⑧
「……!?」
圭太が驚愕に目を見開くのと、署内に悲鳴が響き渡るのは同時だった。
「審判の意味は、再会と決断、そして神の裁き」
血で濡れた床に、タロットカードを落とすリィードゥ。
優太の身体から流れる血が床に広がっていく。
「曽根木優太という人間は、小物程度の“悪"だったが、“味"は悪くない」
手についた血を舐めながら、リィードゥは言い、周囲に視線を移した。
いつの間にか警官が取り囲んでおり、圭太も拳銃を構える。
「動くなッ!」
拳銃を構え、圭太はリィードゥに向かって叫ぶ。
「お前が連続殺人犯かっ!」
「その通り。――だが、不粋な真似をする」
後半の言葉は自分を取り囲んでいる警察官たちに対してだ。
「私はね、お前に用事があって来たのだ。雑魚に用はない」
パチンと指を鳴らした途端、圭太以外の人間がその場に倒れる。
「!?」
「眠らせただけだよ。――生贄以外を殺す必要はないからね」
「生贄?」
問いかけるも、銃は構えたまま。
「お前のことだよ、大野圭太」
「俺!?」
まさか、と圭太は思った。
確かに自分も同じ誕生日だ。しかし、自分は大丈夫だと高をくくっていた。
「指を鳴らしただけなのに、倒れたのが不思議だろう?」
死んではいない。眠っている状態の周りを見ながら、リィードゥは圭太に問う。
「……」
「お前のような、現実主義者には理解できないだろうね」
銃を構えたまま、無言で睨む圭太にリィードゥは言う。
「お前は……“何だ"?」
「――タロットに関する噂を知っているかい?」
圭太の質問には答えず、反対に聞くリィードゥ。
「質問しているのは自分だっ。答えろ! お前は何だ!?」
「――――悪魔」
簡潔に、たったひと言で、リィードゥは圭太の質問に答えた。
「悪魔なんてものは架空の生き物だ!」
「架空ではないよ」
ふふと笑い、リィードゥは姿を変えていく。