大和学園⑥
「冗談じゃないよ…」
先ほどのやり取りを思い出しながらカズマは一人ため息をつきながら呟いた。
間違いなく気付けなければ死んでいた。確かにあの測定値を見せられれば確かめたくなる気持ちは理解はできる。
しかしそれを確かめるために殺されたんじゃこちらは堪ったものではない。
「間違いなくあの人の知り合いだなありゃ、常識とかそんなもんどっかいっちゃってるよあれは」
そんな人が学園長を勤めていることに若干の不安を覚えながらカズマは入学式の会場となっている第一闘技場を目指す。
(しかし広すぎてどこ行けばいいかよくわからん…誰かに聞くか)
「あなた…誰か探してるの?」
誰に声をかけようかと周りをキョロキョロと見ていると不意に後ろから声が掛けられた。
振り向くとそこには整った綺麗な顔立ちにエメラルドグリーンの瞳、透き通るような金髪の長い髪の女の子が笑顔を浮かべ立っていた。
「いや、誰かを探してるわけじゃなくて入学式の場所が分からないんだ」
「なら一緒にいきましょう。私も行き先は同じだから」
そういって女の子は笑顔で右手を前に出す。
「レイナよ、あなたは?」
「カズマ。よろしくレイナ」
「よろしくカズマ。じゃあ行きましょうか」
握手を交わし、こっちよと言って歩き出したレイナについてカズマも歩き出す。
「いやぁ助かったよ、どこへ行けばいいかさっぱり分かんなくてどうしようかと思ってたんだ。こんなに人が多い所も初めてでさ」
「カズマってもしかして相当な田舎からここに来たんじゃない?」
「えっやっぱ田舎もんに見えるかい?」
会って間もないレイナにズバリと言われカズマは項垂れるが、レイナはそれを見てクスクスと笑った。
「違うの、自慢する訳じゃないんだけど私ってちょっとした有名人だから、最初からこんなにフランクに話しかけてくれる人って中々いなくて…多分私のこと知らないのよね?」
「ごめんレイナの言う通りで、俺が住んでたとこはかなりの田舎だったからそう言う情報には疎くて…あっもしかして敬語とか使ったほうがいい…ですか?」
レイナはまたクスクスと笑いながら顔を横に振る。
「ううん、いいの。大概の人は私と普通に話してって言っても話してくれないし、貴方みたいな人私にとって貴重だからそのままでいて。むしろ敬語禁止!」
「レイナがそう言うならそうするけど…なんでそんなに有名なんだ?」
「それは多分あとでわかるからそれまでお楽しみ」
そう言っていたずらな笑みを浮かべながらレイナはチロっと舌を出した。