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ずっと一緒だよ。~突然過保護のイケメン幽霊に憑かれたら・・・!?  作者: 優奎日伽
6. 心残りは何でしょう?
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心残りは何でしょう? ⑤

 

 ***



 あれ以来、幽さんの記憶を探しに昔住んでいた町へ行っている。


 沙和の心情としては複雑なものがあるけれど、幽さんに繋がる手掛かりがそこにしかないとなれば、否が応でも行かざる得ない。記憶を取り戻すために協力すると約束したし、沙和自身が幽さんのために動きたいと言うのもまた事実だから。


 ただ、それから次に繋がる手掛かりが見つからないので、手詰まりになったまま町を徘徊している。そのうち怪しい人認定されるのではないかと、ちょっと冷や冷やしているのは沙和だけだ。


(疚しいことしてないんだけど……小心者だな、あたし)


 沙和は駅近くのコーヒーショップにいた。

 嵌め殺しのガラスに沿ったカウンターから外をぼんやり眺めて、アイスカフェラテをストローで啜り、ミートパイを一齧りする。

 写真の一枚でもあれば、“この人知りませんか?” と聞いて歩けるのに、それすらない。

 否。撮るには撮った。けど……。


(あれじゃ~なぁ)


 思い切り心霊写真だった。

 沙和の目には全身はっきり視えるのに、写真にしたら不完全。

 何回撮ってみても幽さんがちゃんと写らない。

 こんな時ばかり幽霊アピールしなくてもと言ったら、幽霊だしと返された。


(確かに幽霊なんだけどね! 存在感が幽霊じゃないと思うのよ…!?)


 時々、幽さんが生きている人と錯覚しそうになる。

 彼が生霊だったら良いのにと、何度も思った。そのたびに幽さんはちょっと悲しい顔をする。どうしてなのか、彼は訊いても答えてはくれないけど。


 もういっその事、心霊写真でも良いから見せて歩くかと、ヤケクソになりそうだ。だけどそれを人に見せた時の反応や対応が面倒臭そうで、まだ誰にも見せてはいない。


(合成写真って言って誤魔化そうか? こんな写真しかなくてとか言って)


 しかし真面に顔が写ってないから、意味ない。

 沙和は溜息を吐き、ふと背後を振り返って幽さんの姿を探す。彼は店の中を歩き回り、記憶の端に掛かる人がいないか客の顔を一人一人覗いていた。

 が、それらしい人を見つけることが出来なかったらしい。消沈した様子で戻って来る所だった。

 さして大きな町でもないのに、宛てもなく探すとなったら上手く行かないものだと思う。


 ミートパイの最後の一欠片を口に放り込んだ沙和の隣に腰掛け、疲れ切った風体で幽さんが項垂れる。実際には疲れる躰を持ち合わせていないけど、気持ちの問題だろう。


『俺って、今はこんなだけど、実は引き篭もりだったのかな……? 従業員すらピンと来ないって』


 どんよりとした、沙和まで暗くなりそうな声色。

 それよりも問題と思われるのは、沙和の体感温度が急激に下がったことだ。伴って心臓がキューッとする。


『幽さんっ。寒い寒いッ。心臓が縮むからぁ。お願い浮上して!?』


 必死の形相で幽さんを見れば、その一つ隣の椅子に座り、ビクッとした女性と目が合った。その女性からしたら、いきなりガンつけられたようなものだ。無理もない。

 沙和は慌てて愛想笑いを浮かべ、女性に会釈した。相手が会釈を返してくるのを見、沙和はガラス張りの向こうに視線を遣る。


『……ごめん沙和』


 幽さんが申し訳なさそうに呟いた。

 と同時に体感温度が平常に戻り、ほっと息を吐く。

 周囲に変に思われないように、幽さんから顔を背けたままアイスカフェラテを啜り、


『いいよ。幽さんの気持ち分かるから』

『ええ子やのお』


 お茶らけた幽さんが頭に抱き着き頬擦りをする。沙和がにやけた顔で『もおっ』と呟いたのと、幽さんがいきなり正面のガラスを突き抜けて行ったのは、ほぼ一緒だった。


 唖然とした。で直ぐにニヤケていた自分が恥ずかしくなる。

 懐いていたのに突然の放置とは。

 幽さんが万人に見える人なら、この上なく居た堪れなくなったかも知れないが、幸いかな誰も気付かない。


 沙和は気を取り直して、幽さんが消えた方に目を向けた。

 ずずずっと音を立ててコーヒーを飲み干し、徐に席を立つとサクサクとトレーを片して店を出る。そして幽さんが消えた方へと足を踏み出した。


 最初は急ぎ足で、だんだん早くなり、走り出していた。

 誰か、気になる人がいたのかも知れない。

 沙和が早く追いつかなかったら、限界距離を超えてしまったら―――そう思ったら、気が急いた。

 走るのは久し振りだ。

 早々に息が上がる。

 それでも足が止まることを拒否するように、前へ前へと踏み出していた。



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