきた事について、不満に思っていたのですわ。


 『税金はほとんど使っていないのに......すまない、いずみ。お前の思い人を見つけ出してやることができなくて......。』

 

 (赤坂 千早......あなたは一体どこに行ってしまったの?)

 そうして、可憐な少女である私の初恋は、一旦、前代未聞の形で終わりを告げたのであった。


 捜索が打ち切られてからもクラスの空気は鉛の様に重たかった印象でしたわ。しかし、ある日転入生が来る事が告げられてから空気が一気に変わり、クラスでは転入生の話で持ち切りだった。

 

 「ねぇ、いずみさん!転入生ってどんな人だと思う?」

 私の周りでもずっとこんな調子なので、私は参ってしまった。

 (大切な仲間が一人居なくなっちゃった事はもう、どうでも良いのです?)

 私は、周りの友達含めて、クラスメイト全員に対して腹を立てていたのですわ。しかし、私自身も気にはしていたので、父の権力を武器にして、職員室で転入生の情報を入手したのですわ。

 その転入生は、彼の従妹で、ずっと病院に入院していたから、ほとんど元の中学校には顔を出していない。そのため、退院したからと言って、いきなり顔を見せて上手くやっていける自信が無いから「王佐加中学校」に転入してくるという話ですわ。

 (何か彼の情報を持っている可能性があるかも?)

 私も、転入生がやってくる事を楽しみになったんですわ。


 12月も半ばに差し掛かろうとしていた頃、一人の転入生がやってきた。

 転入生は、白くて長い髪をした、美人さんでしたわ。あまりの美人さに、学校中の生徒を集めても浮いてしまう程ですわ。そんな彼女が、中庭の自転車置き場で、挙動不審な動きをしていたので遠目で見ても、転入生だという事は丸わかりだったのですわ。

 (彼の親戚というのなら、是非とも仲良くしたいものですわ)

 色々聴きたいこともあるが、とりあえず道に迷っていて困っている様に見えたので、話掛けに行くことにしたのですわ。


 「そこの貴方!」

 (あれ、反応がないわね......)

 5メートル先から呼びかけたところ、まったく気づかなかった。

「そこの貴方!」

 彼女に近づきながら、もう一度呼びかけてみたが、それでも気付かなかった。

 「そこの貴方って言ってるでしょ!」

 彼女のすぐ傍で声を掛けて、ようやく反応した。

 「は、はい!」

 「やっと反応したわね!」

 「す、すいません。わ、わたし......」

 「貴方、見ない顔ね......もしかして転入生?」

 「『なんでわかったの?』って顔してるわね。えとね、私はこの学校に居る女子の事は大抵把握しているの」

 「そ、そうなんですか?」

 (あれ、初対面ですわよね......?)

 「『そうなんですか』って、反応が薄すぎやしない? もっとあるでしょ。あなた本当に転入生? どこかで会ったような感じがするのだけど」

 「......」

 (沈黙は肯定という事ですわ......)

 「まぁいいわ、とりあえず職員室はこっちよ!」

 とりあえず、彼女を職員室に案内して教室に戻った。

 (あの娘、絶対、何か隠しているわね......私の目はごまかせないわ!)


 その後、クラスルームで担任が彼女を連れてきた。

 「彼女が転入生の『赤坂 美咲』さんだ! 美咲さん、自己紹介お願いできるかな?」

 「赤坂 美咲、です。 何も分からない事ばかり、だと思うので、宜しくお願いいたします!」

 (あの子、美咲って言うのね......根掘り葉掘り聞きたいけど、まずは仲良くなることが先決ね)

 いきなり、問い詰めることもできるけど私も成長したのですわ!

 「また会いましたね! 美咲さん」

 「これからよろしくね!」

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