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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
第4幕 共に旋律を奏でる
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深き森の中で

ある少女が走っていた。


いや、それは少女の皮を被った鬼だ。


常人ではありえない速度で駆け抜けていることから人でないことは明らかだ。


この時代にロココ調の服で森林を全力疾走する少女など奇抜の極みだ、そんなものが一般人でたまるものではない。


深き森を彷徨い、走り、人気のない方へと進行する。


シルエットは脇腹を抑えながらふらついている。


何者かから逃げている様子だ。


しかし、逃げ切るには金色の髪が目立ち過ぎている。


「はぁ、はぁ、うっ!」


ふくらはぎの皮表面が空気の衝撃を受けた。


かすりはせず、銃弾が通過したようだ。


追いつけなくとも追手には飛び道具がある。


それも一人でなく、多人数。


回り込まれれば人外と言えども逃げ切るには難がある。


突破するには戦うしかない。


そう覚悟を決めた瞬間、放たれた銃弾の軌道を読み、発砲者の下へと走り込んでいく。


人の目で認識は出来ても体がついていけないほどの速さ、発砲者はそれを直に味わう。


黒い迷彩柄の服に斜線の入った逆十字の紋章、アナイアレイターに所属していることが分かった。


動揺した隙を突かれ、手に持つアサルトライフルを少女の小さな手に触れられた。


プラスチック素材に亀裂が生じ、やがて無数の破片となって銃口とトリガーを分断される。


「ちっ、くそぉ!」


追手の男はすぐさまアサルトライフルから手を放し、グローブに付けたいくつもの指輪の一つを手の平に押し付け、青い十字の剣を形成する。


浄化の蒼き光、触れれば吸血鬼の肉体では灰になるだろう。


ただし、触れた箇所のみ。


首を狙うか、心臓を狙うかで即死させなければこの男は負け。


無論、身体能力が格段にちがう吸血鬼とでは白兵戦など勝負になるはずがない。


故に男はその剣で切り裂くことはなく、右腕を少女に触れられる。


直後、眼球の飛び出そうな形相で男の体は崩れ落ち、立ち上がることはなく地面に伏した。


「金目の物を寄越せ、命まではとらないでおこう」

「あががが!!」


男が言葉を発しようにもうまく紡げない。


何故か、それは地面に散らかった白い歯を見れば明らかだろう。


だらだらと男の口から血液が垂れる。


少女は痛みで悶絶している男の持ち物を探る。


取り出せたのは黒い革の財布、無線機、後は吸血鬼の退治道具の数々。


財布と無線機だけをもってその場から離れた。


「おおごごごごぉ!!ごぉ!!」


取り残された男は必死に喉から音を捻りだす。


仲間に伝えるために。

とんずらした少女にとってはあまり意味のないものだと、そう思っていた。


財布と無線機を持って上機嫌な少女に、忽然と火球が襲い掛かった。


「なに!?」


反射神経は正常に働き、その火球をスムーズに避けることができた。


しかし、火球が放たれた方向に一人、何者かの姿があった。


――おかしい、人ならば私が感知できないはずがない。


そんな疑問はすぐ晴れた。


ゆっくりと歩いてくるその人物が月の光を浴び、その姿をさらけだす。


全身しろづくめのカソックと、今まで自分を襲ってきた奴らとは一線を画してユニークな服装。


そして未知なる技か、その手に持つは炎。


「御会、か」


すぐさまその存在の正体を察した。


だからこそ、その足はその男から遠退くよう走り出していた。


万全でない状態で御会に挑むのは不利がある。


あんな人間の体質でありながら吸血鬼の能力を持った連中にこんなざまで勝てるはずがない。


「逃げ惑うも良し、しかし天は貴様を見ているぞ!」


男が炎を地面に燃え広げ、その炎に指向性を与えているようで、少女を追尾する。


捕まれば死の鬼ごっこを、深き森の中で開始した

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