泥棒とキャンバス
私が今、どこにいるかというと、泥棒の部屋だった。
泥棒の部屋は、薄暗かった。
夜。
泥棒は、家に帰ると、コートを脱いで、冷蔵庫から白いワインとつまみを取り出した。
そして、私の前にある高級そうな黒革の椅子座って、私を眺めた。
そして、うっとりと笑う。
いいから早くTVをつけろ。
私からTVは見えないが音は聞こえる。
どうやら、泥棒は映画を見ていて、男たちが話しているシーンだ。
泥棒は、つまみを食べながら、夢中で見ていた。
映画がクライマックスに近づいたとき、ドアがノックされた。
男はイラつきながら、ドアを開けると、そこにいたのは、泥棒の手下だった。
手下はチラリと私を見る。
映画では、主人公が敵に向かって、大量の銃をぶっ放していた。
手下は、泥棒の心臓に向かって、一発銃を放った。
泥棒は吹っ飛んで、TVにぶつかる。
真っ赤な血が少し私についた。
手下は服に隠した黄緑の布を取り出して、私を包んだ。
外は、とても寒かった。
手下の雪を踏む音が聞こえる。
盗んで、盗まれた。
今度は、どこに行くのだろうか。
手下の家だろうか。
それとも、売られるのだろうか。
揺られているが、眠ることにした。