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身体測定と苦難の始まり

 ある日突如、俺は美少女になった。激しく動揺し、そして深く絶望した。だがしかし、不思議な事にそれは、翌日になると平静を取り戻していた。

 (慣れって怖い!)

 例によって、家から一歩も出られない為、とりあえず、今の俺の身体を徹底的に調べていくことにした。



____調査その1「女子って身軽に動けて身体は柔軟なのは本当?」


 クラスメイトの女子を見ていると、とても身軽で柔軟そうだと常々思っていた。

 男子、特に運動をしていない系の人は歩くだけでも体が重く、エネルギーの浪費感が半端なかった。そのため、身軽で柔軟に動ける女子を羨ましく思っていた。

 (もしや......!)

 と言う事で部屋の中で走ったり、ジャンプしたり、身体を曲げてみたりした。その結果、元の身体より、"多少"は、身軽で柔軟になっていたが、思った程の差は無かった。調べてみると、男女の身体つきの差やホルモンが関係しているらしいが、体操選手の様に極端に柔らかくなるわけではない。

(今夜からストレッチを始めよう)



____調査その2「エロゲーみたいにあんな事やこんな事を自分の身体でできるのか?」


 改めて自分の身体を見ると、以前とは全然違っているせいか、やはり違和感を感じる。しかし、それ以上に一度も見たことない身体的特徴があり、好奇心の方が強かった。

 俺は元々、ごく普通の男子中学生なので、一度も異性の身体を見た経験はない。見たことがあるとしたら、ギャルゲー(18禁)のイラストだけだ。勿論、赤ん坊の頃に母親の身体を見ているのは確かだが、そんなの覚えている方がおかしいだろう。なので、ほんのり膨らんでいる胸部、突起物が無く平坦な下半身、何もかもが初めて見るもので、斬新だった。


 男子中学生といえば、一般に、性欲が発現し始める年頃だ。女子化以前の俺も、ギャルゲー(18禁)で、それはそれは、色々多くの事を勉強をしていたものだ。そんなお年頃の男子が、直に異性の身体を見たらどうなるのかは言うまでもないだろう。ところが、不思議な事に、今の身体を見ても、まったく興奮する事はなかった。身体だけでなく、性欲も女子のそれへと変化していたのだ。


 調査だと割り切って思いつく限りの事を試した結果、エロゲーのシーンの再現は可能である。しかし、一切興奮する事はなく、散華して待っていたのは虚無感と疲労だけだった。

 (男だった頃も独りでも虚無感はなかったんだけどなぁ......)

 男女ともに性欲は確かにあるが、まったく違うものである事が判明した。


 男女の性欲の違いは、スポーツ好きで例える事ができる。スポーツ好きの中には「スポーツを観戦するのは退屈だけどプレイするのは好き」という人と「スポーツをプレイするのは苦手だけど、観戦するのは好き」という人の二種類のタイプが居る事は知っているだろうか? それぞれ順に男子、女子に置き換えたものが、性欲の違いだ。ちなみに、よく女子が同性の身体に興味を示すのは、単純にコンプレックスと妄想の材料にするためだと、実際に女子になった事で理解した。



____調査その3「異性を見て興奮するのか?」


 男子は可愛いと思えれば、例えその人物が架空であっても関係なく発情する事ができる。それは、男子には「より多く子孫を残したい」という本能があるからだ。では、女子になった今はどうなったのかのだろうか。結論としては、基本的に異性を見ても興奮する事は無かった。

 実験として、男性YouTuber、男性アイドル、外を歩いている人を見た。不思議な事に、一般的に美形な方の男子であっても、基本的に、何も感じる事はなかった。女子になる前の俺は「女子はイケメンやイケボに弱い」という認識を持っていたので、大変興味深い結果だった。顔が良くても、清潔感があっても特に気にもしないのが現実である。

 (そりゃ、世の中の男性は恋人作るのにどうりで苦労するわけだ......)

