④
「父上とのやりとりを思い出しているのか?」
まさにその通りだったシュリュナは、リィードゥの言葉に過剰に反応してしまう。それを見て、
「よほど、恐怖だったんだねえ」
とリィードゥは言う。
「お前……」
何を指して恐怖と言っているのか、シュリュナは理解している。
絶対君主の王と対面した時の恐怖が今頃なって、浮き彫りになってきたのだろう。
「父上に恐怖するのは当然だよ、シュリュナ。そうやって父上は地獄を支配しているんだ」
「お前は王のように支配できると……?」
疑問にリィードゥは愚問だというように、言った。
「――そのための儀式だ、シュリュナ」
― ―と
警察署に戻っていた圭太は事件現場に必ず置いてあるタロットカードを並べていた。
「20人で、20枚か……」
ひとり一枚の割合で置いてあるタロットカード。
「チャレンジャー……運命の探検家」
片手にタロットカードの本を持ち、カードの意味を読みあげていく圭太。
「魔術師、不可能を可能にする超能力者。
女教皇、英知と理性の女神。
女帝、繁栄の優美なる女王。
皇帝、勇気ある頼もしいリーダー。
法王、慈愛と秩序の神。
恋人、愛の国で戯れる男女たち。
戦車、行くところ無敵な早技師。
力、最後に笑うファイター。
隠者、俗世間を離脱した超人。
運命の輪、チャンスとタイミングの歯車。
正義、この世のバランスを司る女神。
吊るされた男、忍耐と努力の達人。
死神、すべての停止と蘇生を握る神。
節制、物事の大切さを教えてくれる天使。
悪魔、束縛と誘惑の甘い罠。
塔、ハプニングと破壊の警告。
星、高い理想、希望ある未来。
月、暗中模索、疑惑。
太陽、活気と生命エネルギー」
20枚すべてを読み終わり、圭太は本を閉じる。
「犯人はカードに『何か』を込めているのか……?」
どんなに考えても、答えが浮かばないので、圭太は一息いれるために、カードを戻し、その部屋から出て行った。
リィードゥは高層ビルの屋上にいたが、立っている場所は一歩、足を踏み出したら、落下するだろうという位置に立っていた。
「残りは審判と世界」
タロットカードを宙に浮かせながら、リィードゥは呟く。側にシュリュナはいない。
「21人目を目の前で殺したら、どういう反応をしてくれるかな」
クスクスと笑いながら、リィードゥはそこから消えた。