第6話 「魔王、なんとか勇者に施す」
その日俺に天啓が舞い降りた。
あれは玉座に座ってぼーっとしてた時だったか。
一匹のチョウチョが城の中に迷い込み、ひらひら飛んでだわけだ。
それを蜘蛛が狙ってたんだが、中々巣に近寄らない。
残念だったな蜘蛛よと俺は思っていたところ、蜘蛛は突然尻から糸を吐き出し、そうして飛んでるチョウチョを絡めとった。
能力が低くても使えるものを最大限に利用して獲物を仕留める。
その姿に、俺は感銘を覚えるとともに、閃きました。
勇者に強力な武器防具を与えればいいんじゃないか!
『ビービー。
勇者に施しを与えることは禁止されています。この前も言いましたが?』
待てよシス子。
続きがあるからちょっと聞け。
ってか、さらっと辛辣になってませんか?
『――』
……まぁいい。
良いか?
ただ与えるのは施しになるが、自力で勇者が見つけるのならば問題ないだろう?
それもダメだとお前は言いそうだが、こう考えてみてはどうだ?
宝箱がたくさんあります。
中には強力な武器や防具やお宝が入っていますが、罠もあります。
これは武器防具を餌にして、勇者を仕留めるためのトラップなのです。
さぁ!
反論してみよ!
『――チッ』
おい?
今舌打ちしたよな?
お前ちょっと魔王舐めすぎじゃね?
しかしまともな反論がないということは、魔王として問題のない行為とみてもよさそうであるな。
よし、さっそく取り掛かろう。
(デカッ鼻よ)
「ジョルジュよ!」
「ここに」
隠れて待機していたのか、柱の影からスッと現れる緑色のじじい。
ちょっとしたり顔なのが苛立たしいから、間違えたフリしてダークサンダーを食らわせておこう。
「ま、魔王様、お戯れを……」
さすがに痛かったらしい。
これに懲りたら生意気な真似はやめることだ。
すっきりしたところで本題に入るか。
(宝物庫にある武器や防具を、勇者の近くの洞窟に置いてこい)
「宝物庫に強力な武器防具があったであろう?
それを餌とし、勇者を洞窟に誘き寄せるのだ」
うむ。
実に狙い通りの翻訳だ。
にも関わらずデカッ鼻が渋ってる。
「畏れながら魔王様。
そのようなことをせずとも、一振り300イャ程度の剣でも、勇者は誘き寄せられるかと」
一振り300イャとは随分と安く見積もったな。
魔王城の清掃アルバイトが大体一時間で200イャだから、一時間半で買えちゃう値段だぞ?
そんなんじゃ竹すらまともに切れないだろ。
もっとも、あの勇者はまともにモンスターを倒せないもんだからちょいちょい拾い食いとかしてるし、そんなものでも喉から手が出るほどに欲しがるだろうが。
しかし目的は勇者の強化。
強力な武器じゃなければ意味がないんだよ。
(ダメだ。確実に誘き寄せるために良い武器が必要なの)
「たわけめ。
そのような不確実な手段を講じるから、勇者を取り逃すのであろう!」
「ハハッ! 恐れ入りましてございます!」
よしよし上手くいった。
万が一のことを考えて罠も俺が自作しておこう。
あんまり強力な罠では、勇者が死んでしまうかもしれんしな。
あれらの武器を装備すれば、いかに貧弱な勇者といえども古今無双の強さになるだろう。
実に楽しみである! ふははははは!
――数日後。
「魔王様! 首尾よく勇者を誘い込むことに成功いたしました!」
お、ついに洞窟に向かったか。
わざわざ宝の地図を送りつけた甲斐があるというものだ。
ではさっそく、遠見の水晶でその勇姿を拝見させてもらうとするか。
地図を見ながら勇者が進んでおるな。
よいぞ、そのまま真っ直ぐだ。
お、一つ目の宝箱を開けたな!
それは高級薬草だ。
さすがに出入り口付近は安物よ。
奥に進んで得てこそ、達成感も得られると――お、おい?
勇者よなぜ洞窟を出るのだ?
……うっわ、めっちゃ嬉しそうにスキップしてる。
そんなものより良い物いっぱいあるから、もっと奥に行こう? ね?
あ、ダメだって。帰るな、帰るなよっ!!
――もう嫌だあの勇者。