 ちなみに、男性アイドルもカッコいいとは思うけど、それ以上でもそれ以下でもなかった。ただ、例外もあった。無人島でサバイバルな活動をしたり、料理や工作技術のある男性アイドルに対しては、心臓が爆音を上げていた。

 ちなみに、アニメや漫画に出てくる「イケメンで優しい王子様」にも弱かった。一瞬で身も心も持っていかれてホロホロになり、思わず散華してしまった。

 (おぅ、これは気を付けないとだな。それにしても疲れた......今回はここまでだな)


 今回の調査でわかった事をまとめると、身体だけでなく心も変化していた。そして、今までの俺はどれだけ本能に苦しめられてきたのかもわかった。

 (これからどんな未来が待っているんだろう!!)

 昨日はひどく動揺し、そして絶望していたのだが、今回の調査のおかげで、様々な事を知り、これから新たにスタートする女子としての人生に期待さえも抱いていた。しかし、それは長くは続かなかった。

 

 「千早?」

 俺は部屋の扉を閉め忘れていたことに気が付いて同様した。

 「服も着ないで何やってるの?」

 「......」

 (え!?今の見られてた!? いつから?)

 「まぁ? 千早もそういうお年頃だもんね? 散らかした後は片づけなさいね......ブフッ!」

 母は必至で笑いを堪えながら、去って行った。母は隠し事が苦手で、特に面白い事は言いふらしたいタイプだ。

 (まずいまずいまずい......!)

 俺は、すぐさま母を追いかけた。

 「お父さんには黙ってて!」

 「えーどうしようかな~?」

 「本当に言わないで!!」

 「もう~しょうがない子ね......わかったから、早く服を着なさい!お腹が冷えるわよ?」

 あまりの羞恥心と焦りから、服はおろか、下着すら着ていない事に気が付いて、ますます羞恥心の海に溺れた。

 しばらくして父が仕事から帰ってきた。勿論、母は「こんな面白い話を黙っていろっていう方が無理だろ」と、父に話してしまった。


 「お父さんも昔、お宝本と言ってな! エッチな本を沢山読んでたから気持ちはわかるぞ!」

 「そんなのじゃ......ないよ」

 (自分の身体に興奮してたわけじゃなくて、色々試してただけなんです!!)

 「まぁまぁ、お前も大きくなったって事よ!見た目はすっかり美少女で可愛くなっちゃったけど、中身は別なんだな!」

 無事に、人生最大の黒歴史が生まれた日となった。


____翌日


 (今日も自宅警備かぁ~...何か面白い事が起きたりしないかなぁ~)

 私が女子になってから1週間が経過した。しかし、病院に行った初日を除いて、まだ一歩も外に出られずにいた。父と母に「外出禁止」を言い付けられているからだ。

『だって、ご近所さんにこの事が知られたら噂が広まって大変な事になるでしょ?』

理由は、ご近所さん対策と俺自身の身の安全を確保する為である。


____ピンポーン!


 『お届けものでーす!どなたかいらっしゃいませんかー?』

 配達員がやってきた。先日、通販でポチった新作のギャルゲーが届いたのだろう。しかし、玄関の扉を開けて受け取るわけにはいかない。というのも、この配達員のお兄さんはご近所さんなのだ。うちの家族構成を良く知っている。母が一緒に居ればそこまで大きな問題とはならないだろうが、今は母は外出中だ。そんな中、見知らぬ美少女が一人で受け取りに現れたら、このお兄さんは困惑するだろう。そして、よからぬ噂が流れかねない。

 「どなたかいらっしゃいませんかー?」

 なので、居留守を決める事にした。

 『ガサッ!』

 お兄さんは不在票をポストに入れて去って行った。

 (ふぅーーーー!)

 とりあえず私はホッとした。しかし、待望の"新作のギャルゲー"がお預けになってしまった。

 (この状況が続くのは大変だ......誰か、早くこの状況をどうにかしてください!!)

 俺はこの状況の不便さに嘆いた。しかし、これから俺の身に降り注ぐ苦難は、これとは比較できない程だと言う事を、当時の私はその事を知る由もなかった。

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