襲撃、撃退
走行中のジープでは、助手席の女がえずいていた。
「おえ、うええへえ」
「井宮、貴様酔い止めはどうした?」
「あんまでんでんきかないんすよね、あで」
えずきながら喋っているせいで濁音交じりの発言になる。
後部座席ではクレイグとピースメイカーの武装隊員が座っていた。
「隊長、自分も少し腹が」
吐き気が伝染し、隊員も支障をきたす。
「窓を開けろ、自己管理のできん奴が足を引っ張るな!」
クレイグは苛立ち交じりの口調で井宮に怒鳴る。
そんな中、車は何かに衝突し、車内へ振動が伝わった。
「今度は何だ!?」
「あー、あれは吸血鬼ちゃんっぽいですね」
井宮が窓の外を覗く。
車に追突したのは巨大な骨。
その向こう側に小さな少女の姿が見えた。
金髪、ロココ調のドレスに首元に逆十字を引っ提げた、如何にもな吸血鬼だ。
すぐさま隊員とクレイグが外へ出る。
四方に建物の立つ交差点の停止線ピッタリに車は止まっていた。
機関銃を構え、少女へと銃を向ける。
しかし少女は、腕組をしながら余裕気な佇まいだ。
その姿にピースメイカーの面々は見覚えがあった。
ブリーフィング時に見たデコンポーザーとは別の吸血鬼。
あまり脅威にならないと言われていた、コンダクターだ。
「ククク、人間よ、抵抗するな、金目の物をおいてけぇ!」
「コンダクターだ、撃て」
クレイグの指示と同時に機関銃から銀の弾が掃射された。
少女はその身に銃弾を浴びる。
「ふふふ、どうした?そんな豆鉄砲は効かんぞ?痛いけど」
しかし、彼女にとってその銃弾は豆鉄砲さながらの威力のようであまり危機的状況にない。
体も銃弾を弾き返すような硬度を帯びている。
「た、隊長!」
「止めるな、撃ち続けろ」
クレイグは掃射を止めない。
やがて耐えかねたコンダクターが音を上げる。
「…いた、いたたた痛くないけど痛いからおやめなさぐふぇ!」
唐突にコンダクターは赤い軌跡を伴って横へ吹き飛んだ。
赤い奇跡の正体、クレイグの目には槍に見えた。
飛んできたその元、交差点右方を見る。
「ちょっといいかしら、港へ行きたいのだけど」
洋也を不死身に仕立て上げた銀髪の吸血鬼が歩いてきた。




