久々に学校へ行ったよ!Part1
読者の皆様方、大変お待たせいたしました。ようやくストーリーが進みます。
既に、頭の中には構想ができているので、ストーリー自体は書こうと思えば書けるのですが、本作は「男子が女子になったら......」という完全妄想を書き起こしたものなので、ストーリーの優先順位は低いです。なので、これからも、ストーリーが進まない事も多くあると思いますが、ご容赦ください。
それから、先日誤字報告を頂き、有難く修正させて頂きました。その事をこの場を借りて御礼申し上げます。
総理大臣の力を借り、私は正式に女子となった。その代わり、国の研究所で、研究の協力を求められた。しかし、最悪の場合「『日本国籍を認めない』と言われ、人権を剥奪された後、解剖されて体の隅から隅まで研究に利用される」と想像していただけに、一応、研究対象とはなったものの、この結果は全然許容できる範囲内だ。しかも、国が費用の全て肩代わりしてくれる上に、毎月謝礼金が振り込まれる。実に美味しい話でもあるのだ。
その後、中学校の転入手続きを終え、新しい制服に身を包み、久々の中学校に登校した。
男子の頃は学ランを着ていたが、今はセーラー服を着ている。家を出て、電車に乗っている時は不思議な気分だったが、学校が見えてくると、そんな事はどうでも良くなり、懐かしさからの感動で一杯になった。
(懐かしいなぁ......)
校門、校舎、グラウンド......全てが懐かしくて堪らなかった。というのも、女子化してから、もう半年近く学校に行っていないのだ。感動のあまりに目から雫が垂れた。
(いけない、いけない! 今の私は、もう、"千早"じゃないんだ!)
そう、久々の学校に感動しているが、先生も、そこに通う生徒達も私の事を知っている人は誰一人も居ない。もし、泣いている所を誰かに見られたら怪しまれてしまうので、ほどほどにしている必要がある。
(身を引き締めなきゃ!)
両手で頬を叩き、気合を入れて校門をくぐった。
私はまず校舎に入らず、校舎に囲まれた中庭へと出た。「迷子に見せかける作戦」である。作戦では、中庭には自転車置き場もあるため、自転車通学をしている在校生に職員室に案内してもらうつもりだ。
一応、女子化する前の私はここの在校生なので、職員室の場所くらい知っている。しかし、転入生がいきなり職員室に迷わず直行したら怪しまれる可能性がある。なので、あえて迷子を装っている。なぜ中庭なのかって?理由は単純だ。女子化する前の私と仲が良かった男子友達が自転車通学をしているからだ。
(あいつは優しいから、助けてくれるに違いない......!)
いつも登校してくるだろう時間に敢えて合わせていたのだが、予想通りにはいかなかった。挙動不審な動きをしている私を見つけて興味本位かどうかは分からないが、ある女子生徒に声を掛けられたのである。
(げっ......)
彼女は以前の私のクラスでカースト1位の女王「佐野 いずみ」だった。
ここで一旦、彼女の説明をするとしよう。
彼女の名前は「佐野 いずみ」、金髪のポニーテール少女だ。目が鋭く、スカートも短くしすぎなくらい上げていて、なおかつ、リボンは常時外していて、生徒指導の先生に頻繁に起こられている。そのため、草食系男子達からは怖がられていた。無論、以前の私にとっても彼女は、近寄りたくない女子ナンバーワンだった。しかし、学業面では非常に優秀で全教科で彼女に勝てる人はこの学校には誰一人としていないのだ。
(素行さえよければ、モテモテだったろうに......)
しかし、それらは第一印象であり、実際の彼女はとても温厚で優しく、私にとっても、これからの中学校生活で心の支えになる人でも超重要人物である。
さて、話を戻そう。
「そこの貴方!」
(あいつはまだ来ないのかな......)
「そこの貴方!」
(あいつ、遅刻か?)
