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闇色の使者  作者: 細螺蒼
5/10








 自分の席に戻ってきた圭太に、同僚は資料のコピーを渡した。



「なにこれ」

「読んでみりゃわかる」



 簡潔に答えた同僚に圭太は「了解」と返事をし、資料に目を通す。他の刑事たちも同じく読んでいた。

 読んでいくうちに圭太は同僚の方を思わず見た。



「イギリスでもあったんだな」

「ああ、なにせ、250年も前だから、詳しい資料は残ってないみたいでな」



 唯一わかるのは、最後の被害者が殺されると言い触らしていたこと。

 警察が念のためにと、保護したにもかかわらず、殺されたことくらいだろう。



「イギリスの事件と同じってことは、後ふたりってことになるのか……」



 22人の連続殺人。その人数以上、殺されることはなかった。

 結局、イギリスでは迷宮いりしてしまった。


「新しい被害者が出る前に、なんとかしないとな」



 同僚の言葉に圭太は「ああ」と頷いた。







 リィードゥは高級住宅街をひたすら歩いていた。

 制服の方を着ているので、怪しまれることはない。



「ここだな」



 足を止め、見上げた先には高級感が漂う一軒家。



「さて……どうやって中にはいろうかな」



 玄関から入る必要などないのだが、リィードゥはあえて、正攻法でいこうとしていた。



「そろそろ、この家の人間が帰ってくるはずなんだが……」



 ちょっと早かったか?と首を傾げるリィードゥ。その時、ひとりの女性が「何か用かしら?」と声をかけてきた。



優太ゆうたくんに用があってきたんです」



 女性はこの家の人間だ。彼女の方を真っ直ぐと見つめ、リィードゥは質問に答えた。

 時間にして、数瞬だろう、お互い見つめあっていたが、女性の方が思い出したように口を開いた。



「……りんちゃんだったかしら?」

「はい。優太くんは大丈夫ですか? 最近、学校に来てないから……」



 さも、知り合いだという感じに話しだすリィードゥ。

 当然だ。見つめた瞬間に彼女はリィードゥの術にかかり、リィードゥが自分の息子の中学からの同級生である「凜」だと思いこまされているのだから。



「当分は学校に行けないのよ、あの子」

「どうしてですか?」



 首を傾げながらリィードゥは言う。



「知ってると思うけど、あの子……誕生日が同じなの」



 連続殺人の被害者と同じ誕生日。

 殺されるかもしれないと思っている彼は、家から一歩も出なくなった。



「じゃあ、会えないんですか?」

「ええって言いたいけど……せっかく来てくれたんだものね」



 あがっていって、と彼女が言うと、リィードゥは「お邪魔します」と言って、家の中に入る。



「ちょっと待っててくれる?」



 今、呼んでくるわ、と玄関のドアを閉めたリィードゥに彼女は言う。



「大丈夫ですよ」



 リィードゥがそう言った瞬間、彼女はその場に倒れた。



「中にいれてくれて感謝するよ」



 もっとも、そうするようにリィードゥが力を使ったからなのだが。

 階段に視線を移し、リィードゥはゆっくりと、部屋に向かう。

 21人目の犠牲者となる、少年の元へと。

 人々が恐怖から解放される瞬間が、すぐそこまで訪れようとしていた――……。









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