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死神様の御加護を受けてます。  作者: さみくえら(仮)
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8 新しい家族

昨夜、投稿するつもりが寝落ちしてました…


実在する地名や施設が出てくることがありますが、フィクションです。パラレルワールドと思ってください^_^

 呉服屋を出発して程なくすると、立派な神社が見えてきた。



ー戸隠神社ー



「あ!私、ここ知ってる。」

「善光寺も近いっちゃ近いしな。こっちの方に旅に来たら、寄る人も多いぞ。」

「へー! そうなんだ。確か、まだお兄様が生きてらっしゃる時に、家族で御詣りに来たことがあるって、母上が言ってたわ。」

「じゃあまだよちよち歩いていた頃か。流石に覚えてないだろう。」

「そうね、二つくらいだったようだから、覚えてないわ。」



 史織はそこで初めて自分のいる場所を理解した。



「私、彷徨い歩いて、とんでもなく遠い所まで来ちゃってたのね!」

「ははは。気付いてなかったのか。そうだよ、俺が史織を助けたのは、もう信濃の国だった。」

「夢中だったとはいえ、よくも雪の中をこんな所まで来たものだわ……。」



 呆然としている史織の背中を軽く押し、想はこっち、と促した。史織は想の後をとてとてと追い掛ける。



「さあ。ここがわが家だよ。」



 想が指差した先を追いかけると、目を見開いた。



「本当は神様の家は神社の中にあるんだけど、俺は、ほら仕事柄、ちょっと気持ち的に憚られるから、神社の横に居を構えさせて貰ってるんだ。」

「へー、そっか。神社ってそうだよね。」

「まあ神社の中に住めるのは、かなり高位の神様で、ほとんどの神様は人間と深く関わり合いたいから、市井で人間式の生活を楽しんでおられるよ。」

「じゃあ私がたまに違和感を感じるのは……!」

「うん、もしかしたら、何かの神様が人間に化けてらしたかもしれないね。」

「そうだったんだ。」



 史織は目玉がこぼれ落ちそうな程、目をくりくりさせた。想は話を続けながら、史織を屋敷の中に案内する。



「まあ、俺は優秀な神様だからな! 仲間内でも稼ぎがいいから、いい所に住処を当てがって貰えたんだ。」

「同じ神様でも稼ぎが違うの?」

「もちろん、怠け者の神様もいるからな。偉い方はちゃんとその辺、見てくれてるよ。」

「神様の世界もなかなか厳しいのね。」

「ははは。俺はその方が頑張り甲斐があって好きだけどね。」



 門を潜って敷石の通りに進み、玄関を入ると白髪で恰幅の良い老婆が立っていた。



「おかえりなさいませ。想様。」

「ただいま、お砂さん。」



 想は史織の肩に手を置き、お砂と呼ばれた老婆に紹介した。



「この子は史織。落ち着くまでわが家で預かるからね。」

「はいはい。かしこまりましたよ。」



 お砂は優しい笑顔で史織を迎え入れてくれた。



「よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いしますねぇ。」

「お砂さん。史織は随分疲れているから、お風呂の準備してあげてくれる?」

「はいはい、そのように。」



 お砂はそういうと、すすすっと廊下の向こうへ下がっていた。



「じゃあお風呂の準備ができるまで、こちらでお茶でも飲んでお待ちになっては?」


 いつの間に現れたのか、想達の背後に三十路位の大柄の男が立っていた。大柄だが所作は丁寧で、目は切れ長で鼻筋も通っていて整った顔立ちだ。



「おー、こたさん! 久しぶり! 長く家を空けてしまって悪かったね。」

「想様の放浪癖は今に始まった事じゃないじゃないですか。まあ今回はちょっと長かったですがね。」

「こたさんには頭が上がらないな!」



 想は豪快に笑いながら、こたという男の背中をバシバシと叩き、こたの方もそれに応えて想の肩に手を回し、ガハハと笑った。高身長と美形という共通点以外は正反対に見える2人だが馬が合うのは、初対面の史織でも感じ取れた。



「こたさん。この子、ちょっと訳ありでね。落ち着くまでの間、ここで俺の妹として過ごしてもらうつもりなんだ。」

「ほほう。……これはなんと……。」

「……分かるかい? 今夜にでもあそこに連れて行くつもりだよ。」

「はい、それがいいでしょう。」



 そしてこたは、親しみやすい笑顔を作り、史織の目線に合わせて蹲み込んだ。



「私はこの屋敷の番頭兼想様の使いっ走りをしております、鋼太郎と申します。皆、こたと呼びますので、史織様もこたとお呼びください。」



 鋼太郎は軽く会釈をして、もう一度史織にニカッと笑って見せた。史織は年甲斐もなく恐縮して、目の前でブンブンと両手を振った。



「史織様なんてやめて下さい。居候の身ですし、こた様は私よりずっとら年上ではありませんか!」

「ははは! 私こそ、想様のお連れ様にこた様なんて呼ばれたら背中がムズムズしますよ。」

「そうだよ、史織。史織は一応、俺の妹としてこの屋敷にやってきたんだよ。俺の妹なのに、番頭に呼び捨てにされてたら、周りが訝しむからさ。こちらに合わせてくれると嬉しいな。」



 想が史織の頭をクシャクシャと撫でた。史織は、想と鋼太郎を交互に見比べて、それもそうかと納得した。その様子に大人は満足げに頷いた。



「ま、それはそうと、暖めた部屋で温かいものでも飲んでくださいよ。」



 そういって鋼太郎は、先ほどお砂が消えていったのとは逆方向へ2人を誘った。


登場人物が増えてきて、賑やかになってきました。

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