大和学園⑤
「はーすまんかったの、あまりに予想外で笑わせてもらった…しかしそれにしてもこの数値はちとまずいのぅ…おぬし、今までじゃじゃ馬とはどんな生活をしてきた?」
「そうですね…生活力つけるためとか言って色んなとこ連れまわされましたり、武器の扱いなんかに関しては一通り教わりましたかね…魔法に関しては見てのとおりなんでホントに基本の部分しか教わってないと思います。無属性魔法っていうんですかね?それくらいしか使わせて貰えなかったんで…「お前の魔力量じゃ今それ以外やっても無駄だ」ってことみたいでしたけど…」
「ふむ…まぁよい、いささか魔法に関する数値は低すぎるが入学時に魔法の才ないからといって即退学にするわけでもない。ここにいる間になんらかの才能を示しさえしてくれれば問題はない…なんの才もないようであれば容赦せんがの…さて最後にこれじゃ」
そこまで言うとスズネはまた魔法でどこからか何かを取り出すとポイとカズマにそのなにかを投げた。
カズマも少し慌てながら右手でそれを掴み、手の中に納まったそれを確認するとどうやら何かの魔具のようだ。
「これは?」
「生徒に貸し出される通信用魔具じゃ、生徒間の連絡や成績などもそこで確認できるようになっておる。無くすでないぞ。さて話は以上じゃ、あとは式が始まるまで校内を散策でもすると良かろう」
「りょーかいです、失礼します」
「ふむ…」
軽く会釈をして去ろうとするカズマを見ながらスズネはトントンと閉じた扇子で自分の頬を軽く叩く。
(……ちょいと遊んで見るかの)
背中を向けたカズマに向かって頬を叩いていた扇子を向けるとカズマを殺すのには十分過ぎるほどの魔力をその先端へと集中させ、悪い笑みを浮かべた。
「勘弁して下さい学園長……」
「ぬ?」
カズマに背を向けたままそう言われ、多少驚きながらスズネは扇子に集めた魔力を消しクスクスと笑う。
「よう気づいたのう、バレんようにやったつもりじゃったが」
背中を向けたままため息をつき、カズマはこちらへ向き直る。
「慣れてるんですよそういうの……やっぱりあの人の知り合いですね、こっちは凡人なんだから必死なんですよ?」
失礼しますと頭を下げカズマは今度こそ部屋を出ていく。
「……凡人ねぇ」
一人になった部屋の中でスズネはポツリと呟いた。
(あやつがこちらに送ってくるほどの男じゃ、凡人なはずがなかろう…能力値が余りにも低いゆえ少し試そうと思ったが……必要なかったのう)
今年は例年以上に面白くなりそうだとニヤリと笑うのだった。