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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
第1幕 物質破壊者
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諍い

 ピースメイカーの教会にて、祝詞がクレイグに襟を掴まれ、壁に打ち付けていた。


「何を勝手なことをしている、祝詞」

「クレイグ、貴様は少し横暴が過ぎる、わざわざ洋也を拘束する必要がない、むしろこちらに加担するというのなら有効活用すべきだ」

「身内びいきもいい加減にしろ、一般人が夜間に徘徊しているのが悪い」

「先ほど、洋也の身分を警察のデータベースで調べた、陽帝の独立した吸血鬼ハンターだと」

「吸血鬼ハンターとは久方ぶりに聞いたな、そんな肩書が何になる?」

「同業者なのだと示したことが意味のあることだとは思わんのか?」


 クレイグの腕を掴み、押し込み、手を引かせる。


「我々に部外者に対しての権力などないだろう」

「だが奴は俺に銃を向けた」

「撃ったのは魔獣の方だと君の部下から聞いたが?」

「結果論だ、一歩間違えば俺は殺されていた」


 自身の命の危機を主張するクレイグに、祝詞は嘆息を漏らす


「だとしたら、過去に浸らずこれからの話をしよう」

「これからだと?」

「彼に罰を与えたいのだろう?ならば部外者でなくしてやればいい」

「どういう意味だ…?まさか!?」


 クレイグの予感に祝詞は真剣な眼差しで応える。


「利用できるものを利用する、ピースメイカーがやってきたことだ」

「信用できるものか!あのような得体の知れない者を」

「私はできるが?何せ幼い頃からの縁なのでな」

「ならば確固たる証明をしてみろ!後から裏切りなどという事態になっては溜まったものではない!」


 祝詞とクレイグの言い合いが教会中に響く。


「ただいま戻りましたー、ってあれ?副支部長、外に行ったんじゃ」


 そこへ間抜けな声と共に紅一郎が教会に現れた。


 祝詞がクレイグと立ち話をしているのを見ると頬に冷や汗が伝う。


「近江、洋也はどうした?」

「ああ、ええとですね、・・・送ってきましたよ?」

「こんな短時間で陰帝まで送り届けることなどできまい」」

「・・・はい、おそらくデコンポーザーのところ行ったと思います」


 祝詞がクレイグと顔を見合わせる。


「この者にも罰を与えよう」

「まあ、これについては仕方ない」


 紅一郎の身が縮こまった。


「近江への罰はさておき、ストリガの殲滅はどうした?」


 頭を切り替え、陽帝の状況についてクレイグが問う。


「ああ、ばあさんがほぼやってくれて楽に済んだ、人員不足を補えるほどの実力だ」

「無理しなくとも、アナイアレイターと協力してもいいだろう」


 ピースメイカーとアナイアレイターは吸血鬼の対処について揉め合いをしているのであって、ストリガについては意見は一致している。


 ピースメイカーとアナイアレイターが手を取り合っていることは少なくはないのだ。


「それが教会の連中、吸血鬼退治に躍起になっているらしい、どちらにせよ、ストリガはピースメイカ内で解決済みだ、残るはデコポンだ」

「なんだそれは」

「デコンポーザーはちと長すぎる、略してデコポンと行こう」


 俗な言い回しになれないクレイグは拒絶反応を起こす。


「・・・それで、デコンポーザーは何処へ行った?」

「永井が追っている、港の倉庫群にいるらしい」

「半吸血鬼特有の察知能力か、こういった者を抱えられるのはピースメイカーの利点ではある」

「民衆からの支持はアナイの方が上だがな」

「アナイアレイターの話をしているのではない、応援を送る」


 クレイグは長椅子に設置されたトランシーバーを手にし、隊員と連絡を取る。


「車を回せ、港へ向かう」


 言い終えると、再び祝詞を睨む。


「貴様は動くなよ」

「副支部長に指示をするか、まあ動かんが、俺の代わりに動いてくれる奴がいるようだ」

「・・・あの子供か、しかし奴はあんな摸造刀で何をなそうというのか」

「それについては分からんな、彼自身に聞くといい」


 いかにも本当は知っていますよ、と言うような口ぶりだが、クレイグは疑念を抱きながら黙する。


 教会前にジープが停車するのを見て教会から出ていった。


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