諍い
ピースメイカーの教会にて、祝詞がクレイグに襟を掴まれ、壁に打ち付けていた。
「何を勝手なことをしている、祝詞」
「クレイグ、貴様は少し横暴が過ぎる、わざわざ洋也を拘束する必要がない、むしろこちらに加担するというのなら有効活用すべきだ」
「身内びいきもいい加減にしろ、一般人が夜間に徘徊しているのが悪い」
「先ほど、洋也の身分を警察のデータベースで調べた、陽帝の独立した吸血鬼ハンターだと」
「吸血鬼ハンターとは久方ぶりに聞いたな、そんな肩書が何になる?」
「同業者なのだと示したことが意味のあることだとは思わんのか?」
クレイグの腕を掴み、押し込み、手を引かせる。
「我々に部外者に対しての権力などないだろう」
「だが奴は俺に銃を向けた」
「撃ったのは魔獣の方だと君の部下から聞いたが?」
「結果論だ、一歩間違えば俺は殺されていた」
自身の命の危機を主張するクレイグに、祝詞は嘆息を漏らす
「だとしたら、過去に浸らずこれからの話をしよう」
「これからだと?」
「彼に罰を与えたいのだろう?ならば部外者でなくしてやればいい」
「どういう意味だ…?まさか!?」
クレイグの予感に祝詞は真剣な眼差しで応える。
「利用できるものを利用する、ピースメイカーがやってきたことだ」
「信用できるものか!あのような得体の知れない者を」
「私はできるが?何せ幼い頃からの縁なのでな」
「ならば確固たる証明をしてみろ!後から裏切りなどという事態になっては溜まったものではない!」
祝詞とクレイグの言い合いが教会中に響く。
「ただいま戻りましたー、ってあれ?副支部長、外に行ったんじゃ」
そこへ間抜けな声と共に紅一郎が教会に現れた。
祝詞がクレイグと立ち話をしているのを見ると頬に冷や汗が伝う。
「近江、洋也はどうした?」
「ああ、ええとですね、・・・送ってきましたよ?」
「こんな短時間で陰帝まで送り届けることなどできまい」」
「・・・はい、おそらくデコンポーザーのところ行ったと思います」
祝詞がクレイグと顔を見合わせる。
「この者にも罰を与えよう」
「まあ、これについては仕方ない」
紅一郎の身が縮こまった。
「近江への罰はさておき、ストリガの殲滅はどうした?」
頭を切り替え、陽帝の状況についてクレイグが問う。
「ああ、ばあさんがほぼやってくれて楽に済んだ、人員不足を補えるほどの実力だ」
「無理しなくとも、アナイアレイターと協力してもいいだろう」
ピースメイカーとアナイアレイターは吸血鬼の対処について揉め合いをしているのであって、ストリガについては意見は一致している。
ピースメイカーとアナイアレイターが手を取り合っていることは少なくはないのだ。
「それが教会の連中、吸血鬼退治に躍起になっているらしい、どちらにせよ、ストリガはピースメイカ内で解決済みだ、残るはデコポンだ」
「なんだそれは」
「デコンポーザーはちと長すぎる、略してデコポンと行こう」
俗な言い回しになれないクレイグは拒絶反応を起こす。
「・・・それで、デコンポーザーは何処へ行った?」
「永井が追っている、港の倉庫群にいるらしい」
「半吸血鬼特有の察知能力か、こういった者を抱えられるのはピースメイカーの利点ではある」
「民衆からの支持はアナイの方が上だがな」
「アナイアレイターの話をしているのではない、応援を送る」
クレイグは長椅子に設置されたトランシーバーを手にし、隊員と連絡を取る。
「車を回せ、港へ向かう」
言い終えると、再び祝詞を睨む。
「貴様は動くなよ」
「副支部長に指示をするか、まあ動かんが、俺の代わりに動いてくれる奴がいるようだ」
「・・・あの子供か、しかし奴はあんな摸造刀で何をなそうというのか」
「それについては分からんな、彼自身に聞くといい」
いかにも本当は知っていますよ、と言うような口ぶりだが、クレイグは疑念を抱きながら黙する。
教会前にジープが停車するのを見て教会から出ていった。




