第1話
「っ、あぶねえ」
僕の目の前を先端が鋭く尖っている、黒いものが通って行く。
それの持ち主、真っ黒な存在は床や壁、天井が土っぽいものでできている部屋の台座に居座っている。
そして僕の視界の中央には赤い字で『ERROR』、右上には上側に5割しかない残っていない緑色のバー、下側には9割残っている青色のバーが表示されている。
ちなみに緑色のバー=HPは身体への傷を肩代わりしてくれるもので、青色のバー=MPはスキルを発動するために必要なものだ。
部屋の主の上に【hEg7rl1ri0/r/yk】と文字化けして表示されている。その文字とともに部屋の主、モンスターが時に大きく、時に小さく揺れている。さらにそのモンスターから威圧感のようなものを感じられる。
そこの部屋では、荒々しい呼吸によって生じる音のみ聞こえる。
僕は呼吸を整え、どうすればいいのか考える。
ーー 考えろ。考えるんだ。どうすれば勝てる。どうしたら生き延びれる。ーー
そう考えているうちに、姿形のはっきりしないモンスターが台座からおり、だんだんと近づいてくる。笑みを浮かべながら。そういう風に見えた。
なぜこうなってしまったのか。
*
うっすらと数式が見え、雑に消されたであろう黒板。その黒板の右端には、9月15日(水) 白木 信司 と縦にかいてある。
机と椅子が整列するようにたくさん並んでいる。それに座っているのは、3、4割くらいだろうか。
3-Bの教室では、友達同士で話している人、一人でスマホをいじっている人、勉強している人、まだ昼飯を食べている人など色々な人がいる。
僕はその中の友達同士で話している人に当てはまる。
「信司はバイトやらないのか?」
「俺がそんな器用なことできると思ってんのか」
背が高く、ガタイがいい信司と呼ばれた男、白木信司はそう言った。
「去年の文化祭だって、細かい作業も簡単にできてただろ」
「なあ、祐人。バイトと文化祭の違いってなんだと思う?」
信司はそう僕に問うてくる。僕は少し考えたあとこう答えた。
「んー、楽しさとか?」
「まあそれもあるかもしれないけど、俺はお金が貰えるか否かだと思うんだよ。給料が出るとなると、その分頑張んないとって思って上手くできないんだよな」
「え、信司ってバイトしたことあるの!?」
「したことあって悪いのかよ。前に叔母さんの店でバイトしたんだけど・・・・・・。まあそういう事だ」
「そこでドジ踏んでトラウマになったと。メモメモっと」
「いやメモする必要ないだろ」
さすが信司。ツッコミ完璧。
「そういえば信司、今日日直だったよな。配布物確認しに行かなくていいのか?」
「ああ、忘れてた。教えてくれてサンキューな」
信司はそう言うと、座っていた席を立ち、教室の前の扉から出ていく。
今までとおそらくほとんど変わっていない日常。それが唐突に終わってしまうとは誰も思っていなかっただろう。