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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
第2幕 死肉の暴風
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善悪の判断

 洋也は黒い服をコートの下に、サクリファイスは羽織る形で着込んだ直後。


 斜面を登り、御切の乱暴な運転に荷台の中は転がされる。


 揺れるサクリファイスを洋也は抱き止める。


「危ないな、大丈夫か?」

「この程度どうってことないわ、それより放してくれるかしら、子ども扱いされてるみたいで気分が悪い」


 平地になると揺れは落ち着く。


 洋也の膝から立ち上がり、木箱から刃物をとる。


「銀製じゃないのは運がいい」

「ピースメイカーだからな、誤って殺す可能性を考慮して二種類に分けてあるんだろう」


 刃先はサクリファイスの手首へ向く。


「何をする気だ?」

「私は支配吸血鬼よ、その力を存分に使えるよう下準備をしているのよ」


 少量の血液が飛び散り、その傷口から多量の血液が抜き出る。


 すべてが集約し剣の形を形成する。


「支配吸血鬼、君は血液を支配する者か」

「そう、多くの血を先導する者、サクリファイスとはわたしのこちょ、

 ・・・ことよ」


 トラックのタイヤが道の小石を轢き、車内は上下に揺れ動く。


 それで舌を噛んだのか、名乗りを言い直す。


「格好がつかないな、可愛いぞ」

「それは馬鹿にしてるのかしら?」


 間抜けなやり取りをしていると、トラック外から声が聞こえた。


 金切り声に変わったのを最後に徐々に消えていく。


「阿呆な一般市民が迷い込んだのでしょうけど」


 サクリファイスは聞こえた方向の幌を見上げる。


 襲われた人間の安否などどうでもよい、といった様子だ。


「哀れね、山菜狩りにでもきたのか、救いようのない阿呆だわ、そうだとは思わない?」


 洋也へ向き直ると、そこに洋也の姿はなかった。


「あら?」

「ふにゃ?」


 サクリファイスの間の抜けた声とジルの寝起きの鳴き声が響いた。


------------------------------------------------------


 悲鳴の聞こえた方へ駆ける。


 携えた刀の重みを前へ、一分一秒でも早くたどり着くために。


 無我夢中で走っていると、白い何かが見えた。


 よろめきながら、何かから逃れるように洋也と反対方向に走ってくる。


 よく見れば人、病衣を纏った患者のようだ。


「た、助けてくださぁい!!」


 逃げる患者の先に回り、腕を掴む。


「何があった!?」

「狼が襲ってくる!」


 ウェアウルフ、獣化した人間が森を彷徨い人を襲っている。


 患者の言葉からそう推測する。


「南、俺の来た方向へ向かえ!」


 助言を言い放ち、患者の逃走経路を反対に辿る。


 次に来たのはまたもや病衣を着た患者のようだ。


 この辺に病院があるようには思えない、と違和感を覚える。


 後ろにはウェアウルフが追いかけてきている。


 あの患者を助けるという選択肢は一瞬浮かんだ。


 しかし洋也の目には患者に黒い靄がかかっているのを視認し、その選択肢は捨てる。


 患者をすれ違いざまに刀で突く。


「かはぁ!?」


 唾液、次いで胃液と流れるが気にせず、ウェアウルフに向かって吹き飛ばす。


 ウェアウルフはその患者を鋭利な爪で突き刺して拘束、頭から喰らいつく。


「な、なんだよぉおま」


 言い終わる前に脳天をかみ砕かれる。


 脳漿が飛び散る、次の瞬間にはそこへ血が混ざる。


 患者ごと、ウェアウルフは両断される。


 洋也の刃のない摸造刀によって。


 ウェアウルフの首を切断し、死んだことを確定させると、即座にその場を去る。


 他の患者がいないか、捜しながら駆けていると、二つの人影が見えた。


 仮面をかぶっているようで素顔は見えない。


 洋也は片方に靄がかかっているのを視認する。


「止まれ、そこの男」


 仮面の男が言うが、止まるはずもなく、靄のかかった男へ斬りかかる。


 だが洋也の刀は剣によって受け止められる。


「聞く耳持たず、ですね、敵対行為とみなすよ」

「了解」


 手の空いている片方が警棒を洋也へ振るう。


 斬りかかった姿勢のまま背を大きく反らせて回避する。


 離れるために斬りかかった相手へ両足でキックし、宙で回転し、飛びのく。


 警棒を片手にもつ男は、すかさずもう片方にテーザーガンを持ち、洋也へ放つ。


 足元を狙って放たれたワイヤーは、地を蹴った洋也に当たらず雑草へ紛れる。


 洋也は再び刀を向け、飛び掛かる。


 ヒット&アウェイのルーチンをすぐさま見抜かれ、剣を持つ男は洋也から離れ、警棒を持つ男に横から襲い掛かられる。


 風を切る音は地道に聞こえていた。


「ぁぁぁぁぁああああああああ!!」


 その音は大きくなり、男の声も加わって近づいてきた。


 赤い一線が、洋也へ襲い掛かる男を吹き飛ばした。


 勢いが落ち、地に落ちる。


「いってぇ、てか今誰かに当たらんかった!?バスケで突っ走ったのを邪魔されたときの感触が俺の背中にぃ!」

「ナイスアシストかもしれないな、紅一郎!」


 赤い一線の正体、紅一郎は背中をさすりながら痛みを紛らわすようべらべらと口にする。


 洋也はその隙を狙って、後退した男へ斬りかかる。


 一方、紅一郎は吹き飛ばした仮面の男をみる。


 仮面は半分に割れていた。


「た、立羽?」


 その顔は立羽湊の物だった。


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