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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
第3幕 鏡の国から
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騎兵ピエロ

エントランスホールでは轟音が響き、鹿が駆けまわり、それに乗る道化師が曲刀を振るう。


杏花は銃口の下に槍のついた機関銃でその刃を受け流し、地面を蹴って跳びまわりながら避ける。


お互い軽快な動きで空間を忙しく動き回り、一度向き合う。


「なかなかやるな嬢ちゃん」

「どもー!でも私にかまけていられる状況かな?」


気の抜けた受け答えを終えると杏花は道化師の背後へ視線を送る。


その先には、流人が機関銃を構えて走り込んでくる。


「うぉおおおおおおおおおおおお!静ぃ!!」


叫びながら撃ちつつ、右腕の包帯をほどく。


露になったのは、炭化したような黒い腕。


道化師へ向かって跳躍し、それを突き出す。


「ふっ」


道化師は杏花の方へ向いたまま、背後から襲い来る流人を曲刀で弾く。


かと思いきや流人の右腕は分散し、ロープのように曲刀に絡みついた。


流人は、そこから鹿の臀部を土ふまずの部位で蹴って離れる。


「うおお!何だ貴様!?」


拘束されたロープで道化師が鹿の上から降ろされる。


意地でも曲刀を放したくないようだ。


「ねえさん!!」

「よし、いっちょいくよー!」


杏花は機関銃の槍を伸ばし、銃弾を放ちつつ、突撃する。


そんなところを鹿が遮る。


その身に浴びる銃弾をものともしない様子で杏花の前に立ちはだかった。


「・・・」

「やっぱりこいつもやらなきゃってごお!」


無言で繰り出される鹿の前足の蹴りは、杏花の顎を砕いた。


入り口付近にまで吹き飛ばされる。


「ねえさん!」


流人は杏花の身を案ずるが、鹿から落ちた道化師が今に立ち上がるところだった。


「いてて、なんというフェイントか」


立ち上がり、流人の右腕が絡みついたままのその曲刀を振るって、それを引き剥がそうとする。


「なんだこれは、ほどけん」

「動くな、痛いおもいをしたくなければ投降しろ」


流人が片手で構える機関銃の銃口は道化師を捉える。


道化師は流人にその面を向け、ふっと馬鹿にしたように笑い声が漏れた。


「片手で撃てるのか?」

「撃てないことはない」


機関銃を恐れる様子はなく静かに立ち上がり、流人の方へ歩き出す。


機関銃から銃弾が放たれる。


が、道化師には当たらない。


不規則な動きで射線から逃れつつも、流人に接近し、流人の顔面に殴りかかった。


が、機関銃によって阻まれる。


「一発も当たらないではないか、雑魚めが!」


隙を生ぜず膝蹴りが流人の鳩尾に打ち込まれる。


「ごおほっ!」


流人が崩れ落ちる。


道化師が離れ、床に横たわる。


「一撃で落ちるとは情けない、才能ある若者よ」

「ば、馬鹿にするな、お前はまだ俺の本気を見ていない」


尾を引く痛みに耐えながらも立ち上がろうとする流人。


地べたに手を突くつくとその手を道化師に踏みつけられる。


「ぐ、てめぇ!」

「まあ、貴様にも死んでもらうがな」


いざ切り裂こうと流人の腕が絡みついた曲刀を振りかぶるが、


「チィ、面倒なことしてくれるな」


当然、絡みついた刃先とそりが使えないので刃元を使うことになる。


その思案をしていた一瞬の隙に、流人が動いた。

「ふん!」

「ふんが!?」


唐突な頭突きを道化師へかます。


その怯んだすきに曲刀を奪おうとするが道化師はなかなか離さない。


迷わず機関銃に取り付けられた折り畳みの刃を展開し、道化師の曲刀を持つ腕を

斬った。


「が、ってええええ」


そのまま刃を沈め、肉を断ち骨を削る。


最後まで押し込み、見事、腕部分と分離させた。


「があああ!!」


奪った曲刀と手部分を絡みつかせたまま、道化師から離れる。


「くぅ、なかなかやるではないか」


流人は実力を認めたような発言に若干の達成感を感じたが、次の瞬間には道化師の後ろの光景に目が行った。


杏花が鹿に立ち向かい、しかしあっけなく前足で上へ打ち上げられる光景だ。


「ねえさーん!!」


思わず叫ぶが、杏花は空中で上昇しつつも、親指を立ててサムズアップしているのを見て何か案があるのを理解した。


軽い身のこなしで壁のでっぱり部分に乗り、機関銃を構えて平手を空に振る。


合図、だと分かると流人は道化師の曲刀と手を捨て、右腕を元の形に戻す。


道化師に銃口を向け、撃ち始めた。


「うがあうあうあうあうあうあう!!」


痛みでうまく動けないのか、先ほどの機敏な避け方は出来ないようだ。


銃弾が道化師の全身に打ち込まれ、震えるように後退していく。


弾が尽きたところでタックルをかます。


「ぐおぅ、貴様ぁ!」


今にも反撃しそうな道化師、しかし、そんなことはできなかった。


『finalize』


雷を纏った槍が、円状のエントランスホールを横切り、その穂先は、道化師を貫いた。


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