活動前1、3
校内で何を言われようと所詮噂、行動のしがらみにはならない。
洋也と綾乃は放課後になると即座に下校し、清宮宅へ向かっていた。
田園の道を歩いていく。
「そういえば一つ聞きたいんだが、清宮敦には会ったか?」
「一度会いましたが、ストリガの強襲に遭い、行方は存じておりません」
「そうか、そんなことがあったのか」
ストリガ狩りにかまけていた洋也としては、幼馴染の様子など気にすることはなかった。
しかしこうして異変が起こったのであれば行動する気になるというものだ。
興味の加速と共に歩くペースも早くなる。
住宅街に入り、清宮宅の前に来た。
ただ一つ、違和感があった。
表札には黒川と、清宮とは別の表記があった。
「ズメウ、綾乃の記憶は持ち合わせているか?」
「はい」
「俺の記憶ではこの家が清宮宅であった気がするのだが」
「はい、しかし、一か月前にここに別宅へ移動することになりました」
「それを先に言え、とんだ蛇足だ」
「既にご存じなのかと」
ズメウの融通の利かなさに軽く呆れる。
「それで、その別宅はどこだ?」
「ここから70kmほど先の山奥にあります」
「そうか」
洋也の足では日が落ちる前に辿りつけないことが分かると、踵を返す。
ピースメイカーの活動のため、教会へ戻ることにした。
------------------------------------------------------
コンクリートに囲まれた、明かりもついていない闇の空間にサクリファイスは佇む。
その手には二丁のハンドガンが握られている。
四方に機械音が轟くと、その方へ撃つ。
ほぼ同時、吸血鬼の機敏な動きを存分に発揮する。
映画上映前になる電子音のような音が鳴る。
電灯が付く。
四方に一つずつ、不揃いに設置された円状の的すべてに銃痕が残る。
それも真ん中に。
射撃訓練のようだ。
「及第点だな」
壁の一部がスライドし、ガラス越しにクレイグが現れる。
マイクに向かって射撃訓練の評価を下していた。
「何を偉そうに採点しているの?あなたにこれができるとでも?」
「出来るわけがないだろう、貴様ら吸血鬼どもと同じ基準にしてもらっては困る」
「吼えるだけね、弱者」
「結構、力など平和な世界では無意味なものだ」
「そうやって吼えるだけの奴が平和とは程遠い惨状を引き起こすのよ」
「何を根拠に、記憶喪失の間抜けがまるで見てきたかのように語るではないか」
「実体験よ」
サクリファイスは、その手に持つ拳銃をクレイグへ向ける。
容赦なく、発砲する。
ガラスは防弾のようで、撃ち抜くことはなかった、が、クレイグへの敵意を示した。
クレイグの心持ちが不穏になる。
「戦争」
「馬鹿なことを、許容してやってるのはこちらだと言うことを忘れたか?」
「煽るだけならいくらでもできるのよ」
そう言って銃を下ろす。
何を言っているか分からなかったクレイグだが、サクリファイスなりの冗談だと理解し、少しの安堵感を得た。
「そもそもあなたのような厳格な男がなぜピースメイカーに所属しているのか不思議でならないわ」
「勘違いするな、私は貴様ら吸血鬼を利用価値ある存在としか思っていない」
ちょっとした立ち話の最中、コンクリートを叩く音が響く。
クレイグの立つ部屋に取り付けられた扉が勢いよく開け放たれた。
「サクリファイス、孤児院の手伝いに行ってやれ」
「なぜ私がそんなことしてやらなければ」
「命令だ、黙って従いたまえ」
「・・・」
反論するサクリファイスの言葉を遮って強調する。
サクリファイスの反骨精神は相当なものであったが、己の立場を考え、無言で従うことにした。
祝詞の前を素通りしてドアよこに手をかける。
「そう言えば、報告書のことだが」
去り際、小言のようにサクリファイスに見もせず言う。
「暇があれば病院へ行ってみるといい」
「・・・それってどういう」
質問を言い終える前に腕が地面に引き寄せられ、サクリファイスはその場から消えた。




