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10000人レース ー11

 祐也は渋い顔をした。

「幸運があるからガチャは魅力的なんだけれども。僕としては、先着500名限りの100ポイントの【頑丈】が皆に欲しいんだよね。たぶん【頑丈】はサービススキルだ、本当はもっと高額のスキルだと思う」

「あれ? 【頑丈】の残数が477になっている」

「そう、つまり23人がすでに今日100ポイント以上稼げる力を持っている、いや、【頑丈】の数字だけだから実際にはもっと多くの人間が強さを手に入れている、と考えられる」


 祐也の言葉に、いつも優しげな高広の垂れた目が鋭く尖る。

「スキルを所有している人間とスキルを所有していない人間の力の差は、たとえるなら大人と子どもだ。スキルを持ったからこそ実感できる。特に魔法は、素手だった人間に拳銃を与えるようなものだよ」

「そう、急激に力を持ち、なおかつ殺すことへのストッパーが精神耐性によって緩くなった人間が量産されつつあるんだ。秩序も法律もないレースという勝敗のある世界で、自制心を保てる人間の方が弱者となる可能性もあるんだ」

 厳しい顔をした祐也は、目元を押さえ首を振った。

「心配は尽きないが、あれこれ悩むよりも今は【頑丈】のことだ。身体は適応化されたが、あの女神のことだ。おそらく赤ちゃんレベルの最低の適応だと思うんだ。だから【頑丈】を保険にしたい」


「わかった。だったら彩乃と理々にまず【頑丈】をとって、残りでガチャをしようぜ?」

 ニカッ、と高広は笑った。

「堅実な道も大事だけど、せっかく俺たちには幸運様という大チャンスがあるんだから有効利用しないと。他の奴らが強くなってきているんならば、俺たちは彩乃と理々を守るためにもっと強くならないとダメだ。俺は幸運様に賭けたい。俺たちの【頑丈】は、この後に兎を20羽狩りに行けばいいじゃん」


 なっ? と祐也の肩を叩いて明るく笑う高広に祐也も苦笑をもらした。


「そうだな。理々と彩乃はどう思う?」

 祐也は理々と彩乃に尋ねる。

「理々は、幸運様を信じたい」

「私も理々と同意見よ」


 幸運はスキルだが、4人の間では幸運様と呼ばれていた。それだけの信頼と実績をたった1日で築いていた。


 こうして1回100ポイント、1000ポイントならば11連の1日1回限定ガチャを理々はひくことになったのだった。ポイントは各個人のものだが、各自が了承すればパーティーポイントとなり共有できるのだ。


 理々が小さな手をあわせる。140センチの理々は手も小さい。そして祈る姿は可愛い。

「幸運様、よろしくお願いいたします」

「ミー」

 黒いスライムも理々の頭の上で鳴く。


 祐也と高広と彩乃が、息を呑んで見守った。


 理々が、画面の11連ガチャのボタンをポチッと押す。


〈おめでとうございます。ドームホームの水回りリフォーム権、10万ポイントです〉

〈おめでとうございます。虫除けセット、10万ポイントです〉

〈おめでとうございます。電撃魔法レベル1、5万ポイントです〉

〈おめでとうございます。全病気耐性レベル1、3万ポイントです〉

〈おめでとうございます。全病気耐性レベル1、3万ポイントです〉

〈おめでとうございます。立体機動レベル1、3万ポイントです〉

〈おめでとうございます。水弾魔法レベル1、1万ポイントです〉

〈おめでとうございます。布団セット、段ボール1箱分です〉

〈おめでとうございます。チョコレート、段ボール1箱分です〉

〈おめでとうございます。カップ麺、段ボール1箱分です〉

〈おめでとうございます。インスタントカレー、段ボール1箱分です〉


 ドン! ドン! ドン! ドン! 居間に2メートル四方の段ボールが現れた。


 4人は驚愕のあまり声も出ない。

 アドレナリンとかドーパミンとかエンドルフィンとかの脳内麻薬が大量に分泌されているかのように興奮状態にあるのだが、驚き過ぎて声が出ないのである。


 祐也が肺の中の空気を全部吐き出して、ひゅう、と空気を音をたてて吸った。


「ミー!」

 勝利の雄叫びのように誇らしく鳴いて黒いスライムが、理々の頭の上でピョンピョン跳ね飛ぶ。


 高広と彩乃と理々が、怒声のような歓喜の声を一斉に上げた。


「リフォーム! トイレとお風呂と台所が日本の最新式にリフォームできるって! お願い、彩乃。お風呂の部屋を作りたいから魔石をちょうだい」

「もちろん、いいわよ! お風呂よお風呂!」

 理々と彩乃がいそいそと家の末端に魔石を、彩乃の魔法袋からポイポイ入れる。


「俺、立体機動が欲しいっ! これ、空歩もついているじゃん!!」

 高広がお願いポーズをしている。


「落ちつけ、皆。先に段ボールを片付けないと、居間が狭い。とりあえず僕の魔法袋に段ボールは入れておくから」

 祐也の声に、理々が自分の身長よりも大きな段ボールに抱きつく。

「チョコレート、1袋下さい」

「ミー」

「あっ、私も」

「俺も!」


 くくっ、と笑って祐也は両腕を広げた。鳥の翼のように。

「オーケー。じゃあ、相談がてら何か食べようか?」


読んで下さりありがとうございました。

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