突撃開始
「さて、現地にはどう行くんだ?」
すぐさま出て行こうとする洋也のコートを掴みながら御行は言う。
「あり?ここから突っ込んでいくんじゃないんすか?」
「それで上手くいくならそれでいいが?貴様だけな」
「へい、変なこと言ってすんませんでした」
紅一郎は諫められ、素直に話を聞く。
「全く、なぜ外部の俺が話を回さないといけないのか」
「私たちは分かっていたわよ、ズメウ?」
「はい、孤児院での支部長の説明は覚えています」
------------------------------------------------------
数時間前
「君らは今からピースメイカーの肩書を外してもらう」
孤児院に演台を設置し、祝詞は開口一番そんなことを言う。
「なぜ?」
「今からする殴り込みの目的は違法施設を世間にさらすことだ、しかし確信がないい以上大胆な行動は出来ない」
「確信が、ない?」
コンダクターは一瞬怒気の片鱗を見せる。
「私はこの目で見たんだ、それが嘘とでもいうのか」
「嘘をついている可能性は否定できない、最初から信用してもらえるなどと思わないことだな」
闘牛をいなすかのように祝詞は厳かな言葉で返す。
コンダクターは怒りを抑え、静粛な姿勢になる。
「律儀だな」
「貴様が言っていることは正しいからな、それでも私の言葉でこうして動いてもらっているのだから、せいぜい利用させてもらうとしよう」
素直なコンダクターに少し肩透かしを喰らう祝詞。
そのまま説明を続ける。
「基本的な準備はキミらに一任する、ただし、御行と御式は連れて行ってもらおう」
演台の傍らにその二人がジッと座っている。
「あとナレッジに森の直前まで送らせよう、その後の施設への移動は任せる」
「あんまり作戦って感じしないですね」
「たるい仕事だ、引き受けなくってよかった」
作戦に参加しない杏花と流人が好き勝手に言う。
「つまり、私たちはいつも通りのスタイルでいいのね」
そしてサクリファイスはいつもの私服を着て座っている。
そのスタイルは、祝詞が願っても変えられないものであるとその場にいる誰もが思ったであろう。
------------------------------------------------------
時は戻って現在、助手席に居た御式も加えて幌ウィングの荷台に集まっていた。
「それで、何か案はあるのか?」
御行はサクリファイスにふる。
「甘く見ないことね、私はそこの先走る男とか、何も考えていない男とは違うのよ」
「前置きはどうでもいいから早く言え」
「命令しないでくれるかしら」
「面倒臭い吸血鬼だな、おいそこの従者」
従者、と言うのはズメウを指しているのだろう。
はい、と返事をする。
「ご主人の意図を汲み取れ」
「私も分かりませんので悪しからず」
「・・・もう勝手にやれ」
話の舵をとろうとした御行が手を上げる。
「サクリファイス、どういった方法を考えている?」
流石にまずいと思った洋也が替わって言う。
洋也に言われたサクリファイスは素直にその内を明かす。
「ズメウに任せるわ」
「・・・どゆこと?」
紅一郎が真っ先に疑問の声を上げた。
------------------------------------------------------
森の中、以前のように仮面の男が二人、徘徊していた。
体格も身長もほぼ同じ、即ち湊と勇馬だ。
変わらない装備、しかしふたりともその背には物騒な得物があった。
銀色に光る刃先、それらが波打つように並んでおり、対吸血鬼用、それも一撃で始末するための兵器のようであった。
二人は歩いていると人影を見る。
ボーラ―ハットのシルエットは変わらず狙撃銃を手にしていた。
「さてお前ら、狩りの時間だ」
「吸血鬼がどこからか侵入、ですか?」
「吸血鬼だけじゃねえぜ、ご同族も混じってやがる」
「流石、ハルワンク隊長の嗅覚」
自分の鼻以外の何を指標にしたわけでもない彼の言葉は二人が信頼するほどに説得力のあるものであった。
しかしハルワンクは嗅覚で追っていたものを直に目にすると、その目を見開いて嬉々とした表情で狙撃銃を構えた。
「大物だお前ら、落ちた奴はテメェらで食え」
「「了解」」
木々が避けた地、上方では視界一面夜空が広がるその場所からは、飛行する奇異なものが見えた。
異形、それも実物ではめったにお目にかかれない、その形状。
ドラゴン。
「竜狩りだぁ!」
その叫びと同時に狙撃銃の弾丸が放たれた。




