人の対立
御切に飛ばされ、ぶつかった先には知り合いが居たという混沌とした状況に身を置く紅一郎。
唖然とするが頭の中を真っ白なままにしておくわけにはいかなかった。
「立羽、なんでお前こんなところに」
「やはりか、お前が俺の前に立ちはだかるのは」
立羽は警棒を持ち直し、テーザーガンを構える。
「おい、よせよ」
「邪魔をするな!」
放たれたワイヤーは紅一郎の足元に飛んでいく。
少し跳躍しただけで避けられる。
「今のは警告だ、さっさとここから去れ」
「説明もなしに脅迫とか納得できねぇな、ちょっとでもいいから教えろよ」
「黙秘する!」
湊は接近し、警棒を振るう。
紅一郎は避ける一方だ。
今紅一郎が身に着けているのは白地に金色の装飾の手袋に、その手にはめられている指輪。
そして十字架の首飾り。
これらはれっきとした意味のある武器だ。
吸血鬼やストリガに対しては大きな効果を発揮する。
しかし、相手は人間、力は微塵もない。
ならばと拳を作る。
「いつからそんな悪人みてぇなことしてるかわかんねぇけど」
連続で繰り出される警棒の一振りを見切り、できた隙に一足踏み込み、湊の腹に一発拳を入れる。
「目を覚まさせてやるぜ!」
「ぐ、ふ」
湊はその衝撃を利用して、後退する。
どこで鍛えたのか、腹筋の強さは紅一郎のパンチに勝っているようだった。
「は!そんなちゃっちい棒には当たらんわ」
「何を余裕そうに」
噛みつく犬のごとく気を纏う湊の後ろに、紅一郎は激しく揺れる木々を見た。
「あ?ありゃなんだ?」
「そんな古典的な戦法にはまるか!」
騙そうと勘繰る湊がそんな手に乗らないぞ、と警棒を振りかぶり、近づく。
「うわ、まてまて、マジであれ!」
縦に振るわれた警棒を横に避け、追尾するように警棒が薙ぎ払われる直前に、頭突きするように湊の腹部に飛び込んでいく。
湊ほどの腹筋を持つ者にこんな攻撃は通用しないだろう。
そんなのは紅一郎は百も承知、むしろその場から退いたことに意味がある。
「うぐぅ!」
湊がうめき声を上げる。
その時、さっきまで二人のいた場所は竜巻に蹂躙された。
木の葉や土を巻き上げて大木を切り倒していく。
これに巻き込まれないよう行動した紅一郎だが、彼を敵とみなしていた湊は構わず警棒を頭に振るった。
「ふがぁ!?」
ビクンと全身が跳ね、動かなくなる。
湊の振るう警棒は電流の流れるスタンバトンだったようだ。
「・・・何やってんだこいつ?」
熱の入っていた湊には竜巻の存在を認識できなかったようだ。




