幸先のいい蹂躙
「「ぁぁぁぁああああああああああああ!!」」
叫び声を上げながら落ちる吸血鬼二人の片足を洋也は掴み、揃える。
不可視のベールを破り、現れた施設の屋上の床にそのままの状態で落ちた。
「ぐびゃ!」
「ぐべぇ!」
「どおおおおおっとアウチッ!」
並んだ二人が落ちてくる紅一郎のクッションとなる。
洋也はそのまま足から落ちて足を砕くが、再生する。
御行と言えば、気づけばそこに降りていた。
「御行さん、いつの間に」
「普通に降りただけだ」
刀を腰に携えているだけでどれだけの人が高度からの落下に無事着地できるのか、と洋也は理解に苦しむ。
「いててて」
「すまん紅一郎、もう少し弾力あるクッションがあればよかったんだが」
「誰がクッションよ!」
「こ、このこちらが頭を垂れていれば好き勝手を!」
紅一郎を突っぱねて洋也に二人の怒りが向かう。
「君らが幼い体であることを恨め」
「あ゛?」
「身体的特徴を盾にするな!」
傍から見た紅一郎は一瞬の団結を見たのだった。
「では、案内しろ、コンダクター」
冷や水をぶっかけるように御行がコンダクターの襟元を掴み施設へ侵入する。
扉には鍵がかかっていたが当然のように刀で斬って開く。
その後に洋也と紅一郎は続き、サクリファイスは翼を展開し、外部の陽動を始めた。
行く手を阻む施設の職員を蹴散らし、進んでいく御行。
彼には敵なしだった。
ヘルメットや銃器で武装した相手にも躊躇なく突っ込み、弾を逸らして刀の峰で脳天を叩く。
ヘルメットで防御されていようと、かち割られるようではただじゃすまないだろう。
殺す気もないが生かす必要性も感じない、そんな戦い方だ。
柱や段差などの遮蔽物に隠れながら紅一郎が後について行く。
「やっぱ俺来るべきじゃなかったかも」
「今更だな、だけどもう戻れない、危なくなったら助けてやるから己が身を大事しろ」
そんな紅一郎の横を堂々と歩く洋也。
「でもお前、痛くねえのかよ」
「痛いさ、だから生きてる」
その発言に紅一郎は劣等感を抱く。
力や素質だけではない、返答も振舞いも躊躇のないそのスタイルに。
痛みを感じているのに逃げ出さないその精神力に。
前方を御行が蹂躙している隙に後方から増援が来る。
「怖いなら隠れていろ」
「・・・へ、馬鹿言うなよ、同じ死線を超えてきただろうが」
紅一郎は腰のホルスターから掌より一回り大きめの十字架を取り出す。
手袋のジョイント部分に取り付け、ギミックを動かすと小盾ができる。
覚悟を決めた紅一郎より先に洋也は動いていた。
今視界に洋也を捉えている者は誰もいない。
「おい、そこに居た奴は」
「ぐあ!」
窓ガラスの中から蹴りが飛んでくると武装した一人をノックダウンさせる。
「吸血鬼か?さっさと聖術を使え!」
武装した連中は武器を変え、青白い幻想的な剣を手に洋也を追う。
洋也は窓ガラスへ吸い込まれると、今度は金属部分から刃を出現させた。
他の一人の心臓を穿つ。
「があぁ!」
必死に聖術の剣を振るってもその刃が洋也に効くことはない。
人間である洋也にそんなものが効くわけがないのだ。
「た、退散だ!未知の敵との遭遇!」
増援は数名、攻撃し続けるものを残し去っていく。
だが、今の洋也の敵ではなかった。




