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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
第3幕 鏡の国から
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突入

 ショッピングモールは1階から入ってすぐに真ん中のエスカレーターが目に入る。


 それを避けて進んだところには1階の店舗と進行ルートを分けられている。 


 そんなエントランスにて、エスカレーター前には巨大な鹿が置物のように鎮座している。


 その背には、道化の仮面を被り曲刀を腰に下げた男が跨り、単騎でただ何かを待ち構えている様子だ。


 無論、相手はピースメイカーかアナイアレイターだろう。


 彼らがご丁寧に出入り口から入ってくると考えるのは安直だが、建物を破壊してまで侵入経路を確保するの

 は大袈裟というもの。


 正面の上部ガラスが割れているが、あんなところから入ってくるわけでもない。


 それに、そこまでの下準備できるほどの時間はなかった。


 即席で新部隊を立ち上げた洋也たちはもってのほか、アドバンテージは待ち構える吸血鬼たちの方にある。


 だが、自動ドアの向こうに二つの人影が見えた。


 外側と風除室のガラス製のドアを砕き、走り抜けてきた。


「行くよ!永井君!」

「いえッさぁ!」


 勢いのいい声の後にやる気のない声が続く。

 声の主は重火器を持った完全防備の杏花と流人だった。


------------------------------------------------------


 30分前


「さて、私が隊長だから、今から作戦会議始めるよー!」

 

ジープを降りた新部隊一行はいきなりの就任宣言と同時に話し合いを始めた。


 ショッピングモールは彼らのいる所から道路をはさんだところにある。


「なんか、現地でブリーフィングはかなりリスキーじゃない?」

「無駄口を叩かない、そういうからリスキーなんだよ」

「質問いいですか?なぜ現地でブリーフィングを?」


 洋也の質問に杏花がもう一人の女性隊員を見る。


 正確には今回限定隊員だが。


 御式はトランク一体型パソコンを広げ、何かに熱中してみている。


「彼女がアウィスで偵察してくれているんだよ、今回はあの建物で奴らが何をしているか、分からないからね」

「アウィスというのは、燕型監視カメラのことでしたっけ?」

「そう、あの燕ちゃん」


 即ち、御式の偵察が終わるまで動くことは出来ないと言うことだ。


 そう理解するとズメウを除いた全員がこぞって御式のパソコンを除く。


「邪魔」

「うご!」


 サクリファイスがうっとおしそうに顎で紅一郎の頭頂部を叩き、姿勢を低くさせる。


 内部は普通のショッピングモールの入り口の光景が広がっている。


 ただ、エントランスに立つ長足の鹿とその背に跨るピエロのような男をただの置物と思えばだが。


「不気味だね、あれ」

「深海で深海魚にでもあったかのような奥行きを感じるな」

「深海行ったことないくせに何言ってんだよ、・・・行ったことないよな?」

「妹が深海に沈んだのならあり得るな、まあ結局ないが」


 雑談を交えてパソコンを見ていると、エントランスを抜けてしばらく進んだところでスノーノイズが画面を覆い尽くした。


「あ、切れた」

「正面に居たやつは木偶の坊と見える、敵はまだいるな」

「よし、さっきのを参考に作戦を立てるよ」


 杏花がタブレットを取り出した。


 同時にズメウと御式以外の全員がピースメイカ仕様のスマートフォンを取り出す。


「さてと、役割を決めよう、正面突破を私と洋也君で、永井君と紅一郎君で回り込んで内部事情を探ろう」


 言ったことをまとめてタブレットに書き連ねる。


「それは逆の方がいいんじゃないですか?相手が分かっているのと得体のしれない奴を相手にするのとは全然違いますよ」


 杏花の振り分けに紅一郎が根拠とともに異議を唱える。


「確かに、でもあのでっかいのも実力は分からないわけだし」

「その振り分けは不死者で判断しているのなら、俺は正面に回りたい、頑丈さはねーさんたちに後れを取らないさ」


 流人が希望を言う。


「うーん、そうだね、なら新人を裏に回そう、不安で仕方ないけど」

「俺が行くとろにはサクリファイスを考慮してくれませんか?」

「おおっと、サクちゃんのことをすっかり忘れていた」

「大丈夫か?この隊長」


 紅一郎に心配されながら、杏花は視線をサクリファイスへ向ける。


「本気で考えるのなら私を裏手へ回した方がいいわ、死にたいのなら別だけど」

「指示されるの嫌じゃないの?」

「洋也に指示をしなさい、洋也について行くから」

「よし、それじゃあ、ズメウちんは?」


 ズメウはただ無言でサクリファイスの横に立つ。


「好き勝手に使ってくれればいいわ、ただし死なせたらただじゃおかないわよ」

「話の途中、すみませんが、どなたか、狙撃銃を使いませんか?」


 御式が話に割って入った。


「私に関しては内部に入るつもりはないので外から支援をしたいと思うんですが、スナイプ経験のある方は」

「ズメウ、あなたそれやりなさい」

「了解しました」


 即決、誰も狙撃銃など扱ったことがないためか、ズメウは外部からの支援となった。


「うーん、洋也君、紅一郎君、最悪死を覚悟しといてよ」

「もちろんです」

「もとよりそのつもりです」


 杏花としては、裏手に回る人数を増やしたかったのか、憂虞している。


「心配ありませんよ、ここから見える所ならいくらでも支援できます」

「・・・ちなみに支援って?」

「狙撃銃による精密射撃が約束されます、99%弾は当たると言っていいです」


 御式はそう言い張る。


 御会は神のごとくの業を使うと言う。


 精密性の向上、それが、彼女の能力なのだろう。


「そんな力で、なぜ自分は狙撃銃を使わないんだ?」


 流人が率直な質問を投げつける。


「筋肉痛になります」

「・・・なんだそれ」


 拍子抜けしたのは流人だけではなく、杏花と紅一郎も苦笑いを見せていた。


「さてと、あとは戦って臨機応変に行くよ!」

「了解です」

「分かりました」

「おk」

「流人、返事はしっかりしよ?」


 取り合えずの作戦会議は杏花が流人にアイアンクローをかまして終えた。


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