ケリュネイアの鹿
二階天井に括りつけられたワイヤーが張った先には杏花の機関銃。
そしてそれに仕込まれた槍は道化師の頭を貫き、壁に打ち付ける。
壁面には血と脳漿でできた真っ赤な花が咲く。
「あっ・・うえっ、あえええ」
道化師が破れた喉元から必死に声を上げる。
「観念しろ不審人物、吸血鬼だろうが不死人だろうが聞こえているだろう?」
「あがが、はがっ!」
流人が近寄り、銃口を目に突き付ける。
杏花は、槍で道化師を突き刺したまま、全身を震わせている。
反動で痺れているのだろう。
骨も折れているはず、それほどの高さだ。
「・・なが、いくん」
苦しみながら杏花が呼ぶ。
「ああ、今冷却弾を」
「ちが」
杏花が何かを言いかけて流人が弾倉を変えようとしたところで、浮遊感をを感じた。
「なっ!?」
後方にいる鹿が、角を使って流人を突き上げたのだ。
壁にぶつかるわけではなく、鹿の後方へと投げ出される。
「がはっ!!」
放物線を描き、背中を床にたたきつけられた。
機関銃が流人の手元から離れ、床を滑る。
鹿は追い打ちをかけるために180度向きを変え、突進する。
「ってえくそ!!」
すぐさま起き上がるが、突進を避けることはかなわず、その角を両手で受け止めた。
その突進力は人のそれを軽く凌駕し、抑えむことなどできるはずもない。
流人が鹿に圧されて共にショッピングモールの外へ。
「ぬおおおおおおお」
鹿の角を掴んだまま地から足を離したまま勢いのままに流されていると、地下駐車場への下り坂を囲う突起構造物にぶつかる。
「ぐっ!」
流人は上半身を倒して重心を移動し落下、落ち際に右腕をロープ状に変化させる。
ロープで角を拘束し緩やかに着地する。
そしてそのまま水平に引っ張り、鹿を落下させようとするが、力及ばず拮抗状態。
「さっさと落ちやがれぇ!」
「・・・」
唸り声さえも上げない鹿は、まるで皮を被っただけのロボットだ。
静止している状態は不気味で、無機質な巨像。
そんな鹿の目玉が突然、爆発した。
「うおっ!」
鹿が下り坂から離れて倒れたせいで、拮抗していた流人のロープが流人を引き上げる。
ロープにつかまったまま、足を地から離してぶら下がる。
「な、なんでこうなる」
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「着弾」
「流石ですね、御会の方」
「そうこう言ってはいられませんよ、ほら、あそこをもう一度」
ショッピングモールの建物近くのビルの屋上から狙うズメウと御式。
ライフルで狙っているのはズメウだが、御式は何やら指で射撃対象を指し示している。
再び発砲、鹿はライフルの弾を2発受けて静止。
次の瞬間には白く灰となって崩れていった。
「対象の静止を確認」
「後は、杏花さんとb班の方たちですね、待ちましょう」
二人はその姿勢を維持し、待機する。




