1/8
女とキャンバス
目が覚めると、私は、兄弟に挟まれていた。
ここは、画材屋でたくさんの画材がある。
私は白いキャンバスで、サイズは40号だ。
「おはよう」
兄弟たちに挨拶するが、返事はない。
意志はあるが、意思疎通ができない。
暇だ。
ここから出ていきたいが、売られなければ、出ていけない。
そんなある日。
一人の女が、私の前にたった。
女は、赤いコートと黒いブーツに緑のバック、金色の髪と白い肌。
そして、マリンブルーの瞳をしていた。
女は、私達キャンバスを指で左から右へなぞる。
何度も往復した指は私の所で止まった。
彼女は、私を引き抜き、レジに持っていく。
梱包された私は、何も見えなくなる。
だが、店から出たことはわかった。
「さようなら」
画材たちに挨拶をしたが、誰からも返事はなかった。