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バイナリー・オポジション  作者: ハゲタカ
プロローグ
1/141

エクスチェンジ

 黒い空の下、少年は少女の死体の前で虚空に叫ぶ。


 誰の目も気にしない、一人虚しい壮大な独り言を。


「母様!僕は成し遂げました!忌まわしき吸血鬼を、ただの動かぬ屍へと変えてやりました!」


 ここは公園、しかし遊具は蹂躙され、残骸がただ転がっているだけの野原へと変わり果てている。


 周りには、誰もいない、動くものなどなにもない。


 死体が本当に動かぬ死体であったのなら。


 血まみれの少年の手に少女の死体の手が触れる。


「よう...、...だよ、しに..たく..ないよぉ」


 死体から発せられた力のこもらぬひ弱な声に、少年は激昂した。


「なんで生きてるんだよ!死ねよ!死ね死ね死ね!」


 何度も顔面へ刃物を突き刺した、殴った、蹴った、しかし、その死体は完全に静止することはなかった。


「しぶといな、ゴキブリ並みのしぶとさだ、そんな奴らは根絶やしにしなくちゃ」


 頭へ、刃を突き立てようとした、が、外れる。

 

 刃は地面へ突き刺さった。


 死体の頭があったはずのその場所へ。


 何物も貫かなかったその刃は抜かれない。


 死体であるはずの少女が彼の手を掴んで離さないからだ。


その事態に少年は狼狽した。


 「そんな、やめろ!!」


 必死に拘束を解こうとする少年、やめろと乞うが少女は聞く耳を持たない。


 だが手つきは柔和で、傷つけるような敵意はない。

 

 その気配すら感じ取れず、少年はただ怯えた。


 「うああああああ!!」


 少女は頭を上げて少年の首筋に近づき、八重歯が穿った。


------------------------------------------------------


 ここは誰も望まぬ世界、誰もが理想の空白を埋めようと傷つけあう。


 支配欲にとらわれた鬼が集い、悪が悪と明確になる寸前の時期。


 少年は少女の手を取らねばならなかった、植え付けられた憎しみに逆らい、足掻くべきだった。


 最早彼に人としての生を全うするなどできない。


ーーー和解は求めない


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