大和学園②
(それにしても人が多いし人以外もいっぱいいるな…あっちは獣人だしあれは魔族かな?)
まずカズマがここにきて一番驚いたのが人の多さだった。山奥暮らしのカズマは自分の自宅兼道場に住む人たちか、買出しに近くの集落に行ったときに会う人たちくらいしか周りとの接点がなかった。そこには当然こんなに人はいなかったし、人間以外の種族も住んでいなかった。
しかし、ここには人間はもちろん獣人や魔族といったいわゆる『亜人』たちも多くいる。正直最初こそ亜人を見かけるたびにビクついていたカズマだが、あまりにも多くの亜人達が周りを普通に通るし、何より肌の色だったり顔の形だったり確かに大きく違いがある人もいるが総じて見るとそんなに人間と変わらないなぁとわかると10分もすれば慣れて気にならなくなった。
「しかしほんとにすごいとこ来ちまったなぁ…広いし綺麗だしあちこちに最新の魔具らしきもんがありやがる…あのバカ師匠少しは説明くらい事前にしとけっての」
ここへ来ることが決まってからというもの、一週間しか準備期間がなくバタバタしていたのと、「バカ猫に舐められるわけにいかねぇ!!」などといったよくわからない理由で無茶な修行を散々やらされたりとで学園のことはほとんどわからずにここへやってきた。家を出る寸前になってようやく得られた情報は「学園に着いたらバカ猫がいるからそいつに説明してもらえ」だった。
(んなこと言われてもなぁ…とりあえず猫ベースの獣人でも探せばいいのかねまったく…)
当時を思い出し少しイラついた気持ちになりながらとりあえず校舎の方に向かいながらどこかそれらしき人がいないかと探しながら歩いていたときだった。
「そこのおぬし」
「ん?」
ふと背中から呼び止められた気がして振り向いてみるが…誰もいない。
「こっちじゃ!どこを見ておる!」
少し目線を下げるとそこには白髪で耳が明らかに人間のそれとは違う位置に付いた獣人であろう女の子が立っていた。
「なんでこんなとこに…幼女?」
ビキ!と少女のこめかみに青筋が浮かぶがカズマは気づいていない。
「…おぬしがカズマ=ムサシかの?」
少女は暗い笑みを浮かべながらカズマに向かって問いかける。
「そうだけど…お穣ちゃんは誰なのかな?」
ビキビキ!少女のこめかみに青筋が増えるがカズマはまだ気づいていない。
「お…おぬし言葉遣いに気をつけよ…わしもそこまで我慢強いほうではないでの」
若干腕を震わせながら少女は忠告するがカズマは笑ってこう言った。
「はは、随分難しいしゃべり方するんだなお穣ちゃんどこかいいとこの…(ブチ!!!)ん?ぐは!?!?!?」
カズマがしゃべり終える前に血管の切れるような音がしたかと思うと目の前にいた少女の姿がブレた、そしてそう思った次の瞬間には腹部にすごい衝撃を感じ宙に打ち上げられていた。
「誰が!!」
そしてそう思った時には背中に次の一撃が繰り出され地面に急降下する。
「幼女じゃーーー!!!」
「ギャーーーー!!!」
ズドン!というすごい音を立てカズマは頭から地面へと突き刺さった。
いきなりの出来事に周りの新入生からも悲鳴が上がるがそばにいた上級生たちはすぐに状況を理解する。
(((また誰かうちの【学園長】を幼女認定したな…)))