10000人レース ー22
フーッ、と息をはいて理々が呼吸を整えた。
「1万ポイントガチャ、いきます」
手をあわせて祈る。
「幸運様、お願いいたします」
ぽち。
〈おめでとうございます。並列思考レベル1、20万ポイントです〉
〈おめでとうございます。高速思考レベル1、20万ポイントです〉
〈おめでとうございます。ドームホーム冷暖房リフォーム権、10万ポイントです〉
〈おめでとうございます。10パーセント魔力増強オーブ、5万ポイントです〉
〈おめでとうございます。10パーセント魔力増強オーブ、5万ポイントです〉
〈おめでとうございます。10パーセント魔力増強オーブ、5万ポイントです〉
〈おめでとうございます。怪力レベル1、3万ポイントです〉
〈おめでとうございます。風壁魔法レベル1、1万ポイントです〉
〈おめでとうございます。風壁魔法レベル1、1万ポイントです〉
〈おめでとうございます。風壁魔法レベル1、1万ポイントです〉
〈おめでとうございます。洗浄魔法レベル1、1万ポイントです〉
「あっ、洗浄魔法が欲しい」
珍しく理々がおねだりした。
「あのね、家事に使いたいの。掃除や洗濯や食器洗いに便利そうだもの」
「もう、理々ったら」
彩乃が苦笑する。高広も笑った。家事全般が壊滅的な彩乃と高広と祐也、家事全般が趣味とも言える理々。3人が手伝いをしようものならば、かえって理々の負担を倍増させてしまう現状に、理々の望む魔法に反対するはずもなかった。
「よし。理々に洗浄魔法と魔力増強オーブ、彩乃に風壁魔法と魔力増強オーブ、高広に怪力と風壁と魔力増強オーブ、悪いけど僕に並列思考と高速思考と風壁魔法、それでいいかな?」
「オーケー」
「ええ」
「ありがとう。魔法を使ってお掃除ができるなんて絵本の魔法使いのおばさんみたい。憧れていたの」
「えー? とっくに魔法使いじゃん」
「違うの。魔法でお掃除したりお皿を洗ったりすることがしたいの!」
ぷうっ、と頬をふくらませて高広に抗議する理々が可愛い。小さいから子リスのようだ。よしよしと祐也が、天使の羽根のような理々の柔らかな髪を撫でた。
「幼稚園の頃に夢中だった魔女アリスシリーズか?」
「うん。魔女アリスのお世話をする魔法使いのおばさん。いつもニコニコして歌を歌って、お掃除したりお料理をしたりしている優しい魔法使いの人なの」
祐也はうっすらと記憶を辿った。
「とても歌が上手だった魔法使い?」
「うん。綺麗な声の魔法使いのカナリアおばさん。待っててね、祐也はカナリアおばさんが魔法で焼いたクッキーが食べたい、て言っていたでしょう? もっと魔法を覚えて理々が祐也のためにクッキーを焼くからね」
ニコニコと笑う理々が可愛い。祐也がゆっくり細めた目は切ない色を浮かべ、愛しい、と語っているようだ。蕩けるような笑みが表情を彩り、執着という闇を持つ祐也の手が、理々の髪を撫で、耳を撫で、頬を撫でる。もう片手が囲い込むように理々の背中に伸び、抱き寄せようとした時。
「ミーッ!!!」
空気をぶち破る警報器の如くスライムが叫んだ。
ガタガタッ!!
机が激しく四つ脚を鳴らす。
「「ガチャをしようね?」」
彩乃と高広がイイ顔をして口角を上げた。
「邪魔者が増えた……」
うんざりと呟いて、祐也はしぶしぶ理々から手を離した。
ちょっと拗ねてしまった祐也の姿にクスクス声をもらして、理々は深呼吸をすると宣言をした。
「では、花園理々、5万ポイントガチャいきます!」
心をこめて手をあわせる
「幸運様、お願いいたします」
ぽち。
〈おめでとうございます。環境適応レベル1、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。環境適応レベル1、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。環境適応レベル1、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。環境適応レベル1、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の食料品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の食料品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の食料品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の食料品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の日用品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の日用品1人用100年セット、500万ポイントです〉
〈おめでとうございます。地球の衣料品1人用100年セット、500万ポイントです〉
「嘘……、全部500万ポイント……」
「ナニコレ、ナニコレ! 地球の食料とかもらえるの!?」
彩乃と高広が驚愕の声を溢れさせた。
祐也は顔を綻ばせた。
「この100年セットって凄いな。見た目はただの10センチのカプセルなのに、内部は100年間時間停止のままで良好な保存状態を保って、目次がこれかな、ああ、ポップアップウィンドウになっているのか、商品の写真や説明や個数が表示されて見やすいな」
彩乃が興奮に瞳を輝かせる。
「見て見て、衣料品のセット! 1人用100年となっているけど、女性用100年と男性用100年のセットになっているわ。しかもSサイズで100年分Mサイズで100年分とか各サイズ毎での100年分よ。靴もサイズ毎にあるわ。これは1人用だけど実質私たち4人分よりも多いわ。種類も豊富で着物やドレスもアクセサリーも帽子も何でもある、下着まで。嬉しい!」
高広が猛然と訴える。
「食料品セット! 各種食料の他に名店のお持ち帰りシリーズがある、これ! ハンバーガーとかお寿司とかケーキとか色々たくさん! 俺、この専門店の焼きたてアップルパイが食べたい!」
賑やかな声の中、机が元の壁側に戻るのを理々は視線で追っていた。
今までガチャは4人に必要とされるものを当ててくれていた。ならば大量の100年セットは何のために必要なのだろうか? 心が小さくささくれる。漠然とした予感が理々の指先を冷たくした。
夕暮れも終わる頃。夜が近づいてくるヒヤリとした空気が足から伝わり、理々はかすかに震えたのだった。
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