「そこの貴方って言ってるでしょ!!」
「はっ、はいっ!」
「やっと反応したわね!」
「す、すいません。わ、わたし......」
「貴方、見ない顔ね......もしかして転入生?」
(えっ何でわかるの?.......って、そういう風な挙動してるからそりゃバレるか)
「『なんでわかったの?』って顔してるわね。 えとね、私はこの学校に居る女子の事は大抵把握しているの」
「そ、そうなんですか?」
(しまった......脊髄反射的に反応してしまった)
彼女の事は、当然知っている人なら、知っていても当然なので驚きはしない。しかし、今の私と彼女は完全に初対面だ。彼女は飽きれた顔をしていた。初対面の割に反応が薄すぎたのだ。
「『そうなんですか』って、反応が薄すぎやしない? もっとあるでしょ。あなた本当に転入生? どこかで会ったような感じがするのだけど」
「......」
「まぁいいわ、とりあえず職員室はこっちよ!」
当初の予定とは少し違うけど、無事、職員室まで在校生に案内してもらう事に成功した。
「あ、ありがとうございます!」
「礼はいらないわ!当然の事をしただけよ!」
「いえ、でも......」
「あ、そういえば、貴方、たぶんまたすぐに会う事になると思うわ!どうしてもって言うのなら、その時に御礼して貰うわ!」
そう言って、彼女は私を残して去って行った。
それから、私は職員室に入り、案内を受け、担任の先生を待った。
ホームルームが始まる5分前、担任の先生が私を連れ出しに現れた。その瞬間、私は酷く衝撃を受けた。なんと、女子化前の私のクラスの担任だったのだ。つまり、私の入るクラスは女子化前と同じクラスということである。「佐野 いずみ」と一緒のクラスという事だ。
(『またすぐに会う事になる』ってこういう事だったのか! この先どう生きて行けば......彼女とは上手くいける気がしない__実際、女子化前の私は彼女の事が苦手だったし)
そうこう考えているうちに、教室の前についた。
「とりあえず、ホームルームを始めるから待っててね!」
『起立!気を付け!礼!』
クラスの代議員(一般に学級委員という)が号令を掛けて、ホームルームが始まった。
「え~と、皆さん、昨日の夕方のホームルームで話した通り、今日から新しい仲間が一人増えます」
みんなざわざわしている。一応、私にとっては全員顔見知りだけど......彼らは私の事を知らないので当然のことだ。
「紹介する前に、先生から一つだけお話があります」
『ブーブー!』
みんな、転入生を早くみたくてたまらないのかブーイングが発生した。
「みんな、うるさいわよ!」
佐野さんがブーイングを静止しにかかった。クラスの大半は彼女の命令に逆らえない。学級カーストというのはそういうものだ。
(相変わらずだなぁ......)
「佐野さん、ありがとう! さて、転入生についてだが、彼女は急に失踪した"千早君"の従妹だそうだ。 みんなも、彼の事は気になるだろう。だけど、彼女はずっと病院に入院していて、つい先週退院したばかりだそうだ。みんなも彼の情報を知りたいとは思うが、彼女は彼の失踪について驚いてはいるが、詳しくは知らないそうだ。だから、あまり彼の話はしないでやってくれ!」
(え、私失踪したことになってるの!? そんなの訊いてないんだけど!!)
「さて、みんなお待ちかねの転入生を呼ぶぞ! 美咲さん!」
私は、なぜ失踪している事になっているのか疑問に思いつつも教室に入った。
「彼女が転入生の『赤坂 美咲』さんだ! 美咲さん、自己紹介お願いできるかな?」
「はい!」
(......全員私にとって顔見知りなはずなのに、意外と緊張する)
「赤坂 美咲、です。 何も分からない事ばかり、だと思うので、宜しくお願いいたします!」
男子から歓声が上がった。
「はい、自己紹介ありがとうね! えと、美咲さんの席は......」
「私の横よ!」
「おお、そうだった! 佐野さん、美咲さんの事をよろしく頼むよ!」
「また会いましたね! 美咲さん」
彼女は満面の笑みで話しかけてきた。
「私も嬉しいです!」
もちろん、建前である。
「これからよろしくね!」
「こちらこそ、宜しくお願い致します!」
「さて、クラスルームを再開するぞ!」
クラスルームの内容が全然頭に入ってこないくらい、私は自分の運命に嘆いた。
(ほんとうに......これから生きていけば)
そんな感じで、私の中学校生活が再スタートした。